第5話お姫様も到着したみたいだ

あれから怖い夢を見たと適当な事を言って誤魔化した後、朝食を食べ学校に行く準備をしていたら{ピンポーン}とチャイムが鳴る。


時計を見ると7時40分を回っていた。

蜜穂だと理解し{バタバタ}と階段を降りる


「あれー?れっちゃん早いねー」


どうしても死んだ日を思い出す。

俺は蜜穂に酷い事を言って蜜穂を傷付けた。

どんな顔をすれば良いのか{グルグル}頭の中で考えていた。

でもこの時代の蜜穂には関係のない話だし普通にするのが正解だろうと



「みっちゃんが遅かったんだよ」


と返事をする。



「ほらほら急がないと遅れちゃうよ〜」

母さんが言う。



「「行ってきまーす」」


俺と蜜穂は元気良くそう言って家を出た。


うちは住宅街で周りには一軒家が並んでいる。

蜜穂の家は隣で、毎朝俺を迎えにきていた。



「ほんとれっちゃんのおばさんは綺麗だよね〜ママより若いし!良いなー!お姉ちゃんみたい」


そう言えば蜜穂は母さんに憧れていたんだっけ?


「私、れっちゃんママみたいに髪伸ばしてるんだ〜」

そう言いながら{クルッ}と一回転する



あぁ…そうだったな。

蜜穂は元々ショートカットだったけど、これが理由でロングになったんだっけ?


まあ、未来の蜜穂は肩ぐらいまでの茶髪で今風のギャルみたいになってたけどな…。

イケイケの大学生って感じだったなぁ。


そう言えば家の中ではあんまり感じなかったけど、いざこうして外に出てみれば色々な物が大きく見えるな。

本来の俺は身長175cmぐらいだけど今は155cmぐらいだもんな。

その差は20cmそりゃ大きく見えるわな。



「よお!お二人さん!」


この声は!



「くーちゃんおはよー」


「みっちゃんれっちゃんおはよ!」



昏亞くれあだ!

俺は周りを見ると一本の電信柱に気づく。

もう待ち合わせの電信柱まで来てたのか。


「くーちゃんおはよ」

俺もすぐさま挨拶をする。




高野鳥昏亞こうのとりくれあ

俺と蜜穂と昏亞は保育園からの仲良しで所謂幼馴染だ。

何を間違ったのか中2…ぐらいの時に自分は【漆黒の炎に選ばれし戦士】とか言い出してめでたく厨二デビューを果たした。


だが、それも中学生までで高1には普通に戻っていた。

元々カッコいいから高校ではモテてたなぁ…




「なあ!れっちゃん!」

{ガシッ}と俺の首に手を回し耳元で話しかけてくる昏亞。

俺も小声で話しをする事にした。



「ん?」


「今日分かってるよな?」


「今日……?」


「みっちゃんの誕生日プレゼント買いに行く約束だよ!」




蜜穂のプレゼントを買いに行く?

このイベントは確かに覚えてる……が、買いに行くって事は今日は9月25日じゃないのか?



「あれ?今日25日だっけ?」


とりあえず惚けてみる



「はあ?何言ってんだよ!今日は24だろ!明日みっちゃんの誕生日パーティーだ!ほんとに大丈夫か?」



なるほど…俺の記憶通りだ。

やはり蜜穂の誕生日プレゼントは前日の24日に皆で買いに行くんだ。

って事は俺はこの世界にもう1日居る事が決定したのか?



「なんてね!冗談だよ」

と言って{あはは}と笑っておく。



「男2人でこそこそ話〜〜?」

怪訝そうな顔をしながら蜜穂が言う。


それを聞いてすぐに昏亞が離れて

「いや、なんでもないよ!なんでもない〜」

と言いながら足早に進んで行く。



必然的に2人になってしまい

「なんの話してたの?」

と蜜穂に詰められる。



「なんでもないよ!くーちゃん待てよー!」

と言って前を進んで行った昏亞を追いかける。



「あ、ちょっと待ってよー!」

そして蜜穂も2人を追いかけるのだった。














「おはよー」

「おはよー」



流石に学校に近付くとクラスメイト達ともすれ違う。

懐かしい面々達を追い越し俺は校門を突破したのだった。

グラウンドには低学年や高学年達がボール遊びしたりブランコやジャングルジム等の遊具で遊んだり思い思いの時間を過ごしていた。


校舎に{バーン}と掛けられたデッカい時計を見ると7時50分を少し過ぎたぐらいだった。


1〜3年までの低学年の下駄箱は正門からすぐの所にあり

4〜6年までの高学年の下駄箱はグラウンドを突っ切った先にある。

裏門から近い場所だ。


なので俺はグラウンドをどんどんと横断していく。

その間にもクラスメイトと会い{おはよー}と言って先を急ぐ。

下駄箱に辿り着くと



「お、早かったね〜」

と、昏亞が上履きを履いて待っていた。



「早かったね〜じゃないよ!自分だけ先に行って!」


「いや〜ごめんごめん。どうやらお姫様も到着したみたいだ」


その昏亞の言葉通りに蜜穂が俺の後ろにいた。

ん?お姫様…?こいつこんな言い方する奴だったっけ?

まあ、良いか…その場のノリってあるしな。



「もー!何で先行くかなー!」

{はぁ、はぁ}と息を整えながら蜜穂は言う。



「まあ、まあ、待ってたんだし…ね?」

と昏亞が、なだめる。


「もぉー!」

{ぷくー}と頰を膨らめせる蜜穂



俺は何食わぬ顔で上履きに履き替え先を進む。


「あ、ちょっ!れっちゃん!」

そう言って昏亞は俺の後を追いかける


「だから早いって!」

と言いながら蜜穂も後ろからやってくる。



うちの学校…深夜学みやがく小学校、通称みゃーしょうは3階建てで1フロアに2学年の教室がある。

下から低い順に2つずつで、俺は5年生だから3階に向かう。


階段は計4つあり1学年の前と後ろにあるのでクラスが近い場所の階段を使う。

俺が今登ってる階段は一番左端の階段で、1年3年5年の奇数の学年の前につながっている。


俺のクラスは5-2なので、階段を登って2つ目の教室になる。

1学年に付き5つクラスがあるので5-5に行く場合は左から2番目の階段を6ー1に行きたいなら左から3番目の階段を登るのが早い。


2つ目と3つ目の階段の間にはトイレがあり……って学校の説明は別に良いか。

そうこうしてる内に5-2の教室に辿り着く。



がらら

教室の引き戸を開け中に入る。



「おはよー」

と挨拶をしながら入った直後



「憐ちゃーーん!」


と声が聞こえてきたと思ったら{ガバッ}と誰かに抱きつかれる。


「憐ちゃんおはよー!」


「おうおうお二人さん朝から熱いね〜」

と、昏亞が茶化す。


「沙織!れっちゃんが動けないから抱きつかないの!」

と、もう1人別の声が聞こえる。



「さっちゃんはーちゃんおはよ!」

俺はそう言った。


「れっちゃん席行こ行こ〜」

と沙織に引っ張られる。



このツインテールの子の名前は美羽野沙織みうのさおり

俺は高2の頃に沙織に告られフった…俺がフった腹癒せに沙織は俺にレイプされそうになったと言い広め俺は孤立した。

俺の1番のターニングポイントの重要人だ。

でもこの時代の沙織には関係ないから今は何も考えない事にしておく。


そしてもう1人の女の名前は最塚華さいづかはな

お嬢結び…いや、ハーフアップ?が似合う可愛い子で俺の好きな人だ。

沙織と仲が良く常に2人一緒にいるイメージだ。



そうこうしてる内に窓側の一番上の席に着く。

ここは俺の席だ。



「憐ちゃんとーちゃーく!」

そう言って沙織は隣へ華は俺の前の席に座る。


「ささっ!ランドセルは後ろに置いて〜」

と、俺からランドセルを奪おうとするも


「中身取り出さないとダメでしょ!」

と、華にランドセルの中身を机に置かれる。



「置き勉してないの偉いな〜憐ちゃんは!」


「それが普通なの!沙織は、少しはれっちゃんを見習って!」



そんなやりとりを2人がしてる間で俺は机に置かれた教科書等を引き出しに入れ席に座る。

ランドセルは後ろの棚に名前のシールが貼ってある所にいれた。



「ねえねえ!憐ちゃん!昨日のドラマ見た?」



昨日…?流石に時事ネタは分からんぞ。

でも変に怪しまれるのを避けたいから俺は無難な返しをする。


「昨日早く寝ちゃって見てないんだよね〜」

ついでに{あはは}と笑っておく。



「れっちゃん!昨日のドラマ見逃したのは痛かったね!」

華が、食い気味に言ってきた。



「そーそー!私もあんな風に告白されたいな〜」

と、沙織が惚ける。


「あの告白は女ならされたいよね〜」

{うんうん}と華が頷くながら言う。



キーンコーンカーンコーン


そんな会話をしていると学校のベルが鳴る。

気付けば8時になっていた。


がらら

と、ドアを開け女の先生が入ってきた。

先生は教壇に立ち{きりーつ}と言った。

それに合わせ俺達は席を立つ。


「れーい」

そして先生がそう言って俺達は{おはようございまーす}と言い先生の{着席ー}の声で席に座る。



こうして俺の小学生としての1日が始まるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る