第3話:運転手と道の駅(201908-201909)

 火曜日の朝8時半に山田さんが迎えに来て道の駅に出かけた。道の駅は車で15分、大きな街道の脇にあり目立った店構えだった。店では商品を並べ終えて、お客さんの来るのを店員が、手持ちぶさたに待っていた。道の駅に到着し、山田さんが海津夫妻を紹介した。


 紹介してすぐ、海津一郎は店員さんに商品を自由に試せる様に小分けにして欲しいと言い、早速、作業に取りかかった。手分けして30分ほどで作業終了。そこで海津が見本を見せるからよく見ておいて下さいと言った。少しづつお客さんが増えてきたところで海津は小さっ切った食パンに特産のイチゴジャムをつけて試食をすすめた。


 ここのイチゴジャムはイチゴの風味が市販のものと全然違う、論より証拠、試して下さいお客さんとすすめ始めた。一人二人とためし始め、すぐにお客さんが集まってきた。そのうちに1、2個と売れ始めた。また特産のなしをお客にすすめ、同じ様に売れていった。少しして温かいごはんが炊けて小分けしたごはんを発泡スチロールの

小皿の上にのせ、浜で取れた生のりや佃煮をごはんの上にのせて、お客さんに試してもらうよう促した。


 まるでバナナのたたき売りの様に売れ始め、店員達は目を丸くしてその様子を見ていた。魚は刺身を小さくして試用見本を店員に作らせ、わさび醤油、すだち醤油で

試食させたりした。その後は、多くの商品が売れていった。昼近くになると、その人だかりを見て多くのお客さんが訪れるようになった。炊きたての、ごはんや、小分けしたパンが、次々になくなり、遅れないように出すように海津が店員に指示した。


 海津の奥さんは旦那さんに変わって店員を指導して多くの商品をお客に試してもらう様にした。その後、海津が陳列や商品の配置を見て回り改善点をメモしていった。

 それを見ていた山田は一流の人は仕事が早い、すごい。奥さんも売り方が上手で、

ここで働いてくれないかと言い出した。15時まで仕事をして海津夫妻は家まで送ってもらった。


 山田は、この結果を役場に伝えると言い海津夫妻に手伝って働いてと言った。

 奥さんはパートなら協力しますと言った。海津一郎が火木の10時から15時まで、奥さんが月水金の10時から15時までなら出来ると伝えた。日曜日に海津夫婦が道の駅の件で話し合っていた。まず試食用のごはんを炊く事と試供品を作る事。

 在庫を切らさない様に継続して作っていくシステム。店員のお客さんへの声かけ、これが名産のイチゴジャム、パンにつけてお試し下さい。炊きたての、ご飯に特産の海苔や佃煮をのせたりして試食して下さいと、とにかく試食をすすめる事に集中すべきだと言った。


 パソコンで販売員の為のマニュアルと販売員から調理係へのごはんを炊くタイミング指示、パン、サンプル品の在庫状況と追加の指示をする事などの調理係用のマニュアルを作成して月曜日に持参して指示する様に奥さんに話しておいた。月曜日の夜、海津は奥さんに道の駅の状況を聞くと月曜日でお客さんが少ない割に売れたと言った。


 販売員と調理係にはマニュアルを説明して渡した。やはり土日、祭日のお客さんが圧倒的に多いので平日より、土日、祭日に助けて欲しいと店長に言われた。その件を役場の山田さんに連絡すると山田さんも同意見で平日は何とかなるので土日祭日にお願いできないと言ってきた。


 そこで、土日は海津夫婦のどちらか一人が土日、毎週出勤する事にした。山田さんから販売方法を店長へ徹底的に教育して下さいとの要望があった。そしてあっという間に一ヶ月が過ぎていった。その月の売上金額が判明し対前月3倍の売上。このまま順調にいけば良いと山田さんが喜んでいた。その後、送迎係は他の人に替わってもらい海津は道の駅の経営に専念することになった。


 週休2日で土日祭日は、海津夫婦のどちらかが、出勤した。夏休みは海水浴客が多くジャムやアイスクリームが飛ぶ様に売れて製造所では人員を増やした。  

 夏休み、臨時アルバイトも募集するほどの盛況となった。供給業者や農家の人からもうれしい悲鳴が聞こえた。


 更に米が旨いと言う事で当地のブランド米を道の駅の新商品として発売し、好調に売れていった。その他、蕎麦も海産物も良く売れた。夏が過ぎて一段落してきた。

今年の夏休みは海水浴客が多く道の駅も店員が目の回る忙しさで大繁盛だった。

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