第14話2回戦に向かう犬馬と珍海
ここは犬馬の自宅。木造2階建ての住宅の外には飼い犬の「まゆげ」が鎖に繋がれている。一足先に起きた珍海は端末を操作し、試合時間を把握すると
準備を始めた。
「今日は、どれにしようか?」
「ピンクでいい??」
珍海は茶色のタンスの中をごそごそと漁ると、ピンク色のブラジャーを掴み、全裸で寝ぼけている犬馬の背後に回った
「うん・・」
「ありがとう・・」
「んふふっ・・♪」
犬馬は眠たそうな目を擦りながらも、幸せそうな表情だ
「よしよしっと」
珍海が背後からブラジャーを着けてあげると
「よくなぁ~い♪」
犬馬はそのまま後ろの珍海にもたれかかるようにして甘えた
「ええ~?」
「どうして~!!」
もたれかかってきた犬馬を抱きとめると、珍海は疑問をぶつけた
「シャワーが先でしょ~」
「も~!」
笑いながら部屋を出て行こうとする犬馬。
「犬馬、タオル、タオル!」
珍海は犬馬を呼び止めると、タンスの中からタオルを出して手渡した
「さんきゅ~!」
受け取った犬馬は、顔の前でタオルを丸めると、そのまま匂いを嗅いだ。洗濯洗剤のすがすがしい香りがした。そして、そのまま上目使いで
「・・・・一緒に入る?」
照れながらつぶやいた
「あのなぁ・・」
「もう、あんまり時間無いんだから・・」
「ほら、さっさと行った、行った!」
犬馬の両肩を掴むと、そのままゆっくりと180℃回して方向転換させた
「ケチ・・・!」
そう言いながらも犬馬は笑顔だった
珍海が階段を降りて、キッチンに向かうとテーブルの上にはすでに朝食が用意されていた
「おはようございます」
食事中の40代くらいの男性に挨拶する珍海。男性は笑顔で
「おはよう珍海君」
「のりちゃんは?」
珍海に問い返した
「ああ・・今、風呂です」
「すぐ来ると思います」
椅子を「ゴトッ」と引き出し、座る珍海。
「いただきます」
体の前で手を合わせると、すかさず食べ始める
「おはよう、珍海君」
残りの配膳を持ってきた40代くらいの女性が、エプロンをはずしながら椅子に座る
「んぐっ・・・おはようございます」
頬張ったトンカツを飲み込んでから口に手を当てて、非礼の無いように挨拶する珍海
「ああ、そうそう」
「昨日は一回戦突破おめでとう」
男性はにこやかにポップコーンの袋を差し出した
「・・朝から、もう!!」
すかさず女性がツッコミを入れる
「大丈夫だよ」
「若いんだし・・」
にこやかに言い返す男性
「大丈夫ですよ」
「若いですから」
珍海も笑いながらそう言うと、ひったくるようにポップコーンを手元に引き寄せた
今、ポップコーンを渡してきたおじさんは、
宮岸 裕三(みやぎし ゆうぞう)
会長の周りの従者の一人であり、元アプリ坊主の選手らしい。宮岸の性は元々、奥さんのもので、いわゆる婿養子というやつだ
今まで調理場に居た、この気前のよさそうなおばさんは、
宮岸 佐恵子(みやぎし さえこ)
犬馬のり子の母親の妹で、会長に頼まれて旦那さんと一緒にこの家で家政婦をしている
あと一人
宮岸 聡(みやぎし さとし)
というこの夫婦の息子で中学生の子が居るのだが、今日はすでにもう学校に行ってしまっている
犬馬のり子の本当の両親はというと、今アメリカで、向こうのアプリ坊主の経営やらなにやらを任されているらしい。
母親はわか子ちゃんを産むとすぐに会長に預けて、さっさと向こうにいってしまった。
変わりに向こう(アメリカ)からやってきたのがエメリアちゃん。昨日わか子ちゃんと一緒にいた金髪の女の子だ。
当の本人の、わか子ちゃんは会長の家やらエメリアちゃんの家やら、ここ(自宅)やらをいったりきたりしていて落ち着かない。
一応、部屋はあるのだがあまり使われていないせいか、すこぶる生理整頓されていて生活感が全然無い。
「ごちそうさま~」
「ありがとう。おいしかったです」
しばらくもくもくと食べていた珍海が、箸を置き手を合わす。
「あら?もういいの?」
「おかわりあるわよ?」
佐恵子さんが問いかける
「いや、大丈夫です」
苦笑いを浮かべながら、空になった食器を台所へ運ぶ珍海。そしてそのまま
「ジャバジャバ」
と食器を洗い出す
「ああ~!もう食べ終わってる~!」
首からタオルをかけただけの全裸姿で現れた犬馬がテーブルを指差す
「ああもう・・」
「あんたはいいから、早く服着なさい!!」
やれやれといった感じで犬馬をたしなめる佐恵子さん
「ふふっ・・」
裕三さんが思わず噴きだした。
「ふっ!」
「くすくす・・」
釣られてその場にいた全員から笑みがこぼれた
犬馬「そいでは行ってきま~す!」
珍海「行ってきます」
ほどなくして仕度を終えた珍海と犬馬は「流布&二時之次ペア」の待つ、第2回戦へと向かった。
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