第4話:農協との交渉(201910-202001)

 今年は秋に向けての道の駅の重点販売についての話し合いが店長、

副店長と海津夫婦と役場の山田さんが集まって月曜日昼から役場会議室で

行われるので参加してくれる様に連絡が入った。実は先月から海津が20万円、

奥さんが10万円の合計30万円の給料をもらえるようになった。


 当日、会議室に行くと、もう一人、農協の宮田さんが来ていた。季節の農産物を売りたいのでその情報をもってきたらしい。会議が始まり役場の山田さんが今日の議題

を話してくれた。秋の果物の話が中心で、果物、梨、リンゴ、柿、葡萄の出荷時期と販売方法と派生商品のジュース、ソフトクリームなどの販売方法を道の駅の担当者と打ち合わせた。


 その他、新米の販売方法で、おにぎり、焼きおにぎり、パッケージした炊いた米。

 炊いた米の冷凍食品、販売パックの大きさ(2、5、10、30キロ)。

 あらかじめ農協では資料を作成して出荷時期が書いてあった。議長の山田さんから

海津に意見を求められた。そこで道の駅の売上の増加はうれしい限りですがスタッフ

の増加や販売するための備品購入など出費も増えているので単に、売上促進ばかりに目を向け売上金額増加だけでなく店員数、アルバイトの増員、備品購入費用の分担も

考えるべきだと発言した。


 もし農協さんの要請で販売促進するなら農協の職員の販売員も置いて欲しいし、

ジュース、ソフトクリームの機械の購入も折半するべきだと話した。それに対して、農協の宮田さんは農協では人員は出すだけの余裕はないと言った。それでは農協会員

にアルバイト募集でも良いから出して欲しいと海津は言った。そんな前例はないし、第一、秋の収穫期は猫の手も借りたいほど忙しいので、現実的には無理だと言った。


 それならジュース、ソフトクリームの売上が増えて機械を追加購入する時に費用を

出してもらえませんかと海津が言うと、農協では前例がないので農協の稟議が降りな

ければ出来ないと言った。海津が政府の答弁を聞いてるようですねと嫌みを言うと

参加者から笑い声が聞こえた。続けて全額費用負担してもらいたいのが本音ですが、

購入でもリースでも折半でお願いしたいと言った。


 もちろん、その時には果物の農協さんから道の駅への販売価格も再交渉になるでしょうと伝えた。すると農協の宮田さんが道の駅は、もともと農協の出店みたいにして

始まった施設であり独立した施設とは考えていないと言った。それに対して海津は、その考え方は古いし現在の月間の売上高は大きく、農協の出荷額のかなりの比率を占めつつあります。道の駅が農協の出店とか所有物とか言う古い考え方は変えてもらわないと困りますと言った。


 これに宮田さんが海津に向かって、あなたは確かに優れた営業センスをもって道の駅の売上増加に協力してくれたが、この地元の方々の考え方とすりあわせてもらわないと困ると言い出した。思わず議長の山田さんが、この会議は道の駅を発展させるための会議で、既に、月500万円の売上を上げてる地元活性化のシンボルなんです。

 ですから小さな事にこだわらずに地域活性化を目標に討議して下さいと言った。


 海津は農協さんと道の駅で備品費用は折半しましょう。また果物の納入価格は販売個数によって決めましょうと言った。それに道の駅に商品を供給する方法や時間など商品をきらさない運送システムを考えていくべきだと話した。農協では昔からの方法で必要数量を前日に電話連絡してもらい朝8時には道の駅にトラックで持って行く、方式で今後も対応すると言った。

 

 海津が、もし予想以上に売れて商品が足りなそうになったらどうしたら良いんですかと農協の宮田さんに質問した。笑いながら、そうなればうれしいねと言いながら、

その時は農協会員に連絡して、運ばせるから大丈夫と言った。海津が道の駅で、一番困るのは欠品です。それを良く理解しておいて下さいと釘を刺した。議長の山田さん

が追加で備品が必要になった時は農協と道の駅で費用半々で折半する事で良いですね

と言った。


 宮田さんが待って下さい一存では決められないから農協に持ち帰って話し合い、

また山田さんに折り返し連絡しますと言った。今週中に連絡下さいと山田さんが言い

宮田さんはしぶしぶ了解した。これで会議は終了した。役場の山田さんが農協と道の

駅の会議は重要だから最低月に一回、何か問題が起きた時は随時会議を開きましょうと言い閉会した。


 終了後、海津の奥さんは一人で家に帰り、農協の山田さんと海津は、お茶を飲みながら話した。山田さんが海津に貴重な意見を言ってくれてありがとうと言った。農協

がいつも高圧的で困っていたんですが備品購入の費用の折半なんて今迄なかったし、農協さんも驚いた様ですと言った。また農協は今でも道の駅は農協の出先機関の様に

考え支配したい事もわかり良かったと話した。海津さんの理詰めの発言に農協側が、たじたじで、面白かったと山田さんが言った。海津は道の駅の発展のために全面協力することを約束した。

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