オマケシナリオその1
第10話 遠い世界。藍人の過去
俺は武藤・藍人・・・・。決闘騒ぎで最後に里香に撃たれた所までは覚えているんだが、その先の記憶がない
”ここはどこだ?”
そう思って辺りを見渡すが真っ暗な空間が広がってるだけだった。どうする事も出来ずに戸惑っていると不意に背後から光がさし聞きなれた声が聞こえた
”勇者よ、目を覚ましなさい。魔王を倒すのです”
俺はその光り輝く女神を見て思う
”出やがったな死神・・・ッ!”
辺りが光に包まれると、そこには町はずれの村だった。そこの村長らしき男が俺に言う
「おお!勇者よ来てくださいましたか! この村をどうかお救いください!」
村長に話をよく聞くと、村の近くに魔物が住み着いて困っているとの事。元の世界に帰る方法も分からず困っていた俺は渋々戦う事にした。ゲームとかで憧れもあったんだろう
「よくお似合いです勇者様!」
「これで私達も安心だ!」
古びた装備で身を包み村人達の前に立つと、村人達が俺の姿を見て歓声を上げた。今冷静になって考えると実に頭が痛い
”まったく、当時まだ俺は小学4年生だぜ。何がそんなに頼もしかったんだ?”
初めての魔物との戦闘、そして次の戦闘、次の次の戦闘…、それらに俺はどうにか勝つ事が出来たがダンジョンまでなかなか進むことが出来なかった。いわゆるレベルアップで強くなるものの、魔物がお金を落す事もなく、売れる様なアイテムを拾ったとしても貧乏な村人が買い取ってくれるのは稀で、物資の補給すらままならなかった。
”本当にゲームだったら、こんなクソゲーは無いだろう”
不幸中の幸いは、食料が乏しくなる冬でも食糧を優先して回してくれたので飢える事はなかった事だ。寒さはすでにレベルで身体能力が強化されていた事も有り、わずかな巻きで暖を取れば快適に過ごせた
”だからちょっと調子に乗っちゃったんだな、俺は”
魔物との戦闘だけでなくこの身体能力を利用して村人たちを助けようと、あらゆる雑用を引き受けた。薬草を取ってきてくれとか、薪になる木を切り倒してきてくれとか、魚を釣って来てくれとか・・・・
”今考えると、ゲームの序盤のクエストみたいなの本当に頼まれるんだな。当時は本当に必要なんだと疑いもしなかったし、必要なのも身に染みていたのだが”
そしてとうとう俺は魔物との戦闘で死んでしまう
”正直、こっからが辛かった”
死んだ俺は村のボロボロの狭い教会で蘇生させられた。時間は今朝村人達と一緒に祈りに参加していた時間に戻っていた
”何度も死の戻りしながら女の子の為に頑張るって話あるけど。無いから、周りくたびれたオッサンとオバサンばっかだから! 体力のある若い人は徴兵されたか町に出稼ぎ行ったまま帰ってこないし、14で結婚して村を出て行くのが当たり前だったからね! 子供も居なかったし・・・、そういえば爺さんも居なかったな。今考えると怖いから止めよう”
死んでも終わらないデスゲーム。怖くなった俺はしばらく戦えなかったが
「トーマス!しっかりして!」
村に帰って来た村長の息子が魔物に襲われてしまい重傷を負ってしまったのを見て、俺は再び戦う事を決意した。あとはもう吹っ切れて死んでも構わずにバッサバッサトと魔物を斬りに行く
”その子が同い年くらいだったのがショックだったんだけど、がんばり過ぎたよな。なれって怖いわ、何回死んだか憶えてないもん”
そして村近くのダンジョンも攻略し、俺が11になった頃
「本当に行ってしまわれるのですか勇者様!」
「ええ、お世話になりました」
自分の世界に戻る手段を探す為、俺は旅に出た。いわゆる冒険者ってヤツになったわけだ、そして旅を続けるうちに仲間も出来た・・・んだけど
「ちょっと!私が先に約束したのよ!」
「仕事!アイトは僕と川の調査に行くんだ!」
「そんな簡単な仕事あんた一人で十分でしょ盗賊娘!」
「アマンダこそ!買い物なんて後でいいでしょ。この人形マニアエルフ!」
俺以外全員女と言う苦境。
”初めにこの二人を仲間にしたのがいけなかった。どっちか一人に決めておけば・・・まあ、それが無理だったんだからこうなったんだが、どこまでも追ってくるし。そしてこんな女が俺を取り合ってたら野郎が仲間に入ってくれる訳もなく、後で入った女も・・・”
このケンカの後さらに3人増えて女5人に男俺一人のハーレム状態に、しかも事があるごとにケンカし巻き込まれると言う
”何であの時俺モテたの?勇者だから? 勇者って言えば聞こえが良いけど、ようするに世界の雑用係だからね。雑用で食いつないでいる流浪のフリーターだからね! それに何?そんな旅の冒険者内で恋愛出来ないから! 俺が一人の女性を決めたら人間関係ギスギスして命落すから!! 解散したら解散したで見知らぬ土地で仲間を集められる確率なんてクソ低いし路頭に迷うだろが! 朴念仁?クズ?それでけっこう! 女に興味ないのだって?あるから色々困るんだって言うんだよ!”
そんな事を考えていた俺は出来るだけ皆に平等にせ接して、それでも困った時は魔法の言葉を言ってその場を凌いだ
「え、なんだって?聞こえない!」
旅をしている中に魔王が時空を操作する魔法を研究していることを知り。そして月日は流れて俺が14になった頃、ついに魔王討伐隊に参加し俺達は魔王を倒した
「アイト!時空の裂け目が!」
「あれは…ビル? 日本語の看板が見える!」
魔王との戦闘で開いた時空の裂け目から日本の風景が見え、俺は喜んだが段々その裂け目は小さくなっていく
「アイト! 裂け目が閉じちゃうわ!早く中に!」
「え、でもそれじゃあ・・・」
時間がない事に戸惑い
「この為にここまで来たんだろ? じゃあ迷う事ないじゃん」
「行きなよ、僕達なら平気だから」
「こんな別れ方しないと、踏ん切りがつかないからね」
「誰が貴方と結ばれるか争うより、良い仲間のまま終わりたい。この戦いに参加する前にみんなで話し合いましたのよ」
俺はみんなの言葉を聞いて混乱し固まっているとアマンダが一歩近づいて
「じれったいわね、さっさと行きなさい!」
「あ!」
アマンダは俺を押して 時空の裂け目に突き落とした
「…、・・・・ッ ッッ! ・・・」
時空の酒ねに落ち、みんなが何か言っているのが辛うじてわかるが
”え、なんだって?・・・聞こえない! 本当に聞こえないんだ・・・”
そして俺は東京の上空300メートルから落下し
「待て待て待て! それは無いだろ!」
「ドオオオオオオオン」
スキルを使ってどうにか着地し、騒ぎで集まった警官に逮捕され俺は事情聴取を受け、しばらく施設で過ごした。そしてこの学園に入学して・・・
「藍人…? お前なのか!?」
「もしかしてアイちゃん? ナカちゃんも!」
「幸次!里香! お前らもここに来たのか!」
幼馴染の幸次と里香に再会し、本当に嬉しかった
”俺は本当に帰って来たんだ。その時初めてそう思った”
・・・そして、嬉しさの分悔しかった。どうしてもあの時の奴らの顔が頭から離れなかったから
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