第3話 衝撃~鈴の視点~
「ちょ、ええ!?」
キーン...
誰の声かは想定できるけど...突っ込まれてる時くらい黙ってて欲しかったんだけど。
「なんだなんだ?」
「あれ、男の子倒れてるよ?」
...は?
客が二人共国家公務員だったのがまずかった。俺の上も下も開放されてあっという間に客は倒れたやつの元に駆け寄っていった。
「チッ...めんどくせ。」
俺はそのふたりの後から、そっと倒れた奴をのぞいてみた。
ッ!?
「はぁ!?」
「あ、リンちゃん!!あのね、この人急に倒れて「退け!!」ッ。」
なんであんたみたいなノンケがまたこんな所来てぶっ倒れてんのさ!!?
「お客さん、お金は...うん、いつもの値段でいいからこの人を運んでください!!」
客に力を借りて、行きつけのバーの休憩所に由を寝かせた。
「ありがとう、お客さん。」
「いいよいいよ。でも、いいのかい?いつもの値段で。」
「そうだよ。人助けは当たり前のことじゃないか。」
「いいの。...最後まで相手しなかったし。」
...ことごとく、この男は俺の人生を邪魔する。
俺は金を払ってもらった後、ゲイバーの店主に事情を説明した。
そして今日1日はここに泊まらせてもらえるよう取り付けた。
「ねぇ、この人とはどんな関係?」
「それ、仕事で関係あるの?」
「いや、ないけどさ...。」
こうやってこまめに話しかけてくるのは、俺の一個下のケンだ。
さっき情事中に叫び声を上げて邪魔したのも...こいつ。
「高校のクラスメイト...それだけ。」
「え?でも中退って...あ。」
ケンはそこまで言って自分のうるささがわかったみたいで慌てて口を覆った。
「ま、だいたいお前の思った通りだよ。」
「じゃ...なんで助けたの?」
ケンの声は少し不服そうに凄められた。
「さぁ...俺の性格考えたらわかるんじゃない?」
「...邪魔されたくなかった...?」
「そんな感じ。」
すると納得したのかそれから少しだんまりした。でもまた口を開いた。
「...僕なら既成事実作るけどなー。」
「は?」
「僕とヤったからお金頂戴って。」
「」
冗談じゃない。
あれだけのものを見られててなお既成事実なんて出来たら...むしろコッチに不都合だ。
「マジありえない。」
俺がふてくされると、ケンは慌てて手を振った。
「いや、僕の場合はね...堕としちゃうんだよ。僕達のところに。」
「堕とす?」
「うん。だって僕らのことキモイって思ってるようなやつだよ?一度足引けば、簡単にゴロゴロ手の中に墜ちるもんだよ。」
ケンはそうやって水をすくうような手つきも合わせて説明した。
「...そういうもんなのか?」
「そだよ。だって...こいつに堕とされたんでしょ?」
そう言ってケンは由を蔑むように見つめた。
その目は、こいつなりに何かを抱えているのかな。
「」
実際にケンの意見は正しい。
こいつは俺に惚れられたと勝手に勘違いをして、仲間の奴らとひどく俺の心も体も痛めつけた。
そして、俺の処女を犯したのもこいつだった。
挙句...俺の本当に慕っていた教師に余計な告げ口をした。
"こいつ、金払えば何でもやってくれるよ"
そしてその教師は俺に3万円を手渡し、学校の使っていない古びた部室でひどく犯した。
あの埃臭さが自分の思いは誰にも報われない…嘲笑われているような気がして絶望を感じた。
その日から俺の人生はゴロゴロと崖から落ちる岩のように転がり落ちた。
高校にもいられず自主退学。
親は病魔に心を蝕まれ自殺。
夢も希望も...生きる糧も...すべてなくした俺は、ひとりで自分の体を支える術を探すしかなかった。
中退したやつに仕事なんかあるわけもなく、俺は...男に奉仕する生き方を選んだ。
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