第6話憐ちゃんこんなに可愛いんだよ!

授業はとても退屈だった。

そりゃ一度経験してるし分からない事はない。

ただただ退屈な時間だけが進んで行き昼飯の時間になっていた。


5ー2のクラスには丁度30人居て1列5人の列が6つある。

んで、2列を5人ずつで分け1つの班を作る。

隣の席の沙織と前の席の華は必然的に同じ班になる。



「よし!霞!前野!牛乳早飲み対決しようぜ!」

同じ班の武士たけしが牛乳を片手にそう叫ぶ。


「パース」

と、素知らぬふりで前野まえのは武士をスルー。


「前野はノリ悪いな〜、んじゃ!霞行くぞおおお!」


ここは俺もスルーしておこう。


「パース」



「なっ!ならばっ!自己記録更新に励むのみ!うおおおおお」

そう言いながら牛乳を飲み出す武士を尻目に他の4人は会話を始める。



「ほんとに武士って馬鹿だよねぇ〜」


「沙織、そう言うのは小声で言わないと」


「あ、そっか!ごめんね武士!」


「多分聞こえてないぞ」


「前野はクール気取っててキモい」


「は?はあ?い、いきなりなんだよ!」


「そーですよ沙織!聞こえないように言わないと」


「あ、ごめーん」


「なんかいつも美羽野みうのに傷つけられてる気がする…」



あぁ…懐かしいな。

いつも馬鹿をやる武士たけしに素で

毒を吐く沙織…それをカバー?する華に沙織の被害を受ける前野まえの…またこいつらのこんな会話が聞けるなんてな…



「憐ちゃん!」

沙織に呼ばれる



「ん?さっちゃん何?」


「今日覚えてるよね?」



そう聞かれ蜜穂の事だとすぐに理解する。



「みっちゃんへのプレゼントだよね?」


「そうそう♪」


「二人は何買うか決めた?」


「ん〜沙織的には文房具が良いかなーって思ってるんだよね〜」


「確かに文房具は絶対使うもんね〜れっちゃんは何か候補ある?」



確か沙織がハサミを華が消しゴムとシャーペンを……んで{二人が文房具なら俺も}と昏亞が5色のボールペンを選んだんだっけ。

その流れで俺も文房具を選んだ。


まあ小学5年生の財布事情じゃ、これが適任だろ。



「ん〜まだ分からないなぁ…店行って決めようって思ってる!」

と、言っておくことにした。


それから給食の時間が終わり昼休みも過ぎ放課後になっていた。

俺は昏亞と蜜穂と沙織と華達を連れ学校を出た。


校門を出ると帰り道が違う沙織と華と別れる。

{また明日〜}そう言った後、華がウインクしたのは{また後でね}と言う意味だろう。


それから朝昏亞が待っていた電信柱に着き昏亞とも別れる。


「また明日ー!」



こうして俺は蜜穂と二人きりになった。



「ねぇ、れっちゃんこの後暇?」

不意にそう聞かれた。


この後は蜜穂の誕生日プレゼントを買いに行くから暇ではない。

なので俺は{ごめん買い物があるんだ…}と断る。

すると蜜穂は{そっか…}と呟いて悲しげな顔を浮かべる。



何か悪い気がしたが、しょうがないだろ?この後お前の誕生日プレゼント買いに行くんだよ…と心の中で言い訳をする。


でも明らかに蜜穂は何か用がある感じだった。

本来の歴史も誕生日プレゼントを買いに行くから断っている。

何か用があるのは感じていたけど明日聞けばいっかとその日は気にもしなかった。

でもいざ翌日になり聞いてみたら{んー、忘れちゃった}と言われ結局この時蜜穂がなんの用があったのかはうやむやのままだった。



「また明日ね」

気付けば家の前に着いていた。

蜜穂のその言葉に{またね}と返し家に入っていった。



「ただいまー」

家に入り{バタバタ}と2階の自分の部屋に入りランドセルを放り投げる。

えーと、財布は……あったあった。

財布の中身を見ると3520円入っていた。


「行ってきまーす」

そして{バタバタ}と階段を降りすぐさま外に出る。

部屋を出る時に時計を見ると16時15分ぐらいだった。

皆と待ち合わせの場所に急いで向かう。



「おーす!」

その途中で昏亞と合流


それから走りながら適度な雑談をして沙織と華が待ってる場所へ辿り着く。


「「おまたせー」」

昏亞とハモるように言った。


「ゆっくりでも良かったのに」

{ぜぇぜぇ}と息を切らす俺と昏亞を見て華が言う。


「憐ちゃん汗びっしょりだよ」

そう言ってハンカチを取り出し汗を拭いてくれる沙織


「さっちゃん俺は〜?」

と汗拭いてほしそうに昏亞が言うも


「私憐ちゃん以外には厳しいの知ってるでしょ」

と一蹴される。


「ちぇー」

と自分の服で汗を拭う昏亞


「それじゃ行こう!」

華はそう言って歩き出した。



歩いてる途中昏亞が沙織に質問した。



「ところで、さっちゃんは何でれっちゃんに甘いんだ?」



「えー?だって憐ちゃんこんなに可愛いんだよ!妹みたいだもん!」

そう言って{ぎゅー}と抱きついてくる沙織



「さっちゃん暑いよ〜」

そう言うも離してくれない沙織。



こうして俺たちは蜜穂の誕生日プレゼントを買いに向かった。

色んな店を見た。

子供でも買える範囲で物を見て行ったが、最初の通り文房具に落ち着く。



「良い買い物が出来たわね!」

そう自信満々に華が言う。


「うんうん!みっちゃん喜んでくれるよ!」

と嬉しそうに沙織が言う。



こうして帰りも楽しく雑談をしながら道を歩いた。

でも楽しい時間もあっという間で気付いたら1人になっていた。

楽しかったからこそ寂しく感じて早く家に帰ろうと早足になる。


そうこうしてると家の前に着く。

文房具屋さんで見た時計の時刻を思い出す。

あの時は17時前ぐらいだった……って事は15分か20分ぐらいか……


俺が時間を気にしたのは蜜穂の事があったからだ。

本来の俺はこのまま家に帰る。

でも…せっかくやり直してるんだ!ならばこのまま蜜穂の家に行くのもアリだよな?


いや、でも晩飯前にお邪魔するのは流石に失礼だよな…。

あぁ、そうだ。

本来の俺も買い物を終わらした後に蜜穂に会おうと思ったんだ。

でも時間的に失礼かな、とやめたんだった。



だが、今の俺は違う。

せっかく戻ったのに同じ事して良いわけがない!

そう思い郵便受けに蜜穂の誕生日プレゼントを入れ俺は隣の蜜穂の家に向かうことにした。


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