第24話友達になるのに身分とか関係あるの?

2026年6月1日。

携帯を見るとディスプレイにそう表示されていた。


2026年…??


って!!高2か!?

あの告白の事件は11月だから…5ヶ月前ぐらいか…。



「未来乃なんて…未来乃なんてもう友達でもなんでもない!!」



一階から育穂さんの怒声が響き渡ってくる。

そうか、育穂さんが母さんと喧嘩したのがこの日なのか。

でもなんでゆらのんは時期を知っていたんだ??…いや、考えても仕方ない!今は出来る事をしよう。


俺は部屋を出て階段を降りようとした時に{ガチャン}と玄関が開く音がしたのを聞き逃さなかった。

多分育穂さんが家を出たんだ。

そう思い{ドタドタ}と階段を降りて俺は玄関を開けた。


すると玄関先の門扉の所で悲しそうに佇む育穂さんが居た。



「憐くん…」

育穂さんはそう呟き泣いていたのか涙を拭った。

「ごめんね。うるさかったよね…」

そう続けざまに謝る育穂さん。


俺は

「少し歩きません?」

と、提案する。


育穂さんは小さく頷き門扉を開けるのだった。


さて、ここまで来たがどう話せば良いんだ?

母さんと喧嘩したのは見て分かるし、それを察してる事も分かっているだろう。

じゃあ何があったんですか?と惚けるのは逆効果だ。


育穂さんと一緒に無言で歩く。

そんな時に俺は育穂さんの話を思い出すのだった。



あれは正史での事。

母さんが死んで育穂さんの家に住むようになった日の事。

「大事な話があるから」と育穂さんに呼び出された日の事。


何故母さんが、死んだのか。

育穂さんは静かに語った。



「あの日の私はある疑念で心が追い詰められていたの」

そう語り出した育穂さん。



「私と未来乃は小学校からの付き合いでね。憐くんも通った深夜学みやがく小学校出身なの。」


「当時の私は深夜学小学校……みゃーしょうに通う事を良しと思ってなかったの。だって私のパパは水無月コーポの社長で私は言わば社長令嬢。こんな庶民の学校が私に合う訳ない、と思っていた」


「だから友達なんて一人も居なかった。それでも別に良いと思ってた…だって元々周りの子は私とは格が違うんだから当然だって……思ってたの」


「今思っても生意気な子供よね。でもね?友達が出来ない理由をそれなんだって思い込みたかったただの可哀想な子供だったの。」


「そんなある日。小学2年生になって私に話しかけて来た子が居たの。それが未来乃だった。最初は、ただの気まぐれかなんかで話しかけて来たんだと思い適当に会話をするだけだった」


「でもね?未来乃は、当たり前に…普通に…私に接してきたの。それがなんか心地良くて気付いたら毎日話すようになってて…友達になってたわ」


「そんな時に未来乃から言われた言葉があるの。友達になるのに身分とか関係あるの?一緒の学校にいるんだから皆一緒でしょ?って…私にはとても響いた言葉だった」


「それからずっと未来乃とは一緒で、憐くんを産んで親に勘当されても私はお金の支援も含め良好な関係を続けていた。」


「そんなある日…私は未来乃に対して1つの疑惑を持ってしまったの。それは未来乃は私の事本当に親友と思ってくれているのか」


「と、言うのも…憐くんは薄々気付いていたと思うけど、さっき言ったお金の支援って言うのは未来乃に生活費を貸すって事なの。」


「未来乃は事あるごとに私にお金を貸してほしいと縋ってきていた。私はお金持ちだし子供や恋人なんて居ないし生活費も困ってなく、むしろお金の使い道が無かったからお金を貸すのは全然問題じゃなかったの」


「だからあげるつもりで、返せる時に返してねって感じで貸してて…勿論未来乃には憐くんがいるしお金が必要なのも分かってたからね?」


「でもね?そんな私に甘えてなのか未来乃は、毎月の様にお金を貸して欲しいと言ってきたの。憐くんも小さいし何度も言うけどお金には困ってないから親友の為ならってどんどん貸してた」


「そんな事が数年…10年と続いて私は思ったの。もしかして未来乃は私をお金でしか見てないのかな?って…。そしてある日言ってしまったの…私とお金どっちが大切なの?って…」


「その問いに未来乃は何も答えてくれなかった……それから私は未来乃に会う事は無く月日が過ぎて行った。」


「そして未来乃は死んだ。死因は過労…。私と会わなくなって未来乃は仕事を増やしかなり無理を続けて……。だから未来乃を殺したのは私なの」


「あの時私が変な事を気にしなければ未来乃は……死ななかったのかな?」



あの日の育穂さんの涙を俺は忘れない。

俺の事も関係あり俺は育穂さんにかける言葉が見つからなかった。

そしてその喧嘩ってのが、今日……先程の事なんだろう。

このままじゃ二人は会わなくなり母さんは過労で死ぬ。そして育穂さんはそれを一生引きずるんだ。



「あの…育穂さん」

俺は隣に歩く育穂さんに話しかける。


過去に戻ってきたんだ!

ならば!迷ってなんかいられない!


「ん?」


「俺が未来から来たって言ったら信じますか?」



俺にはもうこの方法しか思いつかなかった。



「な、何言ってるの??」


「育穂さん…このままだと一生後悔しますよ」


「ちょっ!やめてよ!変な事言うのやめて!!」



当然の反応だろうな。

育穂さんは俺が元気付ける為に変な事を言い出したと思っているだろう。

だから「なんちゃって〜」と言えばこの会話は終わりで、育穂さんも気分がほぐれる事だろう。


でも…それは出来ないんだ。

俺は絶対に育穂さんを救わないといけないから……



「俺がどうやってか知ってるって言ったら信じてくれますか…?」


その俺の問いに育穂さんは顔を青ざめる。

それもそうだろう。本来は絶対に知らない事を俺は知ってると言ったんだから…。


「……」


無言を貫く育穂さんは表情を見る限りかなりの焦りと戸惑いがごちゃ混ぜになっているようだった。



「俺は……レイプされて出来た子です」



目を限界まで開き開いた口も塞がらないとても驚愕を表した表情をした育穂さんが目の前にいた。


母さんが絶対に俺に秘密にしてきた事を俺は自らの口で育穂さんに告げるのだった。

それはとても、とても悲しい物語だ―――

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