第12話授業中に呼び出された

跳流田高校(はねるだこうこう)の教室。「コツコツ・・」と白いチョークが黒板に文字を埋めていく。

先生が黒板に書きしたためた文章を、生徒達は真摯にノートに書き写していた。


「・・・・・」

「・・・・・」


流布良子のパートナーであり、男性アプリ坊主である


二時之次 三時 (にじのつぎ さんじ)


も又、授業を真剣に受けていた。


「コンコン・・」


急に教室のドアをノックする音が響く。生徒達の何名かは音に釣られてドアの方向を向いた。

授業をしていた先生がチョークを止め、ドアに気を持っていかれた事により、教室は完全に静まり返った


「二時之次(にじのつぎ)」

「二時之次居るかぁ~?」


開けたドアからアプリ坊主顧問が二時之次を呼んだ。すぐさま彼は席を立つと、顧問に駆け寄った


「あれ??試合は14:00からなんじゃ・・・?」


事前に、端末で情報を得ていて、開始時間が14:00からだという事を知っていた二時之次は顧問に問い返した。


「ああ、そうなんだけどな・・」


顧問はバツの悪そうな顔をして


「流布がちょっと呼んでいてな・・」


そう答えると、手元の「アプリ坊主顧問用の端末」を操作し、「流布良子」を検索して画面に地図を展開させた。

どうやら、彼女は今現在、この学校の中で授業を受けている訳では無いらしい。


「ああ、わかりました」


端末を覗き込んでいた二時之次は状況を把握したらしい


「皆さん、授業を中断させてしまい、申し訳ありません」

「先生、アプリ坊主の試合に行ってきます」


クラスメートと先生に丁寧に頭を下げる二時之次


「がんばれ~!」

「がんばってね~!」

「二時之次~!応援してるぞ~!」


静まり返っていた教室は、二時之次への励ましの声援で溢れ返った


「それでな・・今からお前を送っていくわけだが・・」

「その前にちょっとお前ん家(おまえんち)寄っていってもいい?」


廊下に出るなり、顧問の先生が切り出した


「・・どうしたんです?」


二時之次は不思議そうな顔で先生に尋ねた


「ほら、流布な、大会で船作るって言ってただろ」

「あれな、先生のミスで予算が足りなくなっちゃったみたいなんだ」


顧問の先生は廊下を歩きながら話を続けた


「それで、予算足りなくなった原因が、先生が工具を買う費用を計算してなかった所なんだわ」

「二時之次の家に、なんか使える工具ないかな~って思って」

「あ、中庭の駐車場分かるか?」


顧問は、職員用の昇降口から自分の靴を取り出し、さっさと自分の車のほうに行ってしまった。


「・・学校の使えばいいじゃん・・」


二時之次は、生徒用の昇降口に到着し、下駄箱から靴を取り出しながらボソッとつぶやいた





















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