第2話
商店街から少し歩いた距離にある大通りのマンション。その最上階の部屋に依央さんの案内で訪れた。キッチンと一体型のリビングはそこかしこに紙の束や本が積まれていて、居間らしさが失われている。
そこがネタばらしの舞台になった。
「えっと、
挙動不審から戻らなくなった依央さんの隣にはタオルケットの塊が鎮座している。全身を包んでいるせいで目と足先しか出ていなくて、オレンジの弱い照明しか点いていない薄暗さでは顔がほとんど見えない。
「そっちは僕のこと知ってるんだろうけど、大鍋梵士……です」
とりあえず名乗ってみても、返事はない。タオルケットの奥の瞳はじっとこっちを警戒している、気がする。
ともかくこの人が依央さんに台本を与えていた――中の人らしい。
「あのね、僕としてはすっかり騙された気分で説明を求めてここへ来たのに、この状態はなんなんだ。誰かマトモな人はいないのか?」
文句を言うと、タオルケットが依央さんに耳打ちをした。聞き終えた依央さんの顔つきが急に変わった。僕もよく知っている明るくて人当たりのいい、みんな大好き副島さん。
「作家が表に出るのはあんまり好きじゃないんだって」
通訳のようだ。役割を与えられると落ち着くらしい。
「ウソつけ、単純に外に出てないだろ」
ろくに明かりも点けない本やら紙の束で散らかった部屋。コミュニケーションが困難。この様子なら断言できる。この妖怪タオルケットは引きこもりだ。
「作品で語るなら、これを読めば全部わかるって」
脇にあった紙の束を取って渡された。
「うわぁ、なんだこれ」
何枚ものコピー用紙には僕と依央さんの会話が印刷されている。ただし単なる記録とは違う。依央さんの発言に対して僕の返答が複数パターン用意されているからだ。
会話の流れをあらかじめ予想して、実際に僕がした返答に従って台本を選択していく。そういうことを、依央さんはずっとやっていたらしい。
(……これを全部憶えて行動してたのか)
台本という言葉が出たときから予想できてはいたけれど、ゾッとした。こんなことができるなら弁当のメニューを暗記するくらい楽勝で当たり前だ。
台本には依央さんが僕を好きになったきっかけのことについても書かれていた。
(こんなことまで……)
告白の前に放課後ちょっとずつ質問を投げかけられたのは、僕の情報を集めて台本を作る為。告白を聞かされたときから――いや、普段学校で過ごしたこれまでのすべてが演技だったんだろう。今そこでオドオドしている姿が副島依央の本性だ。
「僕は……わかりやすかった?」
タオルケットは戸惑い気味に頷いた。つい、大きなため息が出る。
そこで引きつり顔で笑っている僕の恋人は、僕の知らない人間だった。その口から出た言葉はすべて他人によって用意されたもので、僕が好きになった〝みんな大好き副島さん〟はこの世に実在しない。そう納得するしかない。
「……怒らないの?」
しばらく黙っていたら、なんとタオルケットが口を利いた。妖怪染みた見た目に反したハイトーンは小さな声でも澄んで耳へ届く。
けれどそんなことを気に留めるような心境じゃない。気持ちがやさぐれてしまっている。
「僕がどう思うかなんて、今までみたいに予想すればいいだろ。わかりやすいんだからさ」
「根に持たないでほしいわ。だから、怒ると思っていたのよ。なぜってキミは騙されたと思っているんでしょう?」
「……怒ってないよ」
これは本心だ。困ってはいるけれど、怒りはない。
「つまり依央さんは自分の行動に自信が持てないか、もしくは自発的にはどうすればいいかわからないタイプの人で、それを台本で補填していたってことでいいんだよね」
「キミ、聞いていたよりずっと物わかりがいいじゃないの。なんだかもう、ちょっと気色悪いくらい」
タオルケットは多分、驚いていた。布の隙間で眼が見開かれている。
一体どういう風に伝わっているのか気にはなるけれど、今は話を進めたい。
「それで依央さんは今後も台本頼りの生活を続けたくて、僕に受け入れてほしいと。だからこの人――ヘギさん? を紹介したと」
「うわぁ、気色悪ぅ! 物わかり良すぎ!」
タオルケットから突き出した唇がハッキリ覗いて、とうとう完全に嫌がられた。
(この状況を僕なりに飲み込もうとしてるってのに、なんて人だ!)
半眼で見つめてもタオルケットの固い防御力を貫けないでいると、その隣が気になった。依央さんが両手を合わせて祈るようなポーズでこっちを見ている。
「梵士くん……私が梵士くんを好きなのは……本当なんだよ?」
こっちのサバサバした態度を否定的に感じて不安になっているようだ。
ゆっくり首を振る。
「ああ、そこは疑ってないんだ。かえって前より信じられるくらいで」
この人慣れしない小動物並の引け腰が彼女の本性なら、「好きなフリしてアイツをからかってやろうぜ」なんて発想に至るはずがない。告白もここへ連れて来たことも、相応の覚悟があってのことに違いなかった。「みんなのアイドルが興味本位で近づいて来た」より好意は強いと実感できている。
「それに台本――マニュアルがあったほうが安心っていう気持ちもよくわかるから」
これは別に恋愛に限らないことで、状況に応じて態度を変えることは社会性としてとても正しい。客商売をやっている人間なら当たり前の認識だ。
「好かれたくてしたことを責める気にはなれない。そりゃありのままで接してくれなかったのは寂しいけど、だってまだ付き合い始めたばっかりだよ? 素が出てこないのはしょうがない」
僕にしたって隙あらばカッコつけたいと思っている。雑誌を読んで「こうすれば彼女はパツイチでコロイチ」なんて記事を見つけていたらその通りにしていたかもしれない。
「僕は台本を含めた〝副島依央〟を好きになったんだ。だからここで怒ったりガッカリしたりするのはおかしい。そうだ、僕は〝副島依央〟が好きなんだ」
繰り返し、胸の奥に響かせた。それだけは動かせない基本であり結論。
「梵士くん……私、嬉しい……!」
両手を合わせる意味が、祈りから感謝に変わったと震えが伝わる。
「ああ、ちょっと待って。アンタが喜ぶのはちょっと早とちりだ」
言うと、ふたりが困惑した様子で固まった。
「……え?」
「『アンタ』って……」
向こうの話が終わったなら、やっとこっちの話ができる。
「それでは質疑応答に移りたいと思います」
平常心に自信が持てないので意識してかしこまった言葉を選んだ。自分がこれから言おうとしている言葉の意味が自分でもよくわからない。
「……僕は一体……どっちが好きなんでしょうか」
目の前のふたりを交互に指差すと、ふたりは同時に首を傾げた。
「えっ……?」
「なにを言っているの?」
伝わらなかった。ムリもないけれど、もどかしくて語気が増す。
「僕が好きなみんな大好き副島さんは中と外、ふたりでひとりの抱き合わせだった。ひとりの人間としては存在してないんだ」
「わた、私はここにいるよ?」
ショックを受けた表情で伸ばしてきた手を払い除ける。
「僕に触るなっ! 誰だお前は! 誰なんだ!」
平常心はもう売り切れた。
「あなたの恋人の副島依央ですよ! 梵士くん!」
そう叫ぶ姿は確かに副島依央ではある。でも、知らない人だ。
「馴れ馴れしく名前を呼ぶな! 見ためだけの半分のくせに!」
外の人はそれ以上の言葉を失って、隣にいる中の人も呆気に取られて場は沈黙した。彼女たちが理解するにはもう少し説明が必要なようだ。
「僕は真剣に依央さんが好きだ。今まで演技していたとしても、それでもよかったんだ。『二面性があるなー』とは思ってたし、台本のレールを外れて慌てるところも『可愛いな』って思ってたから。このままいけばきっと素の依央さんを好きになってたよ」
真実を知った今となっては今更虚しい空想。
「梵士くん……」
外の人が感じ入っている。だからそれは早とちりだというのに。あと名前で呼ぶな。
「けど二面性の片側に、別の人が一枚噛んでたら話は違ってくるでしょォ? 僕の恋人はふたりで0.5ずつだったんだ。だから自動的に、僕の恋心はふたつに分かたれた!」
恋人が中と外に分かれていたのだから、当然そうなる。
「あー……ちょっと待って」
「はい、中の人! 意見をどうぞ!」
タオルケットへ向けて掌で発言を促すと、不満げな反応が伝わる。
「誰が『中の人』よ! ってそれどころじゃあなくて……。もしかしてキミ、私のことも自分の恋人だと思っているの?」
まさか自分はそう思っていないとでも言い出すのだろうか。不安になって膝立ちで素早く近づいて手を握る。
「はじめまして、好きです! 0.5だけ!」
「うわぁ、コイツめんどくさい」
「あと恋人じゃない。恋人ハーフです」
「マヨネーズみたいに言わないでよ。……ったく」
中の人は離した手の指先で額を押して僕を遠ざける。次いで大きなため息。
「あのねえ、確かに私はこの子に台本を書いたわよ? でもだからといって私の精神が宿っていたみたいに解釈するならそれは誤解。作品と作者を同一視しないでくれない?」
「作品を通じて作者を好きになったんだ。この感想は作者本人だって取り消せない」
すかさずの反論で言葉に詰まるのが分かった。
代わりに外の人が息を吹き返す。
「そ、それは浮気なのでは……?」
恋人を責め立てる迫力とは程遠い気弱な口調。動揺が激しいのか息切れしている。
もちろん彼女はあくまで外の人なので責められる謂れはない。しかし釈明して聞かせる義理はある。0.5くらいは。
「浮気というなら外の人の内面に惹かれたり、中の人の外面に惹かれたら、それが浮気だ。中の人を中の人のまま好きになるのに問題は何もない」
僕の恋人はフィクションだけれど、外の人が中の人の台本に従う場合に限って存在できる。どちらか単体や逆面では別人だ。
「じゃあアンタはこの子自身の内面とか、外面だけには惹かれないって言うつもり?」
背中を押された外の人が訴えかけるような目で見てきた。
「そりゃ惹かれますよ。メチャクチャ可愛いし――ああっ、これじゃ浮気だ! ゴメン、依央さん! 外の人の内面に心を奪われるなんて、あってはならないのに!」
「い、いいんだよ梵士くん」
「お前じゃない! 僕の依央さんは台本のないお前じゃない! 馴れ馴れしく名前で呼ぶなって言ってるだろ!」
「そんな、大鍋くん!」
「やめてくれ! 0.5は恋人なのに、そんな呼び方よそよそしいじゃないか」
「コイツめんどくさい! っていうか、もうサイコパスよね」
外の人がドン引きして壁際へ逃げた。そんな反応は傷つく。
一方、外の人は真剣な顔つきで頭を捻っていた。
「じゃあ、なんて呼んだら……おおなべぼんじだから……」
この難儀な状況に対応しようともがくタフさは彼女本来の持ち物らしい。惑っても怯んでも、ヘコみはしない。
(見た目はこんなにも依央さんなのに……。ああ、こんなにも依央さんなのになあ……)
悔しい思いで見惚れていると、やがて出た結論にゾッとした。
「……おおじ……王子様……!」
大鍋梵士の頭と尻を取られた。思い付いた当人には満足な出来のようで、夢見る乙女のキラキラした瞳で見つめられる。
「私の王子様!」
「オーケー、名前で構わない。僕も名前で呼ぶことにする。一旦冷静になろう」
商店街のアイドルとしてニーナが採用される以前、商店街のプリンスという企画があったことを思い出し、一気に平常心が戻ってきた。
落ち着いたところで、どうすればいいかはわからない。
「キミが何を考えていたって、客観的に見ればふたりの女を同時に好きな浮気男なのよ。それでいいの?」
反論できない。
「恋は主観的なものだっていう見方に固執してもいいけど、その場合アンタは演技してたこの子を好きになったっていう話でしかないの。主観的には私のことを知らなかったんだから、『それでも好きだ』っていう展開一択でいいの」
すっかり主導権を奪われていいように言われる。
片木未与子さん。相変わらずタオルケットに包まれていてその正体は見えてこない。多分、年上だと思う。そのくらいだ。
「台本は依央の要望に沿って書いていたんだから、間違いなくこの子の本心。ただそれをどう表現すればいいかを提案していたに過ぎないの。つまりキミが好きなのはそこに実在している副島依央本人で間違いないってこと」
「でもですね、僕はもうあなたのことを意識してしまっているわけで……」
仮に今後生身の依央さんと付き合っていくとしても、ずっと裏切ったような後悔を引きずることになる。もしかしたら物足りなさも感じるかもしれない。「あの頃の彼女が好きだったのに」という風に。
未与子さんはうんざりした風にため息をついた。
「じゃあ私がキミをフれば納得する? ごめんなさい。大鍋梵士くん、キミとはお付き合いできません」
「いやあ、0.5にそんなこと言われても困ります」
浅い。判定は不充分だ。
「なんなの! じゃあ今からこっぴどくフる台本書くから! 依央、それを読みなさい!」
未与子さんはタオルケットを膨らませて怒り、依央さんは仰天しながら首を振った。
「え……嫌だ。梵士くんと別れたくない」
台本は彼女の要求で書かれていたものらしいので、これを断るのは当然と言える。
それにしても、外の人単独とはいえこういうことを言われると胸にグッと来た。
(いかんいかん。素の依央さんに惹かれたら浮気になってしまう。浮気はダメだと肝に銘じろ大鍋梵士、カメラのキムラのご主人がどうなったかを忘れるな)
商店街の写真屋の店先にはもう長いこと「私は浮気をしました」と首から札を下げた店主の写真が大判で飾られている。切ない笑顔で。詳しくは伏せておくその事件以来、何かしでかすと同じように写真屋の店頭で晒されることが商店街内恒例の私刑となっている。
(ああならない為に、愛情のバランスに気を付けなければ)
気を持ち直している間も半分の恋人たちが合わせて本人同士で揉めている。
「じゃあどうするのよ! もういい加減自分の人生を生きなさいよ!」
「困るんです、台本がないと……! 学校でどう過ごせばいいのか」
「今までのパターンで全部乗り切れるでしょ。学校なんて大した変化ないんだから!」
「そんな、梵士くんとのことは?」
「こんなサイコパスの反応読むなんてもうできるワケないでしょう!」
なんだか失礼なことを言われている。
「学校だって、台本の支えがないと自信持って振る舞えないのに……」
依央さんがこんな挙動不審キャラに変わったらみんなビックリするだろう。
「自信満々で生きている人間なんてほとんどいない!」
引きこもりが言うと説得力がある。
ふたりのやりとりを見ていて、ふと気になった。
(一体何がどうして、こんなややこしい関係になったんだろう)
いくら依央さんだって生まれた時から台本を読んでいたはずはない。
「ねえ、依央さんはどうして未与子さんに台本を頼むことにしたの?」
疑問を口に出してみても、返答はなかった。追い詰められた表情でこっちを見て唇をぎこちなく動かすだけである。アドリブが利かない。
「ああ、ごめん。聞く相手を間違えた。未与子さんはどうして依央さんに台本を書いたの?」
方向を変えて質問をし直すと、タオルケットの隙間から不満げな鼻息が漏れた。
「なんでキミにそんなこと教えなくちゃいけないの」
「作品を書くに至った経緯を知りたいと思いまして」
「そう、そうね。教えてあげてもいいわ。……何か飲み物要る?」
なんとなく、この人との接し方がわかってきた気がする。
依央さんと未与子さんの出会い。それは5年ほど昔の出来事だったそうだ。当時依央さんは小学生、未与子さんは高校生とのこと。
「私が公園で寝てたらさ、この子が話しかけて来たんだよね」
「するってえとあれですか。その頃の未与子先生は今みたいに引きこもってはいなかったわけですな」
未与子さんは〝作家先生〟として扱うと機嫌がよくなるようなので、ひたすら下手に出ることにした。
あちこちで紙や本が山積みになっている部屋の様子を見る限り、なにかしらの物書きではあるようだ。そうでもなければ他人に台本を用意するなんてマネを五年も続ける酔狂は務まらないのかもしれない。
「ちょっと、なんで私がひきこもりって決めつけているのよ」
決定事項だと思い込んでいたので気を遣い損ねてしまった。「回れ商売人の口」と祈りながら誤魔化しにかかる。
「いやそんな。こんなマンションにひきこもるなんてなかなかできませんて。ホームレスからたった五年でなんて」
「公園で寝ていたからって、女子高生がホームレスなワケないでしょう。バカなの?」
薄々そんな気がしてはいたけれど、僕は弁に長けるタイプの商売人ではないらしい。それを悟って揉み手をやめた。
「その頃はちゃんと実家に住んでいたし、外出もしていたわよ。ただ不登校だったの」
「あー……色々事情はありますもんね」
「別にいじめられていたとかじゃないから。なんとなく学校が嫌で」
「フォローが難しい」
「学校に行くフリして家を出て、下校時間まで公園で過ごすの。辛かったわ」
「リストラリーマンかよ」
「あの頃に比べたらずっと部屋にいられる今は天国みたい」
「ホレみろ! ひきこもりじゃないか!」
なんなんだこの人は。こっちは学校に通って弁当の販売までしてるっていうのに。
「それである日ベンチで起きたら、この子が隣にいたんだよね」
まずベンチで寝る過程が省略されるくらい公園での生活が染みついていたことについてはもう聞き流しておく。この人にいちいちツッコんでいたら切りがない。
話に登場した依央さん当人は紅茶のカップを手に、アドリブ状態にも関わらずニコニコしていた。どうやら彼女の中でその時のことは良い思い出として残っているらしい。
「あの、えっと……? 原稿が風で飛んでたから集めて、起きるの待ってたの」
急に視線を浴びて挙動不審に戻ってしまった。これを救ったのが未与子さんの台本なら、出会いが良い思い出になるのも頷ける。
「この子、私の小説を読んで号泣していたのよね。思わず起き抜けガッツポーズだわよ。最初で最後の読者に『私もこんな主人公みたいに生きたい』とか言われたら、ホイホイ台本でもなんでも引き受けちゃうわよね」
タオルケットで隠れて表情は見えないけれど嬉しそうに話す。未与子さんにとっても幸せな記憶になっているらしい。
だがその言葉の中に聞き逃せないフレーズがあった。
「……最初で最後の読者?」
「だから、私が書いたものを読んだのはこの子が唯一っていうこと。ウェブ公開はやっていないし、公募にも参加していないから」
「作家じゃないの?」
「誰がそんなことを言ったのよ。決めつけの多い奴ね。作家〝志望〟なだけよ」
「人はそれを〝無職〟と呼ぶ!」
収入を得ているプロ作家だと思っていたから見過ごしていた、あれやこれやの疑問が意識に蘇る。
「なんでこんな良いトコで暮らせんの? このマンション単身向けで誰も一緒には住んでないみたいだし、ひとり暮らしだよね?」
次々湧き出す疑問は気軽な返答で焼き尽くされた。
「そりゃあ暮らしているけれど、このマンションは私の資産よ。成人祝いに一棟貰ったの」
「一室じゃなくて、一棟?」
全人類の憧れ――それは不動産による不労収入。
プレゼントがマンションなんてどんな家庭だと不思議に思ったところで、ピンと来た。
「ああっ、そうか片木! あの片木か!」
それは昔から続くこの町の名士の名前だ。行政や企業が買い上げる以前はこの町でほぼすべての土地を所有していた一族だと、商店街の寄り合いで大人たちが話すのを聞いたことがある。元来は漁業を取り仕切っていた旧時代からの支配者。商店街としても行事の度に出資者としてお世話になっている。
「ぐあぁっ、いつもありがとうございます! でも、世界の不公平を呪います!」
僕の恋人ハーフは無職のひきこもりはとりあえずいいとしても、無限残高を持つというゆるせない人間だった。
「でも好きだ! 0.5だけ!」
「黙れサイコパス」
取り付く島もない。
「あとその主張について思ったのだけれど、作品を通じて好きになったなら〝恋人〟じゃなくて〝ファン〟じゃないの?」
0.5の恋人ではなく、1.0のファン。言われてみればその指摘はもっともだった。
「確かに台本付きとはいえ直接触れ合ってきた依央さんに比べて、僕は未与子さんのことをあまりにも知らない」
「でしょう?」
「だからもっと未与子さんのことを教えてほしい」
「なんでそうなるっ⁉」
「だってバランスを取らないと」
「ああもう……キミって本当にめんどくさいやつなのね」
頭を抱えた未与子さんよりも、依央さんのほうが気になった。
僕が中の人へ興味を向ける流れは依央さんにとってはマズいはずだ。それなのになにやら期待した顔で催促する風にタオルケットを引っ張っている。
(……なんだ、僕はガッカリしてるのか? 素の依央さんにヤキモチ妬かれたって仕方ないってのに)
ひとり首を傾げているうちに、事態に変化が起こった。
「あっ、ちょっとやめてよ」
ぐいぐい引かれたタオルケットがズレ落ち、未与子さんの顔が露わになった。思わず愕然とする。
「ああ、なんてこった……!」
美人だ。鼻筋が通って目は切れ長、言ってみればいかにもセレブのお嬢様らしい。冷徹な印象を受けるのは拒絶されている心象のせいだろうか。ちょっと痩せ過ぎで全体に生気が弱く、眼差しの力は儚く昏い。
依央さん(台本付き)を太陽光とするなら、未与子さんは月影の魅力と言えた。
「チクショウ! こんなキレイなおねえさんなんてズルいぞ! 中の人として内面にだけ注目するには、あまりにも美人過ぎるでしょう! ああ、そうだ! 僕は今! どうしようもなく心惹かれている!」
今度こそ依央さん(台本なし)が慌てた。
「そ、それは浮気なのでは……?」
「反論できません! 外の人と中の人に対する関心も好意も丁度良いバランスでないといけないのに、中の人の外見に惚れてしまったらこれはそう、浮気です!」
恋心の揺れ動きに苦しんでいたら依央さんが近付いて来て、しっかりと抱くようにして腕を取られた。
なにかと思えば後ろへ引っ張り始めた。僕が未与子さんに惹かれていると知って、なんとかしようとしているのだろう。
その必死さがなんだか可愛く思えて、あと腕に当たるやわいものへと気が逸れる。
「……ふぅ。ナイス判断だ依央さん。これでバランスは保たれた」
そう、タオルケットが剥がれた未与子さんをよく見ればおっぱいが見当たらない。比べて依央さんは着やせするタイプだとわかった。
そんなことで魅力を計るのは不純かもしれないが、なにしろ彼女は外の人なので仕方がないのだ。なくちゃいけないとは言わないけど、やっぱりあったほうがいいし。
「依央さん、君は最高の外の人だね」
伝わらないようで動揺から覚めやらぬ依央さんからそっと離れる。
落ち着いた気持ちで向き直れば、未与子さんは褒められ慣れていないようでまたタオルケットを目深に被って壁際まで退避していた。
「アンタたちイチャつくなら他所でやりなさいよ! もう私要らないじゃない!」
「なに言ってんの、未与子さんは当事者だよ。今後も台本を担当していただかないと、僕は恋人を失ってしまう」
僕の恋人――副島依央がフィクションの存在だとしても、僕は諦めるつもりはない。この恋心は絶対に貫く。
隣で依央さん(外)もコクコク頷いて同意している。恋人同士でおかしな話ではあるものの、多数決が成立しているというのに反対派は抵抗をやめようとしなかった。
「ムリよ。これ以上は私……もう書けないから」
膝を抱いて俯く。声は震えが混じって聞こえた。
「書けないって、スランプですか?」
それとも時間的な余裕の話だろうか。今後は自分の創作活動に専念するとか。
もしそうなら無理強いはできない。自分のより良い人生の為に台本を書かせようとする依央さんの要望は身勝手が過ぎるし、それについては僕も同罪だ。
(依央さんが未与子さんの台本を読まないと、僕が好きな副島依央はいなくなる。……でも、その為に誰かを不幸にするわけには……いかないよな)
恋人を失う覚悟を決めなければならない。別れの原因が打ち切りというのはひどく奇妙に思えるけれど、納得できる別れの形なんてそうそうないだろうから。
「スランプと言えば、スランプかな」
迷う素振りを見せたあと、未与子さんは随分と分厚い紙束を渡してきた。それは依央さん用の台本とは違う、物語形式の小説だった。
この場で一度に目を通すのは大変な量で、読ませようとする意図もわからない。しかし未与子さんのことを詳しく知るには良い手段に思える。
「……拝見します」
一体なにを伝えようとしているのか。彼女の心に触れると考えれば自然と神妙な気持ちになって、文字を目で追った。
僕の恋人、みんな大好き副島依央さん。その中の人担当片木未与子さんが僕に読ませようとした小説。それは高校生の男女が織り成す恋物語だった。
「フフフ、わかる。わかるぞ! 未与子さんの心が手に取るようにわかる!」
「だから作品と作者を混同するな」
「このときの作者の気持ちを考えれば、まさに自分が過ごしたかった青春時代を描いてる。未与子さんの今の暮らしを考えると泣ける」
「ブッ飛ばすぞ」
「今のところむしろ依央さんの日常っぽいけど、実は逆でパクったんじゃない?」
「読者と作品を混同するな」
「あれ……コレって」
「…………」
「大変だ。つまんねえ」
感想を述べると、作者がタオルケットを放り棄てて怒り出した。再び美貌が露わになったけれど、それどころじゃない。
「そういうことはちゃんと読んでから言いなさいよね! 最後まで読まないと良さはわからないんだから!」
言う通りページはまだまだ残っている。しかしもう一枚だって捲る気力がない。このまま最後まで付き合うなんて拷問だ。
「だってコレ、ホントにつまらないよ? つい口から酷評がこぼれ出るつまらなさだよ。妥当な感想だし」
未与子さんは「ぐぬぬ」と唸って黙った。ただでさえ陰気な目つきで睨まれると呪われそうで怯んでしまう。
それでも正直な気持ちは変えられない。正直でいようと己を律しなくても率直に言わされてしまうつまらなさだった。むしろ「作家は諦めろ」とまでは言わなかった優しさを逆に評価してもらいたい。
青白い肌を怒りで血色よくしている作者の隣で、なぜか依央さんまで不服そうな顔をしている。
そう言えば依央さんは未与子さんの小説を読んで泣いた経験があるのだった。
「依央さんは一体どこに感動したの? だってコレ主人公の女の子が明るく楽しく暮らしてるだけで、なんにも起きないよ? そりゃ誰だって『こんな風に生きたい』って思うよ。依央さんが五年前未与子さんに言ったのって、そういうコト?」
「えっと……女の子向けのお話だから……」
男の僕には共感できない、と言いたいらしい。
「いやいやいや! 読者層の問題にあらず! 僕だって少女漫画とかは読んだことあるって。小さい頃は近所のおねえさんに面倒見てもらってたし。そりゃもうすごい内容だった。次々現れるライバルが『そこまでやっちゃうのはまずくない?』っていうような自分の将来を犠牲にするような喧嘩や嫌がらせをビシバシ仕掛けてくる地獄のサバイバルだったよ」
対して未与子さんの小説は絵本より平和そのものだ。みんな仲良しで想い人とは「好きです」「僕も」と簡単に結ばれ、衝突することも行き違うこともなく「ウフフ」「アハハ」と健やかに過ごす。徹頭徹尾紆余曲折がない。なんだコレ。
「僕らの現状に比べたらシンプルで羨ましいねェ! 〝事実は小説よりも奇なり〟とか言うけど、進んで奇がないほうに飛び込んでたらなんの面白みもないでしょうが! こりゃ作家なんてムリだ! マンション貰えてよかったなァ⁉」
温まってきて一度は抑えた本音が飛び出してしまった。
未与子さんは涙目ながら言い返してくる。
「だって明るいお話のほうが楽しいでしょう? どうして人の悪意にまみれた神経を擦り減らす話を読まなくちゃいけないのよ」
「だったらもういっそのこと一行目に『めでたしめでたし』でいいよねェ?」
「エピソードもなしに、そんなのいいわけないでしょう!」
「この内容ならおんなじだおんなじ! ないんだよエピソードが! 友達とも恋人とも仲良くなってくけど、具体的な触れ合いはなくて回想みたいに済まされてる」
つまらないと感じた主な理由はそこにあった。人物を掴む出来事が薄くて淡々としてしまっている。
台本の場合は具体的な内容を依央さんが持ってくるので問題ないのかもしれない。そもそも普通は自分の生活にエンターテイメントを求めない。
「これは〝理想の青春〟で、それは依央さんにとってだけじゃない。未与子さんにとってもそうなんだ。でも細かいところが想像できてない」
この小説にはデートという過程がなくて、キスシーンという結果だけがある。依央さんがデートを嫌がった理由も今ならわかる。台本がなかったからだ。
「だから僕がここへ呼ばれた! 依央さんが僕を未与子さんに合わせたのはネタ晴らしして台本を演じていた後ろめたさを解消しようとしたんじゃない。デートの台本を書かせる為だ。つまり僕が一旦未与子さんとデートして、それを参考にした台本で僕と依央さんがデートする。そういうことでしょうよ」
推測をまとめると、依央さんが小さく拍手しながらコクコク頷いていた。未与子さんは壁際でグッタリしている。
「だから、その察しの良さはなんなのよ。……確かにこの子からそういう提案はされたわ。キミからも言ってやってよ。そんなバカなことできないって」
僕と依央さんは告白をして、告白をされた関係だ。それ以外の誰かとデートをするなんて、普通に考えればおかしなことだろう。
でも、未与子さんだけは違う。彼女が副島依央の中の人である以上、それは僕にとって望むところだ。
「いいえ、よろしくお願いします」
「ナンデっ!?」
即答して全霊で頭を下げると素っ頓狂な声が聞こえたので腰の角度を直角から戻す。
「決まってるじゃないですか。そうしないと僕の好きな〝みんな大好き副島さん〟とデートできないからですよ。この依央さん(外)にデートの台本を渡してもらわないと」
「いや、おかしいでしょう」
「明日の予定は空いてますよね? 引きこもりなんだし」
「キミ、時々ブッ飛ばすわよ」
「それでデートシーンが書けるようになるならいいじゃないですか」
「うるさい。これが私の作風よ」
「そこが一番ダメだと思う」
何を言っても態度は頑なで、どうにも折れてくれそうにない。
(どうしよう、このままじゃデートができない……)
暗礁に乗り上げて困っていると、依央さんが動いた。
「あの……。ね……?」
未与子さんに縋りつくようにして寄り添い、目で訴えかける。言葉にはなってはいないけれど、それでも充分だった。
あんな風に迫られたらどんな望みでも叶えてあげたくなってしまう。僕なら店を畳んでナコアの従業員に身をやつし商店街を滅ぼす側に回ってもいい。
「……ああ、もう! わかったわよ! デートすればいいんでしょ!」
案の定未与子さんは折れた。さすが依央さん、最高の外の人だ。
「じゃあ行くわよ」
説得が成功したかと思ったら、未与子さんはいきなり立ち上がった。
「こんな面倒なこと、明日まで取っておけない。さっさと終わらせたいの」
そう言い残して部屋を出て、そのまま玄関へ向かう。それを依央さんが追いかけた。
「えっ、ちょっ……まさかそのまま?」
未与子さんの服は襟元がヨレヨレのシャツにハーフパンツといういかにも引きこもりらしいものだ。デートの相手がこれで現れたらかなりガッカリすると思う。
「別にこれでいいわよ。だってアイツ、私の見た目に興味はないでしょう?」
「ええまあ、なんというか……ハイ。申し訳ないですがその通りですね」
ついて行って返事をすると、振り向きざまに睨まれた。整った顔立ちから放たれる眼光は殺気すら含んでいるようで怖い。
「でも! あの! 臨場感とか大切です!」
依央さんは懸命に訴えている。その調子でせめてブラジャーくらいは付けさせてほしいと願いながら壁を見つめる。
「ああ、そっか。ブラジャーはしたほうがいいか」
あっけらかんとした声が聞こえた。
(なんなんだ……これがホントに副島依央の中の人なのか?)
こんな人とデートしたところで仲が進展したことにできるだろうか。不安になってきた。
デートである。そして今回のデートには三者三様の目的がある。
依央さんは僕と未与子さんがデートすることで自分のデート台本が出来上がることを期待している。
未与子さんはもう少しマシな小説を書けるように(強要されて)デートを体験する。
僕は未与子さんとデートすることで架空の副島依央とデートする機会を期待している。ついでに、架空の副島依央を別角度から感じられる。
(そう思ってたけど……あんなじゃなぁ……)
未与子さんは僕の知っている架空の副島依央とは程遠い。重なる部分が少しもない。
(『作者と作品を混同するな』って、未与子さんが言ったのを証明するだけなのかもしれない……。いや、それは最初からその通りなんだろうけど。僕が思い込みたかっただけで)
だってそうじゃないと、僕の恋人は完全にフィクションになってしまう。0.5ずつでもいいから存在してほしかった。
(今度こそ、いよいよ、失恋か……)
幻を追ってたどり着いた、これ以上の先はない断崖。
未与子さんの支度を玄関で待つ間にどんどん気持ちが落ち込んでいく。
「あの、できたよ……?」
声を聞いて振り向き依央さんの隣に立つ人物を見れば、「誰だよ」と言いたくなった。
淡い水色のグラデーションのシンプルなワンピースで髪を整え、軽く化粧もしているようだ。大して時間もかかっていないのにこれだけ印象が変わってしまう。素材の良さを改めて感じた。生気のない瞳も物憂げで色っぽい。
「……なによ」
こんなマトモな恰好は絶対に久しぶりだろうから、未与子さんは居心地悪そうに身をよじった。薄い服の裾と長い髪の毛先が揺れる。こうして見るとスレンダーも非常にイイ。
「ああっ、マズい。美人なうえにエロさが加わっている! このままじゃ0.5以上の心を持っていかれる!」
苦悶すると、依央さんが慌てて駆け寄ってきた。両手でぐっと僕の胸を抑え始める。
「こ、困ります! デートはしてもらわないと困るけど、そういうのは困ります!」
なにかと思えばそうやって心を奪わせまいとしているつもりらしい。
「そんなんじゃダメだ。おっぱいを持ってこい! 急がないと間に合わなくなる!」
間近な涙目に訴えると、即座に体重をかけて押し付けてきた。
(ああ……やわい)
間に服があることなんて思えないほど弾力も温もりも伝わってくる。
緊急事態とはいえとんでもないことを頼んだのに、依央さんは迷う素振りをまったく見せなかった。目の前にある顔は真っ赤なのに、身体をグイグイと擦り寄せてくる。
(もしかして依央さんって、台本だけじゃなくって〝命令〟にも従うのかな?)
目的は行動に自信を持つことで、台本はその手段に過ぎない。
(例えばそれがどんなえっちな命令でも……いや、ダメだな)
命令で言うことを聞かせて満足できるなら苦労はしない。僕が好きなみんな大好き副島さんじゃないと意味がないからこうしてややこしいことになっている。
(その為には、このデートを成功させないといけないんだよな……。よし)
気持ちが落ち着いたところで依央さんから離れ、改めて未与子さんを見つめる。
「……うわぁ、僕こんな人とデートしなきゃいけないのかぁ」
カップルバランスが最悪だ。依央さんとならいかに格差があっても同じ学校の生徒という枠組みに助けられるものの、こんな大人のおねえさんと並んでもデートっぽくなるのか心配になる。
「なに、文句あるの?」
気後れする態度が誤解を招いてしまった。
「そうじゃなくって――ああ、文句はあるんですけど」
「言ってみなさいよ」
「だって未与子さん、キレイ過ぎるでしょ? 依央さんはカワイイタイプじゃないですか。ホラご覧なさい、こんなにもカワイイ」
照れている。カワイイ。
「アンタ、そういうことよく平気で言えるわよね……」
「事実だし、自慢したいからです。未与子さんだって僕が今まで見たことある人の中で一番の美人ですよ。本当なら中の人をやらせておくのは勿体ないくらい」
続けて褒めると未与子さんはたじろいだ。先に照れて後ろに隠れていた依央さんが押されてよろめく。
「ま、まあ? これは私がデートを体験する形式的な試みなんだから、アンタの心境はどうでもいいのよ。依央の制服借りるのは悲しくなるから我慢しなさい。……さっさと行くわよ」
未与子さんが僕の横を通り過ぎて玄関へ回る。薄っぺらいサンダルを手に取って、後ろから依央さんの「むぅー」という不満そうな鳴き声を聞くと戸棚から出したヒールの高い靴を取り直して足を通す。
「はぁ……なにやってんだろ、私」
そう言い残し、ドアを開けて外に出ていった。
これは意外だった。引きこもりなのでてっきり抵抗があるとばかり思っていたのに、外出が平気らしい。学校と同じく「なんとなく嫌」なだけなのかもしれない。
ともかくあとを追わなければ。
「それじゃ、行ってきます」
留守番の依央さんを振り返って告げると、ぎこちないながら笑顔と手振りが返ってきた。
0.5に見送られ0.5とのデートに出かける。未与子さんと同じく「なにやってんだろう」という想いがなくはない。
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