mission 6
リムジンから降りた後、俺はホテルの一室の前に来ていた。
とは言うものの、泊まる部屋とはまた別の階で別の部屋だ。
日本に来るときにハイジャックに遭わなければもう明日の為に寝てる。
だが、そうも言ってられ無い。
これから会わなければいけない人物がいるからだ。
ドアノブを捻れば鍵がかかっておらず、ドアが奥へと開く。
「やぁ、ソラ坊。久しぶりですね」
「不用心だぞ、ホーネット」
部屋中に武器を広げながら俺に気付いた人物は、英語で俺をそう呼んだ。
当然俺も英語で返す。
この呼び方で呼ぶ奴よく知っている。
社長の下で組まれた部隊で一緒の奴だからだ。
この目の前のホーネットもその一人。
何故こんな呼び方なのかも知ってる。
俺が入隊したのは12歳のガキの頃。
大勢の大人の中にポツンと1人子供が入ればそりゃそう呼ばれる。
その呼ばれ方が定着した所為で一時期はコードネームがソラ坊となった時期まである。
せめて坊は取って欲しいぐらいだ。
「今回、お互いに貧乏クジを引いたみたいですね。まぁ、しょうがないですけど。ソラ坊は大丈夫でした?旅客機がジャックされたみたいですけど?」
「あぁ、酷い目に遭ったよ。そっちは?」
「私はソラ坊と違って快適な旅でしたよ」
「それは良かったな。で、そっちの今回の仕事は?」
「今回、ソラ坊はニホンの方の護衛でしたけど、こっちはこっちでアメリカだのロシアだの、チャイナだの護衛しろと言われてますよ……当然私1人じゃ無いですけど。アメリカからはテロリストを殲滅しろと依頼されたようです」
「社長が寄越す人数は?」
「さぁ?多分10人も寄越す気は無いでしょうね」
うわぁ……
10人以下で人数すら分からない奴等相手にするのか……
社長は鬼か何かだな。
その10人の中にある人物が入ればいいのだが……
「隊長は?」
「ファントムですか?あの人今、シリア辺りで戦闘中ですよ。なんでもトルコに侵攻するISISの一部隊を5人で壊滅させて来いだそうです」
「よくやる……」
望みなんてなかった。
この目の前のホーネットや俺の上司はたった5人で戦地に赴いていた。
だが、あっちはあっちで大変そうだ…
「久しぶりの戦闘に隊長も張り切ってましたよ。『よし、使える奴探してくる!』だそうです」
前言撤回、張り切り過ぎだよ……
どんだけ人材求めてんのあの人。
結果的に加わるまである。
だが、その加わった半数が社長に使えないと言って即解雇されるまでがテンプレートである。
不当解雇として訴えれば即こっちが負けるのが目に見えているのだが……残念な事にこの世界に俺が働いている会社は存在してない。
と言うのには語弊があるが、本社はどこの国にも存在しなく、社名も在籍する社員も不明。
世界からは得体の知れないモノとして認識されており、俺達の事をunknownと呼んでいる、
その呼び名を社長が気に入ってそのまま社名にしている程だ。
だがら訴えように訴える相手がいないために訴える事なんて出来ない。
解雇された奴は哀れだなと思う。
まぁ、それ以上の感情も無いのだが。
「今回、ニホンが仕事場とは。世界も物騒になりましたね〜」
「どこだって人がいれば戦場になるだろ」
「そうですね。人のいるところ争いは絶えませんからね。まぁ、仕事が回ってくる分に文句などはありませんが。そうそう、これを渡すんでした」
そう言って紙束を俺に渡した。
人の顔写真と何やら大量に文字が書かれているが、これは多分、
「今日本にいる|殺し屋リスト(ヒットマンリスト)をまとめた物です。249名もいるのですから少しビックリですね。ここの国はスパイ天国だけかと思ってましたので」
俺の中で答えを出す前に全てを説明した。
このホーネットに調べてもらった殺し屋リストとは、殺し屋の危険度、知名度、経歴、戦果など色々まとめ貰ったものだ。
これは首相とその家族の護衛に役立つからありがたい。
相手はテロリストだけとは限らないのがこの世界だ。
用心する事に越たことはない。
後はこの東京にいる殺し屋の顔と殺し方を頭に叩き込めばそれで良い。
「助かる」
「それは日本各地の物なので今回のトウキョウのヒットマンは自分で選別してください。何せまとめるのに時間がかかり過ぎて、飛行機内の時間殆ど費やしましたから。少し眠いです」
欠伸をしながらホーネットはそう言うが、この情報量を見る限りとても機内の10時間そこらで終わる量では無い。
むしろ殆どで済んだ事が逆に驚く。
先程まで部屋一杯に広げられてた武器は全て片付けられ、ノートPCが机の上に置かれているだけとなっていた。
部屋の時計は既に夜の11時を回っている。
時差ぼけしてるのもあって俺も若干眠い。
「これで良しっと。渡す物は渡せましたし、今日のやる事は終わりです。そう言えば明日からの私の仕事は会談予定地周辺のリスクポイントの選別ですので、ソラ坊は別でしたね」
「ああ、何でも高校生になれとさ」
「まあ、学校に通ってみるのも良い事です。何かあれば呼んでください。援護くらいはしますよ。なんなら勉強ぐらい教えますよ?」
「それはその時になったら頼む」
「そうですか。少し楽しみして待ってますよ?」
楽しみにされても困る。
入ったばっかの時に良い大人達が揃いに揃って俺に群がり勉強を教えてたのだから、今ではある程度なら1人で出来てしまう。
結果、無駄知識まで覚えたぐらいだ。
丁度良く会話が途切れたところで、部屋に戻るとホーネットに言った。
「俺は眠いから部屋に戻る」
「そうですか。時差ボケありますし、明日はそれぞれ忙しいので、この辺でお開きにしましょうか」
ようやく今日のやる事を終えて寝れる。
今日は一段と疲れた。
そのせいか足取りが重い。
明日から学生とかは今は考えたく無い。
ドアノブに手をかけたところでホーネットに声を掛けられた。
「では、お休みソラ坊」
「ああ、お休み」
そう言って俺はドアを閉め、借りた部屋に戻った。
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