mission 15
カタカタとキーボードを叩くキータッチ音が断続的に部屋一杯に響いている。
部屋の電気はついておらず、人の気配は殆ど無い。
ただ1人、大和葵を除いては。
「んー?多田さんにUSBメモリを貰ったのはいいけど、これ一体どんなファイルが入ってるの?」
カチカチとマウスを動かしてファイルを開きながら疑問に思うが、それに答えてくれる者は1人もいない。
大和葵が記憶しているのは「彼について知りたいと思うならこれを開いて見ると良いよ」と多田に渡されたこのUSBメモリだけなのである。
多田の言う彼とさす人物は恐らく1人なのだが、見るからに怪しい過ぎるほど、このUSBメモリのケースには機密と大々的に書かれている。
大丈夫なのかなぁ?と本心から心配になるが、ここまで来た以上、このUSBメモリの中身が気になって仕方がなかった。
接続されたUSBメモリから、特殊ファイルフォルダを選択し、更に進める。
特殊ファイルを開けば、今まで見た事の無い量のフォルダがずらりと並んでおり、その一つ一つにはアルファベットと文字と数字の羅列が並んでいる。
「ダミーフォルダ?暗号?どれが本物だろ……」
試しに一つ目のフォルダを開いて見れば、当然の様に空っぽであった。
「あの人、暗号の解読方を教えくれても良いのに……」
恨み言を言いながら紙とペンを持ち出して、紙の上に不知火と書いた。
試しに2進数化したモノを書いて見るがあまりの数字の多さから違うと確信した。
「2進数じゃ無いのかなぁ?武田信玄が使った暗号でもなさそうだし………。あっ!」
気づいてしまった葵はフォルダ内検索を用いてフィルター検索をする。
絞りに絞った結果、【E4B88DE79FA5E781AB】と言うフォルダに行き着いた。
そのフォルダを開けば先頭に不知火、空白を置いて名前が入ったフォルダが5つ見つかる。
その中から不知火 空と書かれたフォルダを見つけると、中身は怪しげな.txtファイルのみで、葵はそれをワードそれを開いた。
起動から数秒で展開されたファイルには、URLのみが書かれており、
「面倒臭さっ⁉︎」
思わず声が出てしまうほどだった。
ここまで来てやめる訳にも行かず、URLをコピーアンドペーストして検索エンジンで開いた。
すると、ログイン画面らしきものが移り、IDとパスワードが要求される。
「最初からこっちを教えてくださっいての全く……」
そこに自分のIDとパスワードを入力すれば簡単に進むことが出来た。
先程までとは打って変わり、不知火と書かれたフォルダがポツンと置かれていた。
それを開けば先程見た名前がいくつも載っていた。
「時雨、空、秋水、椿、夕。一体誰なんたろうこの人達?」
悩んでも進まないので、カーソルを空と書かれたフォルダをクリックして開いた。
そこには報告書と書かれたファイルがあり、それをダブルクリック。更に次に進む。
不知火 空に関する報告書1
不知火 空。日本、東京都産まれ。現戸籍無し。
父親は1代で築き上げた貿易商の不知火 孝一(故人)。
上記詳細は別記載するパーティ会場襲撃事件にて。
過去、幾度も戦場に現した、通称パックキラーと呼ばれる1人であり、彼の出た戦場では継戦状態の困難により戦争の早期終結に繋がっている事が多く確認されている。
終結に繋がる原因として、不知火 空本人による司令官抹殺が起因していると見ている。
彼によって全滅した部隊は数多く、調査を続けるうちにある事が判明した。
1.敵対するのは決まって軍クラスの装備をした組織的集団である。
2.戦闘に加担する状況は必ず膠着状態である。
3.加勢する組織に決まりは無く、どちらかが戦闘困難になるまで戦闘おこなう。
世界中で上の条件で行動する謎の集団が戦闘に参加することを確認しており、被害は数知れないものとなっている。
彼がその一員である可能性があり、再度の調査を提案する。
調査報告書2
調査の結果、武装集団はunknown(不明)と呼ばれており、彼の所属を確認した。
この武装集団は、PMC(民間軍事会社)とも異なっており、存在目的など不明な点が多い。
多額の額を払う事で彼等を動かす事が可能である事から傭兵に近い性質である。
但し、かなりな高額を用意しても断られるケースも存在している。
調査のところ、アメリカ合衆国が高確率で彼等を雇うのを失敗しており、戦場で彼等の攻撃を受ける事が多く確認されている。
特殊部隊に対する攻撃能力が高い事から、彼等の戦闘能力は世界中の特殊部隊と比べても、遜色ない程である。
現時点での接触は不可能ではあるが、彼等に通じる通話番号を入手する事に成功している。
調査を続けるにあたって、彼を雇い入れ戦闘評価を行うべきであると提案する。
パーティ会場襲撃事件。
不知火 幸一が主催したパーティ会場へ武装した集団による襲撃事件。
出席者524名中、死者520名、行方不明者4名を出し、世界で波紋をよんだ。
行方不明者4名は齢10を超えない子供であり、他520名は惨殺とも言える状態であった。
不知火 空は4名の行方不明の1人であった。
直ぐさまICPO(国際刑事警察機構)は調査に乗り出すものの、調査中に行方不明者が続出し、調査を断念、打ち切りとなり、真相は闇に消えた。
行方不明者4名は死亡扱いとなる。
なお、unknownの関与は今のところ見られない。
別組織である可能性が高く、これ以上の情報入手は困難である。
不知火 空の情報がぎっしりと載っており、葵は釘付けでそれを読む。
だが、肝心の調査報告書3が抜けており、その先の情報が入手出来ない。
「何で肝心な場所が抜けてるのよ!もぉ〜〜」
それでも探し続けると、調査報告書3を見つける事に成功した。
葵は好奇心に身を任せクリックする。
IDレベルによる開示不可
そこには権限制限により弾かれたメッセージが記載されていた。
つまりは極秘であると言う事。
葵はガックリと肩を落とした。
疲労がどっと押し寄せたかのような気分である。
それでも、不知火 空のある程度の情報を得る事には成功した。
彼が傭兵をやっているのは、最後に載っていた襲撃事件が大きく関係しているのだろう。
葵はそう結論付けて、ログアウトボタンを押して、PCをシャッドダウンさせた。
片付けながら、自分が空と同じ状況だったのならどうしたのだろう?
そんな事を考えるが、全く想像がつかない。
人が死ぬのを間近で見たのだろうか?
もしそうなら、それに耐えられたのだろうか?
普通なら多分耐える事なんて出来ない。
葵自身も到底耐えれるとは思わないし、心が壊れてしまうとも思った。
けど、彼の心が壊れているそぶりは一切見ないし、壊れているようにも見えない。
平気な顔で人を殺しているからには普通ではないのは確かなんだろう。
「逆に謎が深まるばかりだな〜。……でも、この違和感はなんだろう?父がいなくなったのと同じだからかな……」
ファイルの保存日時を見た時からずっと感じる違和感が葵の頭の片隅に残り続けた。
3年前という日時だけが……
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