第18話 海岸の攻防(流布とそのた大勢)
「ええと、おっかしぃなぁ~~?」
犬馬と珍海が浜辺でいちゃいちゃしてる頃、流布はそこから100メートルほど離れた「木材を置いた場所」に到達していた。だが様子がどうもおかしい。
「確かにここに置いたはずなんだけどなあ~~・・」
工具一式は、ちゃんとその場に在るのに肝心の木材が見あたらないのだ。
「おまえ、あれじゃねえの・・・・?」
「先生が配置し直したとか・・」
「そんなんだろ・・・」
二時之次が冷静に分析する
「あの馬鹿~~!」
「も~~~!!」
流布は二時之次から自分の分のバッグだけを「ひったくるようにして」もぎ取ると、
「うわ、(電話に)でねぇよあいつ・・」
自分の端末を取り出して顧問の先生に通信を入れた。
「・・掛けになった番号は、現在電源が入ってないか使われていない為掛かりません・・・お客様がお掛けに・・」
不在着信の自動音声案内がオウムのように繰り返されて流れていく
「マジ役たたねえぇ~~!」
「くそがぁぁぁぁ~~!!」
流布良子(るふりょうこ)がお怒りのご様子だ。砂浜を蹴っ飛ばし、荒れ狂う。
「落ち着け、良子・・・・」
二時之次は流布に向かって、落ち着くように助言したが
「がっ!あぁぁぁ~~!!!」
「貴様は、落ち着きすぎなんじゃあぁぁぁ!!」
逆に流布に八つ当たりされる始末だった。
「わっぷ・・・・!」
流布が蹴っ飛ばした砂が降り注ぐ。思わず二時之次は体ごと方向を変えた。
「う・・・・」
そしてその視線の先には、バーベキューをしている、男女7人のグループがあった
「まさか・・・」
二時之次はバーベキューの鉄板の下に、不自然に長い「焦げた木材」を発見した。
よく見るとその先のグループも似たような木材を仕様していた
「??」
「どうした?」
流布はただならぬ気配を感じて、二時之次が向けている視線の先へと目をやった。その瞬間、
「・・・・・!」
「待て・・・・!」
二時之次は流布にタックルするような形で突撃した。
「ぶほっ!!」
待てと「言われる前」に飛んで行く体勢を取っていた流布は二時之次に後ろから取り押さえられ、勢い余って砂浜に頭からめりこんだ
「証拠が無い・・・」
二時之次は流布の背中から両腕を廻したままつぶやいた
「証拠もくそもあるかぁ~!」
「あいつらだろぉ~、絶対~~!」
「ふーっ!ふーっl!」
興奮が収まらない流布は、押さえられたまま手足をばたつかせる。
「ちょっと待て・・俺がなんとかするから・・」
「先生に連絡を取ってくれ・・」
「繋がらなかったら、警察にも連絡を頼む・・・・」
二時之次はそう言って木材を取り戻すべく、男女の集団に交渉しに行った
― 5分後
「なんとかなったぞ・・」
二時之次は炭化した木材を「バラバラ!」と、流布の前に置いた。
「なってねぇぇよ!!」
「どぅすんだよ、船!!」
流布が大の字になって砂浜に寝転がる
「まぁ、待て・・・」
二時之次はそういいながらもう1往復し、今度は
「お詫びだってさ・・・」
灯油とかをいれておくような赤いポリタンクを持ってきた
「船は作れないかもしれないけれど・・」
「とりあえずコレ(と燃えずに残った木材)でイカダ作ろうぜ・・」
使えそうな工具を物色しだす
「そういやさ、先生に連絡は取れたのか?・・・・」
ふてくされて寝転がっている流布に問いかける
「知るかぁ!!」
「女でもはべらせてよろしくやってんだろ多分!!」
流布はやけくそ気味で回答したが、意外なことに少量のポイントが入った。彼女は「海賊王になれる能力」の持ち主である。
海賊「王」というからには自らはせっせと船を作ったりはしない。なぜなら、それは「手下」がやるべき作業だからだ。そこがポイントに
繋がったのだった。
「大体さ、船浮かべたからって海賊王に成れる訳じゃないだろ?・・・」
二時之次は、流布に「船以外の選択肢を実行するように」提案したつもりだった。又、慰める意味合いも含まれていたのかも知れない
「・・・・えっ?」
だが流布は意味がわからなかったようだ。きょとんとした顔になる
「だからさ、ほかにも色々あるじゃん?・・・」
炭化した材木をゴミのほうに分別しながら二時之次が言葉を選ぶ
「例えば?」
流布が不安そうに問いかけた
「そぉ~だなぁ~・・・・・」
「例えばさ、海賊らしく・・・」
「海から上陸して、村とかを襲うとかさ・・」
「金品とかを略奪したりとかさ・・・・」
二時之次は手元の端末を確認しながら力なくぽつぽつと提案しはじめた
(これはもう勝てないな・・・・)
試合の優劣を確認すると、「2 凄く詰みそう」という状態だった。全20段階中、下から2番目という「いつ負けてもおかしくない」
状態だったがそれは無理も無いことだった。二時之次から、へなへなと体の力が抜けてしまうと
「・・・・」
流布に気取られ、暗さが波及してしまった。
対戦相手の「犬馬&珍海」は試合中能力である「犬の散歩」をずっと発現し続け、かたやこちら側はほとんど何も出来ていないのである
わざわざ端末を確認せずとも、素人でも一方的な試合だと解る事であった。せめて、せめて船さえ作れていれば
「だから、船無いじゃん!!」
流布が食らいつく。半泣きだ。
「いーんだよ、もー船は!・・・」
「おまえは少し、船からはなれろよ!!・・・」
「大体いつまで陸にいるんだよ!!・・」
「丘海賊かよ!!」
「それって山賊じゃねえかよ・・」
「とりあえず、・・膝上くらいまで海に浸かってこいよもう・・・」
冷静さを欠いた二時之次が流布にまくしたてる。流布は「海に出るために」船を作ろうとしていたのだが、言っていることが矛盾してしまっている。
最後のほうは、本人も「言い過ぎた」と思ったらしく、少しづつ弱い言葉になっていった
「うっ・・・」
「っ・・うっぐ・・」
「っく・・・・」
流布は靴を脱ぐと、泣きながらとぼとぼと海に向かって歩いていった
「どぼっどぼっ・・」
「ぼどん!ぼどん!」
「ばっしゃばっしゃ」
「ぺたぺたぺた」
そしてふとももあたりまで浸かるとそのままUターンして帰ってきた
「つ、、次は~?」
涙で顔をくしゃくしゃにしながら流布が指示を仰ぐ
「金品とかさ、脅して巻き上げるんだよ・・」
「俺にでいいよ、・・」
どこの世界に「全泣きで海水に浸かりに行く海賊王」が居るであろうか。
二時之次は、今の流布の動作がポイントに還元されていないことを隠して、次の提案をした。
「ひっ・・ひっく・・」
「か、金を出せぇ~・・」
「・・っく」
ボロボロの流布は泣きながら覇気の無い声で、二時之次を脅した
「声が小さいよ・・・」
「もっとおっきい声で・・」
「コレ持ってもう、・・」
二時之次は自らのTENGOを流布に差し出すと、そのまま右手に持たせてから迫力の出るように替えのシャツで流布の手元を隠した。
それは、まるで強盗のようだった。
「金をだせ~!」
流布は腹の底からしぼりだすように、二時之次を脅した。
「ちょっといいかな・・?」
急に物陰から聞き慣れない声がした。流布の先ほどの電話で警察官がタイミング悪く駆けつけてきたのだ。
「うっ・・」
「う”っ・・」
「ぬ”ぅ~~~~~~~~~~~っ!!」
進退窮まった流布は白目をむいてその場に崩れ落ちた。右手にかぶせられたシャツがはらりと落ち、その手にはTENGOが握られていた。
太ももの海水だろうか。はたまた失禁してしまったのだろうか。流布の倒れた場所は乾いた砂浜のそれでは無く、水分を吸った色に変色していった。
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