第1章
第1話 急な再会
俺は永谷由(ナガタニ ユウ)営業職に務める至って普通の会社員。
普通に高卒で、普通に働いている。
まぁ、高校の時にちょっとやんちゃした時もあったけど、そんなの誰だってやってるだろ。
そのやんちゃだって『俺は悪くない』し。
なのに今日の営業は本当にクソだった。
「あら、永谷くんよね?」
「...あ。はい。」
俺の高校の時の教師が客で上司の前で恥をかいた。
だから仕事終わり、上司と別れた後ブラッと酒を飲みたくなって見知らぬバー通りを歩いていた。
「チッ...。」
俺は舌打ちをしながら足元の空き缶を思いっきり蹴りあげた。
すると、目の前の赤のパーカーのフードをかぶったやつに当たった。
...やべ...。
俺はそいつに恐る恐る近寄った。
「だ、大丈夫...すか?」
俺が声をかけると、そいつはこくりと頷いた。
そして急に俺の手を両手でつかんだ。
「ッ...?」
「...助けてください。」
「...え?」
そいつの手は驚くほどふるえていた。
...面倒ごとに巻き込まれる感じ...だな。
今日不運だな。
そう思いつつもその手は何故か振り払おうとは思わなかった。
「僕、処女なんです。」
「...。」
は?
「今なら3万でお安いですよ。」
何かと思ったらそういうことかよ!!
「結構です。」
俺は慌ててその手を振り払った。
すると今度は腕にぐいっとまとわりついてきた。
「ッ何なんだよ、あんた!!」
俺は引き剥がそうとそいつのフードを取った。
「ッ!?」
な、なんでこいつがいんだよ...。
「...は?」
そいつの正体は俺が闇に葬った過去にいたはずの、葉山鈴(ハヤマ リン)だった。
でも、髪の色も目の色も変えていて、目つきも冷たく光って。
一瞬わからなくなるほど印象はガラリと変わっていた。
鈴も驚いたのか俺の顔を見るならその腕を離した。
そしてその場を去ろうと後ずさりをした。
...が、俺のそばから離れられてない。
あ、俺まだフード握ったままだ。
「...離してください。」
でも、うつむいた目は鈴そのものだった。
俺の中の隠していた黒い虫が腹の中でうごめく感覚がした。
「やだ。なんでお前がこんな所にいんだよ。」
「...それはこっちのセリフ。なんでこの通りに来てんの。」
チッ、見ない間に生意気いいやがるようになった。めんどくせぇな...。
俺は鈴のフードを思いっきり引っ張った。
「...それで威嚇してるつもりなの?」
なのにその反応は冷めたもので、先ほどの冷たい目に変わっていた。
「は?」
「それ、こっちの奴らには誘ってようにしか見えないよ?」
鈴はそう言うとニヤリと口角をあげて舌なめずりをした。
「ッ!?」
「ハハッ、キモいっしょ。ほら、早く離してここから去ってよ。迷惑。」
「はぁ?ふざけてんのか!?」
「んなわけないじゃん。あんたの相手してるあいだこっちは仕事取れないの。早く目の前から消えて。」
こんな喧嘩ふっかけるようなものいいに俺が反応するほど俺は浅はかなままだった。
「ハッ、どうせ相手いなくて塞ぎ込んでたからあんなとこにいたんだろ。」
「ッ...だったら何。相手でもしてくれるわけ?」
「あぁ、やってやろうじゃねぇか!!」
...あれ?あれ今なんて言った...?
ッや、やばい展開になってね!?
俺が内心バクバクしてると、鈴はフッと鼻で笑うとこう返した。
「...あんたの家呼んでよ。ここじゃ無理、せめて場所選ばせて。」
「ッ...付いてこいよ。」
...ど、どうしよう...。
こんな時になんで負けず嫌いが出ちゃうかな、俺。
俺がそう言うと、鈴は頷いてトコトコと後をついてきた。
そして俺の部屋に案内すると俺のベッドに仰向けに横たわった。
「な、なぁ。ほんとにやるのか?」
「俺ネコだから。」
「猫?」
猫が好き...とかそういうことか?
「好きなだけ挿入していいよってこと。」
急に言われた言葉に体がぞわっと粟立った。
「ッな、何言って...「言ったじゃん、処女だって。」...な、ならなおさらそんな簡単に...。」
「嘘に決まってんでしょ?意味わかって話してる?」
「...え?...ッ。」
俺は聞き返した後、やっとその罪を思い出した。
「俺があんたらを何回相手したと思ってるの?とっくに処女なんて喪失してる。」
「...。」
「だから、学校だって辞めて今これして食ってってるんだし。」
「...ッ!?」
俺が押し黙っていると、鈴は俺の首の後ろに手をやってクイッと顔を近づけた。
「で?やるの?やらないの?」
その目は冷たく鋭く俺の心を突き刺してくる。
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