第12話手繋ぐのは良い?
「ぷはぁー」
水面から顔を出し息継ぎをする。
周りを見るも華と蜜穂は居ない。
どうやら流れに任せて潜っていたら2人と分かれたみたいだ。
近くにいるかな?と後ろを見ても見知らぬ顔ばかり…仕方ないので上がることにした。
ザパァ
「ふぅ…」
とため息。
付けていたゴーグルを外しそのまま首にかける。
プールサイドから流れるプールを見渡しても2人の姿はない…反対側に居るのだろうか?
もしくは私と逸れて探す為に他の場所にいるとか…??
とりあえず考えても仕方ないので憐達が居るマーメイドエリア(深いプール)に行く事にした。
*
「そろそろ飽きてきたなー」
深いプールを浮かびながら昏亞が言った。
「んだなー。今何時だぁー?」
備え付けの時計を見ると11時を回ったばかりだ。
「約束の時間までまだあるなー」
「んじゃ、次は洞窟行くか?」
洞窟……アドベンチャーエリアだ。
薄暗い洞窟の迷路を進んで行くアトラクションだが、様々な所にトラップがあり中々面白い。
まあ初めて行く場所じゃないからどこにどの罠があるのか、とか色々分かってるけどな。
「いや、俺は流れて来ようかな」
「ほぉー愛しの華に会いに行くのか?」
ニヤッと笑う昏亞
「そんなんじゃねーよ!それにあいつらもずっと流れてる訳ないだろ?」
「まあ、確かに。んじゃ、またな」
「おう!またな」
ザパァ
こうして俺と昏亞は分かれたのだった。
*
正直1人になれて{ホッ}としてる自分がいた。
華と居るとどうしても勝てないと思っちゃうからだ。
私はどちらかと言うと勉強を理由に自分磨きを放置していた。
受験生ってそんなもんだろうと勝手に思ってた。
でも今日華を見て凄いと思った。
毎日ストレッチしてるらしくてウエストは引き締まっていて身体中どこを見ても綺麗だ。
お肌も毎日スキンケアしてるみたいだし……ニキビ1個ある私とは天と地の差だ。
「はぁ〜」
自然とため息が出る。
憐の好きな人は多分華だと思う。
さっきも華の方ジロジロ見てたし…
でも沙織の可能性もあるのかも…。
なんだかんだあの2人仲良いし今頃2人一緒に居たりして……なんてね。
「クス」
自分でもおかしな事だと理解し笑ってしまう。
昏亞が居る時点で2人きりなんて絶対ないのに私何言ってるんだろ。
それにしても沙織どこに居るんだろ……もしかしてまだ流れてるのかな?
とりあえず私は来た道を戻る事にした。
*
「れーーん!」
少し遠くの方から俺を呼ぶ声が聞こえた。
俺は人混みを見渡し声の主を探す。
見事に知らない顔ばかり…でも必ず知ってる顔が居るはずだ。
その時知らない人の後ろから{チラリ}と知ってる顔が主張する。
その人物は目が合った瞬間手を振る
「沙織〜〜」
そう呼び俺も手を振る。
こうして俺は沙織と合流するのだった。
*
「昏亞ー!」
アドベンチャーエリアに向かう途中で華と合流する。
なんでも流れていたら沙織と逸れたので探していると言う。
「流れてて逸れたんならまだ流れてるんじゃないか?」
と提案する。
華が言うには一応流れるプールは見渡したらしいのだが、もしかすると逆に私達を探しに戻って来てるかもしれない
と、言う事になり俺は華と流れるプールへ向かった。
「そう言えば憐が流れるプールの方に行ってるはずだから合流するかもな」
「沙織も居れば良いけど…」
「つっても、もう子供じゃないんだし大丈夫だろ」
「ん〜でもあの子ちょっと抜けてる所あるから心配で…」
まあ、確かに沙織ってちゃんとしてるようでちゃんとしてないと言うか……いや、ちゃんとしてないんだけどさ…
テストだっていつも勉強しないで挑んでたし運動も体力考えないで無理して速攻潰れるし…
でも当たり前って言うか基本?は、ちゃんとしてるんだぜ。
例えば物は大事にするし、お礼だってちゃんと言えるし…1人でも大丈夫な筈だ。
華はちょっと過保護過ぎるんだよな……って言っても正直俺も気が気でなかったりする。
数十分前ぐらいにナンパされてた子を助けたばっかなんだし
もしかしたら同じような事になってるかも、と考えるのは普通だろ。
俺達は自然と早歩きになるのだった。
*
「ちょ、ちょっとくっ付き過ぎだろ!」
俺は右腕に絡まる沙織を引き離そうとする。
「良いじゃん〜誰も見てないんだし!」
いや、見てるとか見てないとかじゃないんですよ。
まったく!―――まったくまったく!!!そんなにくっつかれるとねえ!!胸のその!可愛らしい!!!オップァイ!!!さんがですねぇ!!!
拙者の腕を挟むようにこう…プニプニとですねぇ…!!!
かぁーー!なんて柔らかいオッップアァァイなんだ!!!このままじゃ拙者ケダモノになってしまうでござるよ!!
けしからんけしからん!これが俗に言うラッキースケベと言うものですかぁ!?
いや、ダメだダメだ落ち着け拙者!
これは罠だ!!ここで変に意識して拙者のジュニアが目覚めてしまえばどうなると思う?
反り立ちテントを張った下半身は周りの人達から白い目で見られ
沙織にはドン引きされこの話が華の方に回り拙者は社会的に死ぬ!
おさまれおさまれ我のジュニアよ!!
「と、とにかく!離れてくれよ…」
必死に絞り出した声は照れ混じりの情けない声だった。
「じゃあ!手繋ぐのは良い?」
「許可する」
こうしてなんとか己との戦いに打ち勝つのだった。
ふぅ…童貞には刺激が強いZE☆
*
戻って来なければ良かった…第一声にそう思った。
人混みに紛れて良くは見えないのだけど沙織と憐はイチャイチャしていた。
まあ一方的に沙織が抱きついてると理解は出来るんだけど流石にこれは見たくない。
だから私はそっとその場を離れた。
今のは見なかった事にしようと自分に言い聞かせるのだった―――
*
「な…んだよ」
思わず声が出てしまった。
俺は華と沙織を探していたのだが、どうやらそんな必要は無かったらしい。
「あの2人仲良いよね…」
華が呟くように言った。
側から見たらカップルにしか見えない2人に俺と華は心を抉られるのだった。
「よし!昏亞!アドベンチャーエリア行くよ!」
そう言って華は俺の腕を引っ張る
「あ、ちょ、ちょっと力強いですよ?華さんっ!!?」
「うるさい!フレイムマスターでしょ!我慢しなさい!!!」
まるでその場に居たくないかの様に{そそくさ}と移動する華。
俺の腕を掴む力も割と強い……ここは大人しく言う事を聞いておこう。
*
「しっかし2人ともやっぱ居ないなー」
俺は沙織と一緒に流れるプールをプールサイドから一周した。
やはり2人の姿はなく違う所に居るみたいだ。
「まあ、約束の時間になったら嫌でも合流出来るだろ」
そう言って俺は備え付けの時計を見る……時刻は11時半を過ぎていた。
約束の時間は12時なのであと少しだ。
「うん、そうだね!じゃあこのまま一緒に居よ?」
上目遣いで言ってくる沙織。
あざとく見えるが沙織の身長は150台で、今の俺の身長は160台だから上目遣いになるのは必然なのだ。
に、しても
「可愛い…」
「えっ!?!」
しまった油断したああぁぁぁ!!!
つい、口に出してしまった!!!
なんとか誤魔化さないと!!!
「い、いや、み、水着の事なっ!?」
「あ、そ、そう…だよね。び、びっくりした…」
「す、凄く似合ってるよ」
「あ、ありがとう…」
なんとか誤魔化せたが、俺達は変に意識して俯くのだった。
心臓も{バクバク}言ってるし……これ沙織には聞こえてないよな?
{チラッ}と沙織を見るが、沙織もまだ下を向いたままだ。
なんか喋らないと…なんか喋らないと……!!!
そう思ってた時にとある景色が眼に映る。
「沙織見てみろよ」
その目線の先には二つの噴水があった。
その周りで遊ぶ子供達に俺達は癒されるのだった。
「綺麗だね」
「あぁ…」
そして気付いたら時刻は12時になろうとしていた。
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