第26話1人の少女の話
暗闇から視界が開けて意識がハッキリした頃には、どこかの建物内にいるのが分かった。
本当に落ちたのか俺は地面に尻餅をついていた。
「
頭上から声が聞こえてきた。
俺は声のする方に視界を合わせる。
するとそこには子供…男の子がいた。
「子供…??」
驚きのあまりつい言葉に出してしまった。
「ワシは子供じゃなーい!訳あってこの姿になってるがワシは神様だ!」
へ?神様…?
神様ッッ!!?
「神様が子供…??」
「だから!ワシは訳あってこの姿に――まあ、良い」
{コホン}と咳払いをし
「お主に話がある!」
神様はそう切り出した。
「話…??」
「その為にわざわざこの部屋に呼んだんじゃ!」
「あ、そ、そうだ!俺、育穂さんの前で落ちたんだ!俺は育穂さんの所に戻らないと!」
「大丈夫だ。その心配は要らん。お主と言う意識を連れてきたからの…今頃あの時代の本当のお主が対処しとろうよ」
って言っても!
あの話は俺しか知らないんだぞ?
元の俺が戻ったらどう帳尻合わすんだよ
「まあ、お主の疑問ももっともじゃな!じゃが、大丈夫だ!なんとかなっておる!」
俺の心の中を覗い…た?
「一応神様じゃからの。ワシの前で隠し事は出来ぬぞ」
{にや}とイヤラシイ笑みを浮かべる。
「そーかい。その神様が大丈夫言うんなら大丈夫なんだろうな。それより俺に話って?」
「そうじゃの。そろそろ始めるか。1人の少女の話を――」
少女の話…??
神様は静かに語り始めた。
俺はそれを黙って聞く事にした。
「ある所に10歳の少女がおった。その子には2つ下の妹が居た。2人の姉妹はとても仲が良かった」
「ある日、10歳の少女……お姉ちゃんは買い物に出かけた。と、言うのも母親に買い忘れた物を買ってきてと頼まれたからだ」
「本当は妹と一緒に行こうと思ったが、妹は友達と遊びに出かけていたので一人で買い物に行った。好きなお菓子を買って良いとも言われていたので、どんなお菓子を買おうか気分は高らかだった」
「お姉ちゃんは母親に頼まれた物をカゴに入れ次に自分の好きなお菓子と妹の好きなお菓子を入れレジに並ぶ」
「無事に買い物が出来て店を出た頃には綺麗なオレンジの夕陽が落ちる頃だった。暗くなるまでには帰りたかったお姉ちゃんは足早と歩いて行く」
「信号が赤になり早く変わらないかなーと待っていた時にそれは起こった。」
「トンとお姉ちゃんは誰かに押されたのだ。そして道路に出てしまい向かって来たトラックに衝突した」
その時、部屋のドアが{ガチャ}っと開き綺麗な女の人が入ってきた。
「続きは私が話すわ」
ゆらのんはそう言って神様を一睨みする
「次に目が覚めた時、少女は長い列に並んでいた。首には名札がかけられており【霞夢来乃】と書いてあってその下に【セキセイインコとして生まれ変わる】と書いてあった。」
「少女は怖くなりその場を離れる事にした。すると1人の大人の男性に少女は捕まる。少女はその人に聞いた…ここどこなの?すると男の人は少女を自室へと案内した」
「自室に案内された少女はそこで自分の身に起きた事を告げられた。自分が死んだ事、ここが天国な事、そしてセキセイインコに生まれ変わる為の列に並んでいた事…全てを聞いた」
「目の前の男性…神様は更にこうも続けた。でも君が生きたいと思うのならチャンスをあげるよ。そう言って過去に戻って死ぬ運命を回避出来ると説明された」
「少女は思った。きっとこうして死んだ事は運命だったのだろう…と。だから少女は過去改変のチャンスを断った。」
「だったらインコに輪廻転生って事で良いんだね?そう神様に言われるもインコは嫌だ!と少女は言う」
「じゃ―――」
「――じゃあ天使になるか?と神様は少女に聞いた」
ゆらのんの言葉を遮って神様が話をし出した。
「丁度その頃、天界は天使不足だった。これも何かの縁だとワシは思いその少女を天使の道に招き入れた」
「最初は見習いエンジェルとして色々な事を勉強させた。エンジェルは子供の天使って意味だ」
「エンジェルは皆白のワンピースを着ると決まっておりその少女にとても似合っていた。それから少女は20代になった頃…天使に昇格した」
「天使はエンジェルだった頃の名残で白のワンピースを着る者もおるが、服装は特に規定はなかった。だが、まさかそんなハレンチな格好を選ぶとは思わんかったがの!」
そう言って神様はゆらのんをチラッと見る
「ここから私が」
そう言ってゆらのんは{コホン}と咳払いをし話を繋げる。
「天使として年月が経ったある日、私は神様に呼ばれた。この部屋…神様の部屋に着いたら1人の女性が居た」
「私は……、私達は本能的に、DNA的に、姉妹だと理解した。妹の…未来乃の辿ってきた歴史が書いてある本を見ると私は驚愕した」
「好きな人に裏切られ…親友とも喧嘩別れのまま過労死と言う悲惨な歴史に私は絶望した。その時に私は、ある事を思い出した。そう…過去改変だ。」
「過去改変は基本的に10歳未満の子供にしか適応されないのだが、私は私の分を未来乃に譲りたいと神様に言った。勿論それは可能だが、本人はどうなんだ?と話になった」
「私は勿論過去改変を望むと思っていたが、未来乃の答えはNOだった。何故?と問いただしたら未来乃はこう言った」
「私は満足な人生を送れた、と…。私はそんな訳ないでしょ!と更に問い詰めた。そしたらね…未来乃はこう言ったのよ」
「大切な息子と生活出来た、だから満足なのって…」
なん…だって…?
大切な息子と生活出来た…?
…は?あんな生活が良かったのか?
母さんはあんな生活で満足してたのか!?
「更にこう続けたわ。でも確かに気掛かりはある…息子の…憐の事は心配。あの子私が死んで、ちゃんと生活出来るかしら…」
これって正史の母さんだよな?
まともな会話なんてしてなかったよな?
むしろ俺は死ねって思ってた…。
そんな俺の心配を母さんが…?
「私には子供居ないから分かんないけど、未来乃は……母親は死んでもなお子供の事を心配する程愛していたのね」
「そう…みたいですね…」
涙が溢れてきた。
母さんの思い描く良い息子なんて俺は言えない。
それなのに母さんは俺の事を本当に愛してくれていた。
「もし…もし息子が…憐が不幸な事故で死ぬような事があったら、その時はお願いして良い?…私は未来乃にそう言われた。そうして未来乃は輪廻転生の列に並んだわ」
「でもね?私はその頃から{ふつふつ}と一つの後悔をし始めた。それは、もしあの時…私が生き返る事を選んでいたら未来乃はこんな人生を歩まなくて良かったんじゃないかって…」
「だって、きっと…ううん、絶対私は未来乃の味方だから!少なくとも過労死って結末は防げた筈!…でもね?もう私には過去改変出来る資格はなかったの」
「過去改変を行うには条件があってね…幾つかある条件の一つ、死んで48時間未満の者って条件が当てはまらなかったの」
「それから私は自分の選んだ選択にただただ後悔をし続け…数年が経った時貴方が…
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