第1章 与えられた使命

第1話 案内状

いつも通り狩猟から帰ってきた私に、側近が1通の封筒を手渡してきた。

それは月に一度行われる人事異動の際に「指の王」から私の住む邸宅に送られてくる報告書だった。

元々所属していた人の異動情報、新規に続柄登録された人の基本的な情報など、特に自分には関係の無い内容ではある。


今回も自邸には関係の無い内容だったため、いつものようにざっと目を通し側近に返そうとした。

そこで、いつもとは違う少し材質の良い紙が報告書とは別で同封されていることに気づく。


取り出して読んでみると、どうやら近々、一族全体で大きな集会が行われるらしい。

紙はその案内状だった。


自分は今まで参加条件である年齢を満たしておらず参加は見送ってきたが、今回から参加せねばならない年齢になったためこういった紙が送られてきたらしい。

面倒ではあるが決め事なので参加は必須だ。

集会までにはまだ日があるので、随伴してもらう人の手配などの準備を適宜進めようと自分に促し紙を側近に渡した。


浴場で身を清め、眠りに就こうとしたとき、側近の一人が私に耳打ちをした。


集会当日に本会場から迎えが来るらしい。

明日はその迎人が挨拶に来るようだ。


王族に遣える人間が多いことは知っていたが、正直暇なのではないかと、かねてから感じてはいた。

自分もあまり変わらない立場にいることに気づき少し虚しさを覚えた。


そんな甲斐無いことを考えているうちに薄々しくも少し気持ちの良い眠りに落ちていった。

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