第29話俺と付き合ってください!!!
「それで?話って何?」
肩まで伸びた髪の女の子は{ボスン}とベッドに座り言った。
「蜜穂も知らないんだ?」
そう言って綺麗な黒髪を二つに結んだ女の子も蜜穂の隣に{ボスン}と座る
「じゃあ雫は沙織の隣に座って」
立ってる俺の横で、ハーフアップの女の子が言う
「ん、分かった」
そして華の指示通り巨乳のポニテの女の子はツインテールの沙織の横に{ボスン}と座る。
さて、これは何の集会かと言うと話は遡る事昨日。
俺は、なんとか夢来乃叔母さんを助ける事が出来て元の…………俺が存在して良い世界へと戻ってきた。
だが、戻ると時代は2027年…つまり俺が高校3年生の頃になっていたんだ。
母さんの死の運命を変えた事によるのか、それとも神様が気を利かせてくれたのか…それは分らないが、俺はチャンスだと思い華に電話を掛けた。
「あ、華?今良い?」
「えっと、俺華に伝えたい事があるんだ…」
そう切り出し告白をしようと思った。
そして「俺、前から華の事がっ!」と言った瞬間
「ちょっと待って!」
と遮られた。
今めっちゃ気持ち乗っけたのに!と思いながらも「どうした?」と聞いたら「その話皆の前でしてほしい」と言われた。
そんで学校が休みの今日、俺の家に蜜穂と沙織と雫と華を呼んだってわけだ。
皆の前でしてほしいって言われても正直どう切り出して良いのか分からないし
何より華の考えも分からない…。
俺が黙り込んでるのを見かけて華が口を開いた。
「私、数日前に憐から告白されそうになったの」
そうズバッと言い切った華に三人と俺は動揺した。
そ、そんな感じに進行するのか?と華を見ると眼差しは真剣だった。
なので俺は余計な事は言わず華の考えを聞く事にした。
「今日集まってもらったのは、そんな自慢をしたいからじゃないの…」
華の一言一言に3人も集中していた。
「私は知ってる。沙織も蜜穂も雫も憐に言いたい事があるんじゃないの?だから私は、皆に集まってもらったの」
俺に言いたい事がある…?
俺なんかしたっけ?と記憶を巡るもそんな記憶はない。
3人は俺に何が言いたいんだ…??
「それで?憐が華の事好きならそれで良いじゃん。結局私には自慢にしか聞こえなかったけど?」
苛々しながら沙織がそう言った。
「ねえ?沙織はそれで良いの?」
「何がよっ!?」
「私は沙織が憐に対して抱いてる感情知ってるよ」
「だから!それが何だって言うのよ?そうやって高い所から見下ろしたかったの!?華は何が狙いで皆を集めたの?!」
「私はっ!!ちゃんとしたかったんだよ!皆の事知ってたから!親友として!ちゃんと!!」
{ガバッ}と沙織が立ち上がり声を荒げる
「だから!ちゃんとしたかったって何をだよ!?そんな曖昧な言い方するなっ!!」
今にでも殴り合いが始まりそうな空気が辺りを包んだ。
これが女同士の喧嘩…こうなると男は無力だ。
{バクバク}心臓が鳴りながらもどうする事も出来ないので俺は黙るしかなかった。
「憐の事好きなんだろ!?なら何でその気持ちを言わないんだよ!!」
華の激昂に沙織は、華の肩を掴んだ。
「華には関係ない事だろ!私は別に言わなくても良いと思ってたんだよ!!」
華もお返しと言わんばかりに沙織の肩を掴んだ。
「はっ?関係ない?!だったら何でそんなに苛々してるんだ!?本当は心の中動揺しまくってるんだろ!?そーやって本音隠して生きていくのか!!本音隠すのが美談だとでも思ってるのか!?そんなの美談でも何でもない!ただのチキンだっ!!!」
「うるっさいわね!!別にチキンだって何だって華には関係ないだろ!?もう決まった事ならそれで良いじゃないか!!!」
「良いわけないだろ!!!それじゃ私が納得しないんだよっ!!!私が後ろめたいんだよ!!!」
「結局自分が気持ちよくなりたいだけか!?!」
「そーかもね…」
そう呟いて華は掴んでいた沙織の肩を離し言葉を続けた
「沙織は親友だから…沙織がどれほど憐の事好きなのか痛い程分かってたから…だからそんな沙織を素知らぬフリして憐と仲良くなんか出来ない…そう思ったの。」
華は一筋の涙を流す。
それを見て沙織も華の肩を離す。
「そー言うの自己満って言うの知ってる?」
「そうね…自己満だよね…」
「でも…親友の自己満に付き合ってあげる」
そう呟く沙織も涙を流していた。
「私は!私は憐が好き!大好きなの!!ずっとずっと好きだった!!!だから私と付き合ってください!!!!」
「ちょっと待ってよ」
沙織の告白を遮る声がした。
声の方を見ると蜜穂が立ち上がっていた。
「勝手に盛り上がらないでくれる?私だって…私だってね!!憐の事好きなんだよ。初恋なの…ずっと大事にしてきたの!こんな形で誰かに奪われたくない!!だから憐!私を選んで!!私と付き合ってください!!!」
その蜜穂の告白を見て雫も意を決したのか{スッ}と立ち上がった。
「華の狙いってこう言う事か…なら私もちゃんとするかな…」
そう言って軽く{ニコッ}と雫は笑い言葉を続けた。
「正直私二人よりも熱意は無かったかもしれない。そりゃ付き合いも2年ぐらいだしね…間違っても同じぐらいの気持ちなんて言えないよ。でも……そう、でもね?なんだろ…憐を取られたくないってここに来て強く思った」
「だから憐!!私と…私と付き合ってください!!!」
華が{チラッ}とこちらを見る。
あぁ、分かってるよ。俺も男だ。
女の子にここまで言わせたんだ!ちゃんとするさ。
{スー}とゆっくり息を吐く。
そして俺は口を開くのだ。
「沙織ありがとう。沙織はいつも俺の側に居てくれたね。俺のくだらない話やちょっとした買い物にも付き合ってくれて嬉しかったよ。だからこそ、ちゃんと言うね。ごめん、俺には好きな人が居る。だから沙織とは付き合えない」
「蜜穂。お前とは1番付き合いが長いな。蜜穂と会ってなかったら多分俺は今この位置に立ってなかったと思う。それに蜜穂は知らないと思うけど俺に変われるチャンスをくれたのは蜜穂なんだ。俺にとって蜜穂は、とても大切な人。大切な存在。…でもごめん。付き合う事は出来ない。好きな人が出来たんだ。こんな俺にも好きな人が出来たんだよ」
「雫。俺にとっての雫は、ちょっと不思議な関係で……。きっと
俺は1人1人に返事を返して華の方を見る。
「華!好きだっ!色んな経験をして最後の最後に華の事を思い浮かんだ!俺は華に恋をしてる!華と幸せな未来を進んで生きたい!!だから――だから俺と――――
――――付き合ってください!!!」
少しの沈黙の後
「よろしくお願いします」
そう涙を流しながら女の子は{ニコッ}と笑顔を見せるのだった。
こうして俺と華の付き合いが始まり数日後の学校の放課後、俺と華は一緒に校舎を出た。
グラウンドでは部活に取り組む生徒達。
その中で1人ボールを蹴りながら俺達に近付いて来る人がいた。
「よお!お二人さんお熱いね!」
「よ!昏亞!サッカー頑張ってるな」
「あぁよ!今年は3年生だから下の奴にバトンタッチしたくて育成頑張ってんだよ」
{へへっ}と笑う昏亞
「つってもハットトリックの貴公子様に付いていける後輩居んのか〜?」
「おいおいその呼び方やめてくれ!」
昏亞は2年生の時に全国大会(予選含む)で全試合にハットトリックを決め、それからハットトリックの貴公子なんてあだ名が付いた。
「でも勿体無いな。卒業したらサッカー辞めるんだろ?プロ目指せば良いのに」
「ばっか言うなって!俺サッカー始めたの高校入ってからだぞ?そんな俺がプロなんておこがましすぎだろ!」
「そー言うもんなのか?」
「そー言うもんだ!」
そんな会話をしてる時に
「おーい!
と声が響いた。
「やっべ!コーチが五月蝿いから行くわ!んじゃあな!」
「またな」
「またね」
俺達は昏亞に挨拶をして練習に戻る昏亞の背中を見届けるのだった。
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