第2話胸の中の叫び
「お前の中の音色はどんな音だ?」
しゃちょーがまるで、どうだ?俺カッコイイだろ?
みたいな顔して言ってきた。
「プッ…なにそれ?決めゼリフ?」
思わず吹いてしまい自分の感情を濁してしまった。
本当は今までにないくらいに気分が高揚している。
「い、いいじゃねぇか別に。いいか?楽器には、いろんな音がある。その中でもギターは特に演奏者そのもの感情を表現するのに最適だと俺は思ってる。
楽しい時、寂しい時、嬉しい時、悲しい時、俺はいつだってギターを弾き鳴らしてる」
「…感情をギターに乗せて弾くって事…?」
「簡単に言ってしまえばそうだな。なんせ俺は口下手な男だ。奏語だって思いっきり叫びたい時だってあるだろ?」
「まぁ…確かに…」
そうだ。俺だって口下手でいつも思ってる事とは別の事を言ってしまう。周りを傷つけたくない。自分の身を守りたいがため。そうやって感情に嘘を付いてきた。
そんな話を聞いていくうちに、目の前にあるギターがまるで魔法の楽器に見えてくる。
これを手にしたらどんな自分が現れるのか。
不思議にそんな事を思ってしまった。
「やってみても…いい?」
「あぁ。いいとも!じゃあ俺セットしてるから奏語はストラップに肩通して持ってな。いいか!?落とすなよ!?」
「お、おうよ」
ストラップってのはこのベルトみたいな事を言うんだろう。さっきのしゃちょーの見様見真似で肩を通す。それほど重くはないが、なんだか心地の良い重さに感じた。だが初めて触るギターにしては荷が重いように思えた。
「よし、こんなもんでいいだろ」
「しゃちょー、このギターの下についてる紐みたいなのなに?」
僕の話なんて聞かず真面目な顔をしてこちらを見てきた。
「なかなか様になってるじゃねぇかー。若いっていいねー。持ってるだけで様になってやがる。クーッ!羨ましい!ホラよ」
しゃちょーが僕の前に手を広げて見せた。
「なに?これ?」
「これか?これはピック。これで弦を弾くんだよ」
「へー…これがピックかー」
ピックを手に取ってみるとちょっと柔らかめのプラスチックで出来た平べったい2〜3センチぐらいのおにぎりの様な形をしたものだった。こんな物で弦を弾くと、どっかに吹っ飛んでなくしてしまいそうで少し心配になる。
意を決して顔を上げるとそこには一枚の姿見鏡があった。
「うひゃー。なにこれ。我ながらかっこいいって思っちゃったよ」
「そうやって見惚れてろ。ボリュームノブを回してっと。ほれ。弾いてみな。」
「へ?俺なんもわかんないよ!?」
「いいんだよ!最初は上下にジャカジャカやってりゃいいんだ!」
「お、おうそんなものなのか。それじゃ…」
初めて持ったギター、弾き方どころかピックの持ち方なんて全く知らない。ただ上から下へ弦にピックを触れさせ鳴らした。
その瞬間隣にあった機材から流れる音が世界観をまるで変えてみせた。頭の中に渦巻いていた悩みが全てかき消してくれた。
一回でその音だけが頭でいっぱいだった。
「…ぉお…おー!」
「それだけでいいのか?」
しゃちょーが煽るかのように言ってきた。
「まだまだ!やりたい!」
「いいぞ奏語!もっとやれぃ!」
僕は何も考えず胸の中にある心の内をギターに乗せてかき鳴らした。
「こんなのはどうだ!」
そんな事を言って僕の足元にあった何やら箱らしきものに付いていたスイッチを押した。
それはまるで今まで鳴らしていた丸い音ではなく一つ一つが太く尖るような歪みを出して頭の中に残っていた音が一気に爆発したかのように音を出した。
「何だこれー!超楽しいー!」
「いいぞー!もっとノってけー!」
どうやって弦を押さえていいかわからないが、握り込むように抵当に音を出した。
「なんだそりゃ?わけわかんねぇー!」
仰向けになって腹を抱え大笑いしているしゃちょーになんて目も傾けずひたすらその時を楽しんでいた
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「いやー!楽しかったー!これはすごいや。ねぇ、しゃちょー!…あらら?」
あたりを見渡すがしゃちょーの姿が見えない。
とりあえずどうしたらいいのかわからないから
ギターを地面へ徐に置いた。
「トイレかな?」
僕はしゃちょーを探しお礼を言うため探そうとした。はじめの一歩を前に出した瞬間スケートボードで痛めた右足をギターにくっついていた紐のような物に引っ掛けてしまった。
「イテッ!」
「おいおい〜。大丈夫か?」
「どこ行ってたんだよー。今探そうとしてたんだ」
「便所だよ。にしてもよくあんだけ暴れれるもんだなー見ててある意味怖かったよ」
しゃちょーの言葉がうまく理解できない。
「へ?どゆこと?」
「普段何を思って生きてるのか全くわからん。何も考えず勢い任せにできる奴なんか初めて見たよ。大概の人はどうしたらいいかわからんままおどおどして終わる。それもそれで見てられんがな。奏語、お前は面白いけど変な奴だ」
「なーんか。からかってんのか褒めてるのかよくわからん言い方ー。まぁいいか。これどうしたらいい?」
「やるから置いといていいよ。」
「これ抜けばいいのか?」
「おい!待て!まだ抜くな!」
「へ?」
僕は何も考えずそのままギターに繋がっていた紐を抜いてしまった。
すると隣にあったアンプから「ブツンッ!」と大きな音が出てあまりの事に僕は尻餅をついてしまった
「あちゃー。いわんこっちゃない。だから抜くなって言ったのに。」
「へ?何て?」
「シールドを抜くなっていったのー!」
耳鳴りがして周りの音や声がぼやけて聞こえる。
「へ?上手く聞こえないんだけどー?」
「だめだこりゃ」
ため息をつきながらしゃちょーが言った。
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1時間後
俺は自宅に戻った。
あの後直ぐに耳の調子が戻りしゃちょーの事の説明を聞いた。どうやらギターに繋がっていた紐は、シールドと言うらしい。あれを音量も下げずに抜いたからあのような音が出たという。
そして片付けをした後、僕は帰ろうとした時呼び止められた。するとしゃちょーがどこから出してきたのか分からないぐらい埃かぶったギターを僕にくれた。もう使ってないギターだからといってそれを受け取った。貰った時は凄く嬉しかったけど正直どうしたらいいかわからない僕はギターと睨めっこしていた。
「どうしたらいいのやら」
こうして貰ったギターをまじまじと見てみると本当に汚い傷だらけだし埃まみれ。
「んー。取り敢えず掃除するか」
そう言って疲れ切った重たい体を起こし、痛みが走る足を引きずってタオルを取り軽く濡らし部屋にもどりギターを拭いた。
「まぁこんなもんだろ」
拭き終わってギターを見ているとギターの先端に何か文字が書いてあった。恐らく制作元の名前だろうと思い携帯で調べる事にした。
「…お。これだ。」
そこには同じ文字の制作元の名前等が書いてあったが、他のページには、こんな事が書いてあった。
『そのメーカーのギターを使う人は変人だ!』
その文を見てしゃちょーの言葉を思い出した。
(お前は面白いけど変な奴だ)
しゃちょーは分かってこのギターをくれたのかはわからない。だがちょっとした運命を感じざるを得なかった。
「フッ、変人、変人かー」
僕は座ったままギターを膝に置き脇に挟み、何もわからないままギターを、鳴らした。
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第3章に続く。
読者の皆様へ
ここまで読んで頂きありがとうございます。
作者の夕鳴 小熱(ユウナキ コネツ)です。
まず皆様に言っておきたい事がありましてこの場をお借りします。
自分は小説やライトノベルなどは読んだ事がほぼありません。
なので自分が知っている言葉などで文字列を並べてしまい申し訳ございません。
世界観等も中々入ってこない等あるかもしれません
ですから押し付けがましい様ではございますが
皆さまからの意見等が聞かせて頂きたいです。
自分は出来ているのか出来ていないのかすらもハッキリしていません。
どんな事でも構いません。
大変申し訳ございませんが何卒よろしくお願いします。
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