ああ、この悩ましき学園生活
午前のひと時
第11話 おはよう!
俺、武藤・藍人は里香に撃たれた後、意識を失って夢の世界をさまよっていた
「藍人! 起きろよ藍人!」
幸次の声が聞こえる・・・、と言うより頭の中に直接響いた
「起きろアイちゃんよ。じゃないとフランスパン口にねじ込むからな」
俺は ”やめろ!それとアイちゃん言うな! 男から言われるのは恥ずかしい” と強く念じ、目を覚ました
「はっ! ここは医務室か!?」
俺は身体を勢いよく起こして辺りを確認すると。そのキョロキョロする様子が面白かったのか幸次は笑いながら謝って来た
「ハハハ! ゴメン、ゴメン。意識取り戻さないもんだからテレパシー送って無理矢理起こさせてもらったわ」
「そうだったのか・・・。なにか余計な物見なかっただろうな? 何か物凄く夢見が悪かった気がするんだが」
「いんや、目覚める前にアイちゃん言うな!って念波しか受信できなかったぞ。えっちぃ夢でもみてたのかぁ?」
「うっさい!」
幸次は超能力に目覚めたいわゆるエスパー少年で、俺が異世界から帰ってくる前の中学時代に悪の組織と戦っていたリアル中二らしい。その超能力を使って俺を起こしてくれたみたいだ
「ごめんねアイちゃん!」
「うわ!」
泣きながら里香が飛びついて来た。そのまま俺はベットに押し倒され、泣きじゃくる里香は続けてこういった
「もう起きないじゃないかと思ったよ~! ゴメンね私のせいでぇ!!」
そのセリフを聞いて幸次は缶コーヒーを飲みながらぼやいたのだが・・・
「レーザーをフルチャージで撃った張本人のセリフとは思えな・・・、い!?」
幸次は何かに睨まれた様に固まった。その原因では無いかと思われる幸次の見つめる人形を見て、俺は幸次に話しかけた。里香は俺達の会話が聞こえない様に泣いているが
「今そこの机に置いてある人形、動かなかったか幸次!?」
「気のせい・・・だと思いたい。相変わらず不気味だな」
「お前の超能力でどうにかできないのか? テレパシーで交渉してみたりすれば成仏してくれるかもしれない」
「いやだよ!ジャンルが違うわ! それに本当に交信できちまったらどうすんだ・・・、霊感なんか欲しくないぜ」
俺にとっては超能力も霊感も同じオカルトだが何か違うんだろうか? 炎魔法が使えて風魔法は使えないのと同じ感じか?
「大丈夫ですか? その…、藍人っと呼んでもいいかしら♡」
どこからかくぐもったショッキングピンクの声が聞こえる。たしか明海とか言ったか?
「いいけど。明海さんだっけ?何の用・・・・うッ!?」
返事しながら声のする方を見ると、そこには全身包帯を巻いてよろよろと歩く明海の姿があった
「どうしたんだそれ?!」
俺は立ち上がって、フラフラしながら倒れ込んでくる明海を受け止めると
「スルスル・・・」
明海の包帯が解けて、赤い包帯・・・、赤いリボンか? そのリボンに身を包んだほとんど裸同然の彼女に押し倒された
「う、なんて力だっ!」
明海は静かにこう囁いて来た
「苗字じゃなくて名前で呼んで。か・り・ん、って♡」
それを見て怒った里香が明海を引っぺがした
「むぅ!」
「きゃっ、何なんなのよアナタ? 藍人と知り合いみたいだけど」
「アイちゃんとは幼馴染です!」
俺は ”ああ、なんかデジャブを感じる” と思いながら睨み合う二人を見ていると、急に幸次が口を開いた
「そう言いえば、おまえ、あの事故自演だったんだってな」
「え、どういう事だ?」
その言葉を聞いて俺は幸次に質問すると、幸次は飲み干した缶コーヒーを折ってパキッと二つに割りながら答えた
「科学部の話じゃあんな風に事故で一番丈夫な腰からバキっと真っ二つに折れる事はないんだと。まるで人間の腕の太さの何かにへし折られたみたいだって言ってたぜ」
「つまり・・・」
俺は明海を・・・花梨の方が良いのか? 花梨を睨むと、花梨はすねたように言い訳した
「わざとじゃないもん。昔のテレビはチョップで直すって聞いたから試してみただけだもん」
「どんな腕力してんだ!・・・はっ!?」
俺は腕力と言う言葉を言って思い出した
”確か俺はコイツに肘鉄くらわされたがかなり痛かった。パイロットスーツってけた外れに丈夫みたいな事を言って無かったけ? それでもアレだけのダメージが通ると言う事は・・・”
「俺はあの時、戦車の主砲以上にヤバい物を食らったのかッッ」
殴られた場所を押さえて冷や汗をかく俺に幸次はどうでも良さそうに言う
「勇者さまの身体能力なら戦車の主砲ぐらいなら怪我すむし、ビビる事はないんじゃね?」
そう俺は異世界に旅立って返って来た勇者だ。レベルが上がっているおかげで身体能力が常人と比較にならない程強化されている。スキルも使えるが魔法は才能は無くて覚えられなかった。と言うか幸次もかなり強いはずだが
「お前だって戦車の主砲くらい跳ね返せるだろ! 怖くないならお前も肘鉄くらわせてもらえ!」
「いやです。俺は念力で攻撃を跳ね返せても身体能力は普通の人間と変わらないんだ。超人の真似事は出来ても、基礎の仕組みが全然違う。油断してたら死ぬわ!」
「そう!超能力は不便な物なんだ!」
どこからか工藤先輩が現れて話に割り込んで来た
「うわびっくりした! 脅かさないでくださいよ先輩」
俺の言葉に静かに返事して先輩は話を続けた
「失礼。武藤君、超能力には魔法には敵わない壁があるんだよ」
「壁?」
「そう、どんなに強力な超能力であっても・・・・。技名を叫び難い!」
「クソどうでもいい壁ですね!」
俺の言葉を無視する様に先輩は続けて喋る
「技を叫んで戦う超能力バトル漫画もあるが。魔法の場合は使う際に呪文を唱えなければならないという言い訳が出来る! だが超能力で技名を叫ぼうものならっ! 何それ自分で考えたの? ってつっこまれてしまうのだ!!」
「先輩!」
幸次は先輩の手を掴み
「分かってくれますか!」
感動したように熱く手を握った。先輩も握り返して幸次に応える
「分かるとも!」
そして二人はハグした。先ほどの話を聞いて疑問が頭に浮かび幸次に聞いてみた
「もしかして幸次、技名叫んだことあるのか? どんな名前?」
「そこに触れてくれるな!」
幸次は答えてくれんかった。先輩はウンウンと頷きながら幸次に言った
「大丈夫だ、これから遠慮なく技名を叫べるように・・・僕と契約してエスパー魔法少女になってよ! 契りを結ぼ☆ 中村♡」
幸次は真顔で先輩に答えた
「それは遠慮します」
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