第9話
第9話
活動報告会の会場に集まった各部関係者と生徒会、タケル、心落村の村民、そして聴講に訪れた生徒たちは、全員が目を見開いて壇上を見上げていた。
「どうも皆さん、軽音部です!」
ミキサーを通して響く重低音とリズムにコウタは思わず頭を抱えた。
壁際に生徒会席を作ったせいで、真後ろの壁で跳ね返った音が余計に響く。
コウタの隣に座ったアツシも、表情は変えていないもののキーボードの上に添えられた指が硬直している辺り、相当ショックを受けているようだ。
彼らの視線の先ではマイクを握った軽音部部長のトシキが時間稼ぎのトークを繰り広げ、準備済みの機材を乗せた台車が舞台袖から次々と姿を現す。
一瞬のうちに軽音部のライブ会場へと変わっていく舞台上を見上げ、コウタはいっそ笑ってしまいそうになる。
限られた発表時間を考え、機材準備の手間を省くために舞台袖で調整をしておいたのだろう。
なぜそう言うところばっかり頭が回るのか……とコウタの頭はますます痛む。
「色々大変なこともあると思いますが、俺ら軽音部が音楽で世界をつないで見せます!
ラブ・イズ・ピース!ピース・イズ・ラブ!」
バカ丸出しの言葉を並べながら、軽音部部長のトシキが部員に合図を送る。
それに応えて演奏が始まった壇上から目を外し、コウタはアツシに目配せをした。
ハッと我に返ったアツシがコクコクと頷き、素早い手つきでパソコンを操作する。
「それでは聞いてください!
今回こそは自信作、俺らの――」
アツシがリターンキーを弾くと同時に、声と重低音がプツリと途切れ、トシキは眉を寄せてマイクを叩く。
「あ、あれ、マイクきれちゃった?」
コウタはアツシが差し出すマイクを受け取り、席を立って冷ややかな目でトシキに告げた。
「今すぐ片づけて席にお戻りください」
「なんだよ、まだ何にも提案して……」
「席に戻りなさい。
三度目はありません」
有無を言わせぬ強い声がホールに響く。
壇上にいるにも関わらず見下ろされているような感覚にトシキの顔が凍りついた。
本能的に「ヤバい」と感じ取ったのだろう、周囲の軽音部員たちも愛想笑いを浮かべながらそそくさと台車を押して去っていく。
それを見送りながら、退場もスムーズなのが唯一の救いか……とコウタはため息を吐いた。
(まったく……もっとましな発表はないのか……?)
文学部から始まり、歴史研究部、トレイルランニング部、自転車競技部が順に発表を行い、先ほど軽音部の発表(もとい茶番)が終了した。
新設部である戦略部の報告の前に、ここで一度コメントを行う手筈になっている。
コウタの視線が会場の最前列へと向かう。
軽音部に先立って発表を終えた四つの廃部候補部活の部長たちが、居ても立っても居られないと言った様子でコウタの方をチラチラと見ているのと目が合った。
びくりと肩を震わせる四人の目を、コウタは一人ずつ無感情にに見つめ返す。
「各部長の皆さん、ご報告ありがとうございました。
生徒会を代表して僕の方からコメントをさせていただきます」
二週間前にクレハの話を聞いた時にはそんなに上手くいくものだろうかとコウタも不安に思った。
だが考えてみれば当然の事だったのだ。
彼女の言う通り、いい案が出せるだけの技量があれば、廃部候補になど最初からなりはしない。
「まず文学部」
松木の丸い背中がピクリと跳ねる。
(だ、大丈夫……大丈夫だぞ、私……!
頑張った、お前は十分頑張ったんだから……)
「今人気の恋愛小説に着目して、心落村の恋愛小説を書くとのことですが、この案はどういった意図で?」
「い、意図……?
えっと、私たちにできることって言ったら、小説書くことだし……恋愛ものは流行りだし……
小説読んで心地村いいなぁってなればいいと思って……」
「では、今までの文学部の小説の読者はどの程度でしょうか?」
「…………え?」
「どの程度の人数があなた方の小説を手に取ったのかと聞いています」
「え……あ、の……心落村には、恋愛に関する言い伝えがあって……」
「今は心落村ではなくあなた方文学部の話をしていますよね?」
「………………読者はほとんどいません……」
「ならばその企画がうまくいかないことは自明ではないでしょうか?」
次、とコウタは隣に座った高峰に目を向ける。
松木の撃沈に動揺してか、高峰は防御態勢をとる。
(よ、よせ、よすんだ猪狩くん……!
自慢じゃないが僕のメンタルは松木くんよりも軟弱で……)
「歴史研究部の調査技術を活かし、近年流行りの『歴女』を呼び込むという発想は悪くないでしょう」
予想外のコメントに、身を固くしていた高峰は一転、胸を張って鼻を鳴らす。
(ふふ……やはり僕は君たちとは格が違うようだね、諸君)
「ちなみに心落村にはどういった興味深い歴史があるのでしょうか?」
「…………へ?」
「人気を考えると有名武将や幕末の士族たちに絡めたものが適切かと推測しますが」
「……そ、そうそうそう!
松木くんの言うように恋愛に関する言い伝えが……」
「ではそれをどのように加工してターゲットを呼び込むつもりでしょうか?」
(ま、松木くんの話だって初耳なのに考えているわけがないだろう……!)
だらだらと冷や汗を流し始めた高峰に、コウタは目を細める。
「その程度の具体性のものを採用するわけにはいきませんね」
「く……無念……!」
高峰が手を握って涙する横では郷が静かに身構えている。
そしてその更に横では、窪内が不満げな目でコウタを見ていた。
(なんだよ、偉そうに文句ぱっか言いやがって……!)
ムスッと頬を膨らませる窪内だったが、いいもんね、と彼はコウタから目を外した。
生徒会がいるのとは反対側の壁際に並んだ席へと目を向ける。
今回の審査員は、何もコウタ達生徒会だけではないのだ。
(タケル先輩や心落村にはボクらの頑張りは伝わってるはず……)
「トレイルランニング部……と自転車競技部もそうですね」
不意打ちで呼ばれて、窪内はコウタに視線を戻す。
(え、ぼ、ボクも一緒に呼ばれちゃったよ……って郷?!
泣くの早くない?!)
「あなた方はそれぞれ、トレイルランニングのための訓練場と自転車競技コースを作ることを提案されていますが、どのような効果が期待されるのでしょうか?」
「こ、効果……?
えっと、ボクらが合宿に使ったり、あ、もちろん他の学校からも」
「その効果は予算をかけるに値しますか?」
「……というと……?」
「予算は心落村の方々が出してくれるものです。
その期待に応えられるだけの効果がある企画ですか?」
え、と窪内の喉が詰まる。
期待という言葉に彼は思わず村民席を振り返る。
(どうするかのぉ……)
(学生さんも頑張ってくれてるよって、見守ろうじゃないか)
(でもねぇ……どれもピンと来ないのよねぇ……)
(ちょっとッ、静かにしな!
聞こえちまうよッ!)
村民たちは窪内には目も向けずに頭を寄せ合って話していた。
声は途切れて聞き取りにくいが、その表情を見るだけでわかる。
窪内たち四人の出した結論は、心落村の期待には応えられていない。
そしてその様子はコウタにも見て取れた。
ここまで来るといっそ学園の面子が心配になるが、クレハの思惑通り、タケルたちは常新学園との協力を諦めかけている。
「な、なあ、軽音部にもなんかコメント……」
「コメント?
お言葉ですが、報告会の趣旨、さらには部活動の趣旨を理解していない方々に僕から言うことは何もありません。
なにより、自身の立場をちゃんと理解していますか?
ここで結論を出すことはしませんが、廃部の可能性が限りなく高いということは申し上げておきます」
えぇ、と今更のように騒ぐトシキを無視して、コウタはその奥に座ったリュウを見る。
「金城土リュウ」
今回の報告会は、現時点ではクレハが言ったとおりに進んでいる。
だがここから先はコウタにはわからない。
「新設部活・戦略部の部長として、今後の活動報告をお願いします」
クレハは戦略部の強みを封じたと言っていたが、それがどういうことなのか。
(さあ、どう出る)
コウタは席に着き、壇上へ上がるリュウの背中を見上げる。
マイクを取ったリュウは、険しい顔で息を深く吸うと口を開いた。
「戦略部が心落村にできることは……ありません」
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ショウマが報告会の会場に到着すると同時に、会場全体がざわめいた。
「戦略部ができることはないから、報告することもありません。
発表は以上です」
リュウの発言に困惑した聴衆たちが、「どういうことだ」「あの戦略部が?」と小声でひそひそと戸惑いを口にする。
廃部勧告を受けていた部長たちでさえも、足りない部分はあるものの何かしらの報告を持ってきたのだ。
それが、この報告会で最も期待されていたと言っていい戦略部が、何もないと言う。
会場後方の出入り口からその困惑を眺めていたショウマは、「やっぱりね」と頷いた。
(「何もできない」って思うのも仕方ないんだけどね)
心の中でリュウをなぐさめながら、ショウマは生徒会席へと視線を移す。
彼の予想通り、クレハは驚く様子もなく涼しい顔で壇上のリュウを見上げていた。
その二つ隣で、やっと我に返ったコウタがマイクを手に戸惑いつつも声を上げる。
「できることがないとは……どういうことですか、金城土リュウ」
「そのまんまだよ。俺たち戦略部が心落村にできることはない」
「……全く……もっとマシな部はいないのですか……?」
いっそ呆れたと、零すコウタの態度に、リュウはマイクを手に取り抗議する。
「なんだよ!
もとはと言えば生徒会がろくな情報寄越さないのが問題だろ!」
「それなら自分たちでいくらでも調べられるでしょう?
責任転嫁は……」
「そういう意味じゃなくって」
「ではどういう意味なのかはっきりと言ってください」
質疑を兼ねたコメントのはずが、互いの語調が強くなってリュウとコウタの言い合いのようになっていく。
やれやれ、とショウマは苦笑交じりに溜息を吐くと、深く息を吸いこみ、口を開いた。
「彼が言いたいのは『明確な目標だけが願ったとおりの成果をもたらす』ってことじゃないかな?」
会場に居合わせた全員が彼を振り返る。
久々にしてはいい声が出たもんだ、とショウマは満足しながらその視線に笑みを返す。
「……会の途中です。
静粛に願います」
「うん、そうしたいのは山々なんだけど」
コウタの言葉を受け流して、ショウマは階段状の通路をリュウに向かって歩いていく。
「でもこのまま放っておいても君たちの言い合いしか見れないんじゃないかと思って、ついね」
やれやれとでも言うように肩をすくめてから、ショウマは「あぁ、そうだ」と足を止める。
「一応自己紹介をしておこうか」
ちょうどホールの真ん中あたりで、彼はぐるりと周囲を見渡して礼をした。
「三年、演劇部部長の柳瀬ショウマです」
柳瀬ショウマと名乗る男子生徒の登場により、活動報告会の会場は騒然としていた。
「ちょっと、柳瀬先輩だよ!!」
「留学してるんじゃなかったっけ?」
「舞台降りてもカッコいい……!!」
聴衆のあちらこちらから黄色い声が上がるのを、コウタは戸惑いながら眺めていた。
柳瀬ショウマ、高校三年生。
演劇部の部長にして看板役者。
それ以外でコウタが把握していることと言えば、先の生徒会長選挙ではクレハの対抗馬である演劇部衣装リーダー・鷲条ツグミの推薦人を務めたこと、そしてつい最近までどこかに留学していたということだけだ。
「彼が言いたいのは、明確な目標がないから望ましい案を提示できないってことだと思うよ」
周囲の歓声など気に掛けず、ショウマは軽やかな足取りでホールの真ん中の通路を最前列に向かって歩いていく。
なぜ彼がここにいて、何のためにこのような乱入を行っているのか。
それはコウタにもわからないが、何よりも今はこの場を治めなければいけない。
「目標は心落村の村おこしです。
用意していただいている予算の規模も村の基本的な情報も、我々の方から開示しています」
動揺を飲み込んであくまで堂々と言い切るコウタに、聴衆も少し落ち着いたようだった。
確かに、そうだよね、と同調する声がざわめきに混じってコウタの耳にも届く。
そしてそれはショウマの耳にも届いているはずなのだが、彼は余裕の表情を崩さないままにコウタに問いかけた。
「じゃあ聞くけど、何のために村おこしをするんだい?」
思わぬ質問にコウタの唇が渇く。
とっさに頭の中を整理して言葉を組み立て、緊張で震えそうになる手をぐっと抑え込む。
「それは――」
「その質問には私が答えよう、柳瀬」
コウタの横から、マイクを通さないままのクレハの声がホールに響く。
瞬間、まだかすかに残っていた聴衆たちのざわめきがすっと消え、全員の目がクレハに集まった。
「どうせ『何を達成条件とするのか』とか、『思い描いているヴィジョンは』とかいうのだろう?」
「さすが、ご名答」
「何がご名答だ。
私の後輩をいじめてくれるな」
質問のレベルが高すぎると冗談めかして言ってから、クレハは笑みを落としてショウマを見据える。
「具体的な目標は心落村でもまだ協議中だ。
今回はそういったものに縛られない自由な発想を求めている」
「それなら今回の廃部候補部活だってそれぞれ自由な発想をもっていたじゃないか」
「確かに発想は自由だが、文学部は自身の企画を担う実力が伴っておらず、歴史研究部に関しては、あれはただのアイディア止まりだ。
現時点で得られる情報だけでも、しっかり調べればもっと具体的な提案が作れるはずだ。
トレイルランニング部と自転車競技部は、これはあえて言わせてもらうが、自分たちの部活の事しか考えていない。
恐らく新聞部が特集した整理の表でも使ったのだろうが、あれだけで何かが解決できると思っているのなら、あまりに甘い考えだと言いたい」
淡々と並べられる厳しい言葉に高峰を始めとした部長たちの背中が丸くなる。
だが誰も反論ができない程、彼女の言葉には説得力がある。
「自由な発想と言っても、最低限考慮すべきことはある。
活動報告はただ考えを述べて終わりじゃない。
有言実行こそがこの報告会を意義あるものとしている。
それを自覚せずに机上の空論をもって来た時点で、部として存続する資格がないとは思わないか?」
つまり廃部にすべきだと、彼女は淡白に言う。
ショウマはクレハの言葉に頷いてから口を開いた。
「君の言うことは、本当にその通りだと思うよ」
「ならさっさと席に……」
「ただ、あの部長くんはあと一押しすれば実行できる案を出してくれると思うんだ」
ショウマは壇上のリュウを親指で指し示していう。
「だからちょっと時間くれない?」
ショウマは肩をすくめると、眉を下げて苦笑交じりにクレハに頼む。
それをしばらく無言で見つめ、クレハは深いため息を吐いた。
「……駄目だと言っても勝手にするんだろう?」
「もちろん」
ほざけ、とクレハは悔し気に零した。
彼をホールに入れた時点で、彼女の負けは決まっていたも同然なのだ。
生徒会長のお許しを受けたショウマは、壇上で唖然としたままのリュウを見上げる。
「戦略部にできることはないって、もしかして『他の部活と協力しないと立てた戦略を実行できないから』だったりする?」
「!!」
リュウは何も言えずに目を見開く。
その表情だけで「図星だね」と呟くと、ショウマは肩をすくめた。
「それなら君、視野が狭いよ。
例えば、じゃあ、歴史研究部の君」
「ぼ、僕ですか?!」
突然声を掛けられ、高峰が肩を震わせる。
「心落村の課題は何だと思う?」
「か、課題、でありますか……?
山奥にあって、人が訪れにくい事……でしょうか?」
冷や汗を流しながら高峰が絞り出すように答えると、ショウマは「なるほど」と頷いて今度は心落村の村民席に目を向ける。
「じゃあ、タケルは?」
「お、俺もか?」
「自分の村の事なら答えやすいでしょ?」
「まあ、そうだけど……
若者が少ないことかな。
活気が足りないと思っている」
「じゃあどうやれば若者が多くて活気がある場所になると思う?」
「それは……」
タケルが答えようと口を開きかけたところで、彼の隣で一人の老人が立ち上がった。
「決まっておろう!
祭りじゃって、祭り!」
「祭りなんて古いわぁディスコにしましょう」
「ディスコも古いよッもっとナウいものはないのかい!」
「いやぁ……ナウいもナウくないがのぉ……」
つられて四人五人と席を立ち、村民たちは盛んに議論を始める。
それを横目で見て、タケルは苦笑交じりにショウマに答えた。
「こんな感じで、中々まとまらなくって……」
ショウマはその言葉に頷き返して「どう?」と壇上を振り返える。
その視線の先では、リュウが不思議そうな顔で高峰やタケル、興奮気味になにやら言い合う老人たちを見下ろしていた。
「部長くん、感想は?」
ショウマの言葉に、リュウは少し困ったように彼を見た。
どう言ったらいいのかと迷っている様子のリュウに、ショウマは正直に言ってみなよと頷く。
「なんて言うか……みんな的外れだな」
リュウの手元に握られたままのマイクが、彼の呟きを拾ってホールに広げる。
「心落村は山奥にあってアクセス悪いのもそうだけど、似たような条件で人気な観光地もいっぱいある。
それなら課題は立地の悪さじゃなくて『それでも行きたい』って思えるものがない事じゃないのか?
あと若い人が少ないのも、祭りじゃあんま集まらないだろうし、課題はそれだけじゃないと思う」
流れるように説明するリュウの言葉に、ショウマはその通りと深く頷いてさらに問いかける。
「さて、今ので心落村の課題をしっかり把握できてない人が少ないことが分かったよね?
その中で君たち戦略部は、具体的な解決策は示せなかったけれど、この会場にいる誰よりも心落村の課題が見えている」
そこで言葉を切り、ショウマは試すような笑みを浮かべてリュウを見上げた。
リュウはその目を数秒見つめた後、マイクを握り直して深く息を吸いこむ。
「戦略部は」
課題が見えている中でいかにして解決にたどり着くのか。
それが、この二週間ずっとリュウが考えていたことだ。
だが実際には、当事者であるはずの心落村でさえ課題の把握ができていない。
ならば一つだけ、リュウにもできることがある。
「心落村での『課題発見合宿』を提案します」
見えていない人がいるなら、見えている人が示せばいい。
「実際にこの目で現状を見て、課題を見つけて、持ち帰るための合宿。
今回報告会に参加した部活はもちろん、参加しなかった部活にも声をかけて、常新学園全体で心落村の村おこしを成功させるための合宿。
心落村を実際に見に行って現状と課題を徹底的に掘り出す合宿」
今回廃部候補になった部活だって、村おこしに役立つ技術を持っているはずなのだ。
にもかかわらず心落村の現状を、さらには自分たちの持つ力を正しく理解できなかったことで、いい案を出すことができなかった。
そこをしっかり見極めて活かすのが、戦略部のできることだ。
「それが、オレたち戦略部が心落村に対してできる、活動内容です」
リュウが言い切ると、一瞬の静寂を挟んだ後に、会場が大きな拍手に包まれた。
思わぬ歓迎にリュウが目を丸くする前では、聴講していた生徒たちが「すごい!」「面白そう!」と尊敬の眼差しでリュウを見上げている。
盛り上がる会場の真ん中で、ショウマはリュウに背を向けた。
今のうちに立ち去ってしまうつもりなのだろう。
出口に向かって振り向く途中で、彼は一瞬だけ生徒会席に目をやった。
刺すようなクレハの目と、涼し気なショウマの目があう。
彼はそのまま拍手に紛れるようにして会場を去っていった。
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