第2話ようこそ天国へ♡

はぁ〜食った食った!

俺は晩飯を食べ終え自室のベッドでくつろいでいた。

そう言えば今日イベきてるんだっけ…


携帯のアプリゲームを開きゲーム内のガチャを見る



「おおおおお!新キャラ出てる!可愛い可愛い可愛い可愛い!!!」

画面に映る女の子を凝視する。


黒髪ロングで少し大人っぽい…多分17歳ぐらいの見た目のミニスカサンタの格好をした巨乳の女の子がクリスマスツリーみたいな感じの槍を構えていた。

えーと、名前は……ニアちゃん!声は!?そう思いサンプルボイスを聴く



「びっくりした…今時のゴミは喋るんだな」

女の子の声が響く。


!!!



はっ!!この声は!!!のとまみ!!!しかもSキャラか?のとまみのSキャラ!?!マジかよ!!!

俺ものとまみに罵られたい!冷たい目で見られたい!!!


ベッドの上でゴロゴロゴロゴロと転がりながら色んな妄想をしていく。


よし!石は…300個!60連か…いける!今ならいけるぞ!

その謎の自信のままガチャを引くも……


「くぁー!でねえ!のとまみでねえ!罵られたい罵られたい罵られたい!!!」



こんなん課金しかねーだろおおおおおおお

よし、コンビニ行こ。

時刻は8時になろうとしていた。

俺は{パパッ}と準備をして部屋を出る。


リビングではソファでのんびりしながらテレビを見ている育穂さんがいた。


「コンビニ行ってきます!」


{プハァー}と缶ビールを飲んで

「気をつけてね〜」

と育穂さんは言った。


そして家を出る。

コンビニは歩いて5分ぐらいの場所にある。


「うー!さぶっ」

暖かい格好はしているのだが、流石に部屋との温度差には耐えれない。

ポケットに手を入れて道を歩く。


かぁー!どこ見てもカップルばっか!

童貞のオタクがこの時期にこの時間に外出るのは流石に心を抉られる。

こいつら皆喧嘩して別れないかなぁ…


そんな事を思いながら歩いてるとコンビニに着いた。


「しゃっしゃいませー」

店員の声が響く。


店内もカップルが多くて俺のように1人の客は少なかった。

そそくさとカードを取って飲み物を選びレジに並ぶ。


明日は仕事休みって言ってたから今日はニアちゃん迎えてその後アニメ見るか〜



「ありがとうございました〜」

その店員の声をバックにレジ袋を下げながら俺はコンビニを出る。


コンビニを出ると5〜6メートル先に茶髪の毛先をクルッとした同い年の可愛い子が俺を見ていた。


俺は一歩一歩その子に近づいて行く。

女は俺を見ていてその場を動こうとしない。


そして女の目の前に辿り着き――


―――更に歩を歩めその子とすれ違う。



「待って!!」


すれ違い様に女は声をあげる。

それを無視して俺は更に前に進む


「待ってよ!憐!!!」


そう言われ俺は後ろを振り向く。

すると女と目が合う。


「なんだよ…」

俺がそう言うと女は少し歩き俺の目の前までやってきた。


「話しが…あるの」


「俺にはないよ」


そう言って歩き出そうと足を一歩前に出した時


ガシッ


女に腕を掴まれる。



「逃がさない!!」

そう言う女の目を見る。

とても力強い目で俺を離す気がしないのは分かる。



蜜穂みつほ離せよ…俺は帰るんだ」


この女の名前は百合乃蜜穂ゆりのみつほ

保育園からの付き合いで家も隣同士な絵に描いたような幼なじみってやつだ。


蜜穂とは昔色々あって俺から距離を置いた。



「やだ!やっと会えたんだから!」



俺は過去に蜜穂を裏切った。

でもこの様子からすると蜜穂は俺と向き合おうとしているみたいだ。

…このまま話し合い昔の事を水に流してまた仲良いをやるのも良いかもな。



――なんて思うかよ!!!



「そうか蜜穂…お前もしかしてまだ俺の事が好きなのか?」


とりあえずこの場から去らないと…そう思った。


「えっ?」


俺は、もう蜜穂とは関わらない…そう決めたのだから


「あれからもずっとずっと好きだった俺を忘れられないなんて健気だよなぁ!」


でも…俺は何を言ってるんだ。

ただ普通に…そうさ腕を振り払って走ったって良い



「まさか23にもなって俺に捧げるために処女を守ってるとかないよなぁ?」


違う…こんな事を言いたいんじゃない。

俺はただこの場を去りたいだけだ!


「それは流石に気持ち悪いなぁ!俺はお前のことなんて今の今まで忘れてたってのによぉ!」



もう黙れよ!

流石に言い過ぎだ!

でもペラペラと口が動いてしまう。


「てか話ってなんだよ?俺言ったよな?もう俺には関わらないでくれって!それをなんだよ今更よ!初恋の人を見つけたからって気安く話しかけてんじゃねえよ。腕痛いんだよ離せよくそブスが!気持ち悪いんだよ!」



パチィィン!!!



音が響くと同時に左頬が熱くなる。

目の前を見ると泣きそうな蜜穂が居た。


あぁ…ぶたれたのか。

そう理解した。



「え?あれ何?」

「喧嘩か?」

「なんだなんだ?」


周りのクソカップル達が見てくる。

くそっ!見るんじゃねえよ!見世物じゃないんだよ!



「憐なんてもう知らない!」


そう言い残し蜜穂は{サクサク}と足早に動いて行った。





……これで良かったんだ。

そう思い家へと帰ろうとした時に俺は、とんでもない事に気付く。


「あ、おい!蜜穂待てよ!」


蜜穂は信号が赤なのに渡っていた。

しかもトラックが来ている…このままじゃあいつ!


「くそっ!」


俺は走って蜜穂を追いかける。

冬の8時と言えば真っ暗だ。

そんな中トラックの運ちゃんが、こんなに離れた場所に居る蜜穂に気付くのは難しい。


「バカ蜜穂!止まれって!」


「うるさい!来ないで!」


くっ!水に油だ…俺が近づけば近づく程離れようとする。

でももうトラックが…



「信号赤だろうが!!!」

精一杯の声を張り上げる。


「え?」

そう言って立ち止まる蜜穂


「バカ!止まるな!」



トラックの運転手が蜜穂に気付きブレーキを踏んだみたいだ。

でもその距離絶対ぶつかる。




「くっそおおおおおおおおおおお」



俺は思いっきり蜜穂に飛びつくのだった



ドカアアァァァ










暗闇
















暗闇















「ん、う〜ん…」


目を開けると光が視界を支配した。


「ここは……どこだ?」


周りを見渡しても見覚えがなかった。

ただひたすらにブルースカイが広がっていた。

こんな所見覚えがない…。



「やっと目覚めましたか!」


{ビクッ}と声のする方を見るとそこには……



「ようこそ天国へ♡」


金髪のバニーガールのような格好をした背中から羽を生やした女性が立っていた。



「は?天国??」


「そーです!天国です!」



「はいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!??!」

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