第32話:隣町を助けろ!(202701-202703)

 日本版CCRC構想は、2013年「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送ると共に、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」を目指すものである。しかし実際は2025年問題を予測して、その対応策として考えられたものだった。


 2025年問題とは団塊の世代が2025年までに後期高齢者に達する事で介護・医療費ななどの社会保障費の急増が懸念されるという問題。特に75 歳以上の後期高齢者は2025年までの 10 年間で約175万人増えることが見込まれ、特に東京圏だけで約13万人が必要な介護を受けられない「介護難民」になると予測されている。そのため元気なうちに高齢者を地方に移住させようというのが日本版CCRCの真の目的ではないかと思われている。


 ここYG市の隣町が2015年に日本版CRCCの指定を受けて、国から多額の補助金を受けて、元気な高齢移住者を誘致する計画を立てたが、うまくいかず計画が頓挫してしまったようだ。この話が市長から入り助けて欲しいと言ってきたので今までの隣町の事業計画と時間経過の資料をもらって、読んで意見を聞かせてもらいたいと言われた。早速、役所に行って、書類をいただき、読むと、まず、隣町で移住を推進する中核の組織ができていなくて、直接関係のない、いくつかの団体で合同でプロジェクトを進めていた。


 つまり、片手間に移住者受け入れの団体の指定を受けて国から多額の補助金をもらった。最低限、移住誘致を行う専門の組織をつくらないと、できる仕事ではない。

翌日、役所で、海津のこの意見を率直に市長に話した。隣町の町長から何とか助けて欲しいと連絡があったが、どうしようと市長が言うので、海津は、今さら隣町の若者の移住の助けなんて、できないと答えた。自分の所だけで手いっぱいだと答えた。成功した理由を教えて欲しいと言うのなら書面で答えることはできますと答えた。手紙だけでも書いて欲しいと言うので了解した。翌日に手紙を書いて市長に渡してもらうように役所の窓口に渡した。


 2027年4月3日、また市長から電話がかかり今度は県庁から隣町を助けるように要請が入ったと言った。よく聞くと、この県のNB町は国と地方創生に係る基本協定の締結にあたり、2016年9月2日(金)に県知事公邸において調印式をしたと言うのだ。早速、市長室で会い、市長の本音を聞き出した。県知事から直接言ってきたので何とか協力したという形にしたいが、何とかできるかと海津に聞いてきた。


 そこで海津は、率直に、私は、ここに移住し、ここが好きになり、この地域のため、全力で協力してきた。多くのして、次々に大きなプロジェクトと成功させた。これは、この地域が、好きだからできたことです。この仕事を始めた頃、いつかどこかで、挫折するかもしれないと常に思いながら仕事を進めてきた周りの人に助けられて成功していった。最近、今までを振り返ると、随分、危ない時もあったと思う。


 それと同じ情熱を見知らぬ土地に 投入しろと言われても、無理な事だと思いますと市長に答えた。それだけ真剣に取り組んできた仕事なんですと強く言った。もし隣町の移住活動を助けるために大きな投資をして失敗したら山陰創造者が負債を抱えて倒産するかもしれませんよ。そしたら今までの業績、努力、情熱が水の泡になるんですよ。海津は経営者としても、そんなリスクを他人のために負うつもりはないと、きっぱりと言いきった。

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