第14話二人きりって珍しいよね…
「ひゃあああ!面白かったねー憐!!」
スライダーを下りボートをスタッフに渡して俺達はスライダーの感想を述べていた。
「途中で、ぶわぁー ってなる所凄かったな!」
「あそこ無重力感じれて良かったよねー!」
「それに景色も最高だったな!」
「うんうん!」
「次どこ行こっかー?」
「行かない」
え?
自然な流れで次のアトラクションへのお誘いをするもキッパリと断られる俺氏。
あれーー?なんか間違ったか?綺麗な流れだったよな??
「憐は蜜穂の所に行くの!」
「えっ!?蜜穂!??」
「そう!噴水見るって言ってたからその辺居るはずよ。じゃあ、またね」
そう言って俺に背を向け{どんどん}と進んで行く華。
取り残された俺は頭が?のままその場で固まってしまう。
*
今頃憐も昏亞も楽しくやってるんだろうか。
沙織に巻き込まれそうになった時は流石にびっくりしたけど、何で私が空気読まないといけないのよ!
せっかく5人で楽しく遊ぼうって話だったのにまるで私が居なくても良いみたいな…。
って、違うのは分かってるけど……沙織と仲よさそうにしてた憐を思い出し更に苛々する。
だいたい憐も気がないなら気がないらしくしろっての!鼻の下伸ばしちゃって!!!
華と一緒に行った時も嬉しそうにして……
「憐の馬鹿……」
私はそう呟いた。
「んだよ、馬鹿ってなんだよ馬鹿って!」
えっ!?!
聞き覚えのある声に私はびっくりして振り向く。
*
とりあえず華の言う通り蜜穂と合流しないとな。
後で合流してないのバレたら色々めんどくさそうだし…。
一先ず俺は噴水広場へ向かう事にした。
でも噴水広場には蜜穂の姿はなく早くも合流出来なくて詰んでしまった。
おいおい、どこに居んだよ蜜穂のやつ!!
あいつが行きそうな場所なんて心当たり無いぞ?
いや、待てよ……あった!一つだけあいつの行きそうな場所に心当たりがあった。
俺が最初に行ったマーメイドエリアを抜けるとチャレンジャーエリアに行く。
チャレンジャーエリアってのは、水の上には浮いてるマットの上を飛び越えたりタイヤのブランコみたいなやつに乗ったり
まあ、所謂アスレチックエリアだ。
そこを更に進むとデッカい鐘があるんだ。
その下にはベンチがあり休憩が出来るんだけど、そこから少し離れた高台に園内を見渡せる展望エリアがある。
蜜穂はそこのベンチに座って鐘を見るのが好きなんだ。
だからきっとそこに居るはず!!
階段を登り展望エリアを見渡す。
展望エリアは夜がオススメで、昼間のこの時間は人は少なかった。
だから簡単にベンチに座る女の子を見つけ出せたのだ。
俺はその子に近づく、すると
「憐の馬鹿……」
そう呟くもんだから{ドキッ}とした。
どうやら後ろにいる事がバレたわけじゃないみたいだ。
「んだよ、馬鹿ってなんだよ馬鹿って!」
そう言うと驚いた顔をして振り向く蜜穂。
俺は「よっ」と軽く返事をした。
「なん…で?華と一緒じゃないの?」
「いやー、なんか行きたい所あるって一人で行っちゃったんだよ」
「そう…なんだ…」
「隣良いか?」
「うん」
俺は蜜穂の隣に座った。
しっかし華のやつ…蜜穂と一緒に居ろってどー言う事だ?
「なんかあれだね…二人きりって珍しいよね…」
「え?そうか?」
「そうだよ…こうして二人きりになるの久々だよ。」
「そーでもないだろ?帰りは自動的に二人きりになるだろ?」
「ばか!そー言う事じゃないの!」
「うんん?よく分かんねーな」
「ところで憐?」
「ん?なんだよ」
「前に何があっても私の味方だよって言ってくれたの覚えてる?」
覚えてるも何も…俺からしたらほんの少し前の出来事だからな…
「あぁ、勿論覚えてるよ」
「あの言葉は今もまだ有効ですか?」
「有効ってなんだよ!?当たり前だろ!ずっと味方だよ」
「じゃあ、もし今ここで私が変な事言っても味方のままで居てくれる?」
「内容次第だな」
と、俺は意地悪っぽく言ってみる。
*
ほんとは憐の顔なんて見たくなかった。
このまま時間を潰して帰りの時刻になるのを待つ予定だった。
なのになんでこの馬鹿は私の前に来ちゃうのかな?
前もあったなこんな事…前は私を心配して会いに来てくれたんだっけ?
でも今回は違うわね。
なんとなくだけど私には分かる。
多分華が憐をこっちに寄越したんだ。
憐はそんな事言わないけど女の勘ってやつなのかな?なんか分かっちゃう……
でもまさか私がここの眺めを好きなのを覚えていたなんて……憐のこう言う所好きだけどムカつく。
だからこれは、ちょっとした意地悪だ。
華にも沙織にも負けない!これはその意思表示なんだ!!
だから私は言うんだ。
この受験で忙しいタイミングで!
誰も邪魔の入らないこのタイミングで!!
「私、憐が好き。大好きです。私と付き合ってください!」
言った!
言ったぞ私!
私は心の中で私を賞賛した。
*
おいおい。
まさかのこのタイミングかよ…。
ほんとに俺の知ってる歴史とは違うんだな…。
俺は、まさかの出来事に困惑し何も言えなくなる。
てか!普通に考えてこのタイミングあるのか??
受験生だぞ?同じ高校行くんだぞ?
振られたらヤル気とかさ…なんかその辺の色々な事どーするつもりなんだよこの馬鹿は!
でもだからと言って適当には出来ない。
悪いが俺には―――
「俺には好きな――――」
そう言いかけた時に
「――答えはまだ要らない!ごめん!聞かなかった事にはしてほしくないけど、この答えはまだ良いの」
と、蜜穂の声に遮られる。
「ただ、知ってほしかったの私の気持ちを。どんな結末でも私は受け入れる!だけど、今はまだ保留って事で良いの……私嫌なやつだよね?」
まあ、一般的に考えればそうだな。
告るのは簡単さ。
いや、簡単じゃねーけどな?!
でも答えを告げるよりかは、ずっと簡単な事だ。特に俺達の様な間柄なら答える方は神経を使う。
このままじゃ普通は色々考えて受験勉強なんて手につかないだろうな。
でも、それでも……
「ま、その答えを言うためにも勉強頑張らなくちゃいけなくなったからな。悪いやつだな蜜穂は」
そう言って蜜穂の頭を撫でる。
「じゃあ私も頑張らなきゃね」
この瞬間、俺は急な目眩に襲われる。
{こてん}と蜜穂の肩に頭が乗る感触がした。
「ちょっと憐!どーしたの!?」
そんな声を聞きながら俺の意識は真っ暗な暗闇に溶けていくのだった。
まさかこんな急に来るなんてな……
そして目が覚めたら見覚えのある場所にいたのだった―――
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