第3話 盗賊団
現在、俺は南下して自国を出ていた。
「そういえば、アリミア」
「何ですか?」
「レプリカって何だ?」
レプリカとは俺が以前というか、つい三日前に使ったものだった。
「ああ、それについてですか…。
コホン、レプリカというのは簡単に言えば私の契約した剣の模倣品のことです。
勿論、私が契約した際に付与された能力もしっかりありますが、剣の性能は同等ですが付与された能力は劣化版となります。
あえて言うなら劣化聖剣アリミア・ハートみたいなものです。
これは私の魔力と主人の魔力が底つきない限り無尽蔵に作り出すことが可能です。
主人だってレプリカを取り出すことが出来ます」
「そうなのか…」
俺は少しイメージをすると、聖剣アリミア・ハートのレプリカが作り出される。
これは便利だ。
戦闘に対して準備が必要なくなる。
「そういえば、オリジナルの説明と仮契約の方の剣を預けていませんでしたね」
「そういえばそうだな」
アリミアはこの前の初契約の時に使った剣を取り出すと鞘にしまって、俺に渡す。
「これはオリジナルです」
「オリジナル?」
「はい、これはいわば私の生命線です。
契約を交わした本物の剣です。
本来、契約を交わした剣とは離れることができません。
しかし、重複契約の場合は媒体とする剣が複数存在するので、離れることが出来ます。
要するに、剣と剣の間に私というそれぞれ個人の繋がりができているのです。
勿論、私が剣になることも可能です。
このように」
そう言ってアリミアは一歩下がるとアリミアの姿が剣の変わる。
そこには二日前とは違う見た目のした剣が存在した。
赤黒い剣は綺麗な青の剣に変わっていた。
『因みに、見た目は呪いが解けた際にこうなりましたから私のせいじゃありませんよ』
直接、頭の中に語りかけてくるような声が聞こえる。
「これは…」
『はい、これは本体同士を利用した思念伝達です。
因みにこの姿でもある程度の動きならできますよ』
そう言って、アリミアもとい剣は縦横無尽に動き回る。
そうして、疲れたのか動きが止まりアリミアは少女の姿に戻った。
「このように、主人に私を持たせて戦うことが可能です。
あと、絶対に仮契約の剣とはいえでも壊さないでくださいね。
その状態でこっちも死んだら、本当に死んじゃいますから」
なるほど、本体は強かったりする代わりに魔剣そのものの命をかけることになるのか…。
「そういえば、お前の使ってる剣は?」
「それもレプリカです。
とは言っても私が本体だから付与をすれば結局本体と同レベルの能力を使えるんだけどね」
ふーん、そうか。
「そういえば、元から魔剣とかとは別に能力が付与されている剣と契約したらどうなるんだ?」
「それもう、実際試したよ。
結果は重複可能…寧ろ能力強化にまでなってる」
あれ、試したことあったかな?
因みに魔剣に聖剣として契約できるのかと言うのだが、それはダメだった。
「はぁ、今の私の本体となった剣は呪剣なんでしょ?
それの呪剣としての能力だよ」
あ、そういえば呪剣にも能力があるんだっけ。
確か呪剣の能力は【魂喰らい】別名【ソウルイーター】と言って、死者の魂や殺した人間の魂を喰らい、強くなる能力だった筈だ。
「やっと、思い出した?
それが強化されてアンデットも喰うようになったの。
更に魂の捕縛も出来るようになった。
聖剣とは何なのかと言う能力だね」
俺はそれを聞いて苦笑いをする中でふと気になったことがあった。
「なぁ、アリミア…」
「主人、少し警戒した下さい。
これは魔物かと思いましたが、どうやら盗賊のようです」
俺も警戒をするが全く分からない。
「よく分かるな」
「まぁ、私の能力は【裂傷】以外攻撃向きじゃありませんからね。
その代わりサポートに関してはかなり大きいですよ」
「あれ、他にも能力を有しているのか?」
「能力というよりかは目覚めかかってるものですね」
よく分からん。
とりあえず、俺も聖剣の方のレプリカを取り出して構える。
「来ます!
気をつけてください」
アリミアの言葉と同時に俺は動き出す。
アリミアはもう既に一人倒してるようだ。
ていうか、そもそもの戦闘能力は低いから倒せるかな?
そんな心配しながらも俺は短剣を持った男と相対する。
俺は剣を振るう。
男は短剣で応戦を始める…筈だった。
ガキンッ
それだけで短剣は折れてしまう。
そして、俺の二振り目で確実に仕留める。
「ふぅ、我ながらとんでもない剣を作ったものだな」
そう言って俺はレプリカを消す。
そういえば、仮契約の剣はどうしよう…。
今のところ腰にかけているけどこれじゃあ危ないよな…。
「主人、今終わりました」
「そうか、今回襲って来た奴らの魂の捕縛はできるか?」
「一応、可能ですけど…」
「捕縛したやつからアジトの場所を聞き出してくれ。
少しでも名の知れた盗賊団とかだったら、潰しておけば金が入る」
「わかりました。
聞き終えた後は喰らっておきます」
さて、アリミアが大変な仕事をやってくれている間に俺は仮契約の剣について考えなくてはならない。
そもそも、この剣というのは鋼で作った中で極上の逸品であって、やはり素材がいい剣には劣ってしまう。
故に聖剣の方と比べてとても折れやすい。
ここは何か必要だな。
高級品の異空袋を買うか、それともそう言った魔法を覚えるかだな。
でも、俺は魔法については何も知らない。
才能がどうたらこうたらって話があるからひょっとしたら使えないかも知れない。
「主人、終わりましたよ。
って、どうかしました?」
「いや、そういえば魔法について俺は何も知らないなと思って…」
俺がそう言うと一瞬微妙な表情をしたアリミアだったが、少し考えた後に答えを得たのか、少し納得気味に頷いた。
「なるほど、そういえば意識してませんもんね。
実際、主人はいろんなところで魔法…いや正確には魔法紛いを使用してるんです」
「魔法紛い?」
「はい、例えば鍛治をして剣を打った時に不思議なことを言われませんでした?」
「魔剣の紛い物って言われた」
「はい、それです。
主人は元々の魔力が高いせいか、時折能力とは呼べませんがそれに似たものの付与がされている武器があるんです。
例えば私と仮契約をしたその剣は硬化みたいなものが付与されいます。
まぁ、そのようにして主人は魔法紛いを使ってるわけですが、使いたいのですか?
魔法を」
俺はコクリと頷く。
流石に俺は戦闘の役に立っていない気がする。
「そうですね〜。
言ってしまえば特殊能力の一種なんですけど一つだけありますよ。
主人専用の魔法…正確には能力の副産物なんですよ」
副産物?
俺の能力って確か右手の契約を聖剣とかのやつか…。
「まぁ、主人が想像している魔法とは少し違うかな?
その魔法は【武具収納魔法】ですから」
「それだ!」
「え、それが良かったんですか?
私としては戦闘で役立つ魔法が欲しいのかと…」
いや、たしかにそれも欲しいが正直この先魔剣やら聖剣やらを増やす度に荷物が増える心配が無くなるのはありがたい。
「まぁ、他の魔法を教えろと言われても知りませんから教えることが出来ませんけど…」
アリミアにも知らないことってあったんだな。
とりあえず、盗賊団のアジトに着くまでの間に俺は何とか【武具収納魔法】の習得がかなった。
「これで何の心配も憂もない。
とりあえず、盗賊退治でもしますか」
「では、行きましょうか」
俺達は盗賊達のアジトとなっている洞穴の前まで来る。見張りの男が俺達に気付いたようで仲間を呼びに行く。
「今だ!」
俺たち二人は思いっきり地面を蹴り、走り出す。
やはり、アリミアと俺とでは身体能力にかなりの差があり、アリミアが先に辿り着き剣を振るい男を切る。
その際に剣が一瞬赤く脈打つ。
どうやら魂を喰らう際は一瞬だけ赤くなるようだ。
「アリミア、そのまま敵の殲滅をして引きつけてくれ。
予想通りならあっちの方にあるはずだ」
その言葉でアリミアは分かったのか頷いて、敵がより多い場所まで走って戦闘を始める。
俺は敵の少ない方面に走り出す。
その際に出会った敵は仮の魔剣のレプリカで首を切り、殺していく。
俺はいくつかの部屋を漁り、最後の部屋に辿り着く。
ガタンッ
鍵が掛かっていたので多少乱暴にドアを開ける。
「ここは…」
両脇に二つの鉄格子があり、その中には男女に分けられた人が入っていた。
一応、衛生管理を行っているようで酷い臭いなどはしないが、その場の誰もが俺など気にも止めない程にまで絶望していた。
「どうやら、当たりのようだな」
実は俺が探していたのはこの部屋である。
この部屋はおそらくこの盗賊団が襲った人達だろう。
そして、この場にいる人たちはおそらく奴隷予定の人達なのだろう。
この部屋を探していた理由だが、この盗賊団の規模を知るためである。
もし、売りに出したばかりだったら運がないが、このように結構の人が捕らわれているのなら、ある程度の情報が得られる。
例えば、捕らわれている人の風貌。
貴族や騎士、傭兵などが捕らわれているのならかなりの規模または戦闘能力を有している危険な盗賊とも言える。
その場合、リーダーの首だけでも持ち帰れば手配書に載ってる可能性もあり、お金が稼げる。
そして、もう一つあり…
「ほう、あっちに陽動でこちらで捕らわれた人を解放するか…。
いい策だな」
俺が後ろを向くとそこには一人の男が立っていた。
俺の本能が言っているこいつは強いと…。
チッ、こういう奴がたまにいるから先に殺してはいけない人を助けた後に洞穴の入り口から火を起こそうと思っていたのに…。
俺は鍛治師だ。
勝てる見込みは無い。
でも、勝たなくては夢を果たせない。
「見逃してくれそうにも無いな」
「当たり前だろ。
最高の人質になり得る人材がここにいるのにどうして逃すんだ?」
俺は魔剣を取り出して構える。
「そうか、ならその余裕を無くしてやる!」
俺は男に向かって切り掛かる。
カンッ
と甲高い音が鳴り響く。
男は俺の剣を軽々と受け止める。
「こんな素人の動きでどう俺の余裕を無くすんだ?」
「いや、そのなまくらでどうやって防ぎ続けるんだ?」
すぐに剣を振り直す。
それにより、何度も剣と剣がぶつかり合う。
ガキンッ
そして、ついに男の剣が折れた。
「チッ、なるほど…。
ならば俺の本気を見せてやろう」
そう言うと男のすぐ近くに黒い穴ができる。
男はそこに手を突っ込み一本の剣を取り出す。
「お前のような凡人が見ることがない魔剣を見せてやろう」
そう言って男は剣を振るう。
瞬間、黒い一撃が俺を覆う。
「があっ!」
俺は僅かに吹き飛ばされて壁にぶつかる。
魔剣のレプリカは折れており、男の危険性が高いことが分かる。
「まさか、剣を一本折られるとは思わなかったな。
確かにお前は油断できない存在だ」
俺は何とか立ち上がり余裕そうな男を睨む。
そして、再び魔剣のレプリカを作る。
そして、もう一回突撃する。
カンッカンッ
カンッ
ガキンッ
一本また折れる。
でも、もう一度…。
そう考えて俺はもう一本魔剣のレプリカを作る。
「いい加減諦めたらどうだ。
魔導師が剣士の真似事も見苦しい」
その言葉ともに男は剣を振るい、また一本折れる。
俺はもう一度…。
もう一度
もう一度…もう一度…もう一度…もう一度…もう一度
一体、何回繰り返したのだろう。
「もういい。
人質としてお前を生かそうと考えていたが、もう死ね」
俺はまだ死ねない。
俺は思いっきり踏み込んで剣を振り男の剣とぶつかる。
ガキンッ
また一本…。
俺は次は取り出さない…。
どうやら、成功したようだ。
「ふん、とうとうと魔力が切れたようだな。
なら、潔く死ね!」
ガキンッ!
男が剣を振り上げた瞬間、男の持っていた魔剣が折れる。
「何故だ!
お前、何をした!」
男は動揺が隠せないようで声を荒げる。
「あんたは考えてなかったんだよ。
俺も魔剣を使っている可能性をな…」
俺は再び魔剣を作り出して男に向かって走り出す。
「来るな、来るな!」
男は再び黒い穴から剣を取り出して俺に向かって振るう。
「そういえば、一つお礼を言わなきゃな…」
ガキンッ
そんな音が鳴り、男の剣が折れる。
「お前のおかげで魔力の使い方が少し分かったよ」
俺は剣を振るう。
しかし、男はバランスを崩して転び、胸の辺りにかすり傷が付く。
瞬間、急激に傷が広がり、胸の辺りから裂け始めて男は死に至った。
俺が今行ったのは強化魔法である。
正確には魔剣に魔力を流して魔剣そのものの能力を引き上げたのだ。
相手の魔剣を折った理由もそれと同じだが、魔剣は人とは違い、魔力抵抗が高い。
故に、それなりの苦労はした。
何度も打ち合い、少しずつ傷を多数作っていく。
そうして、やっとの思いで折るに至るまでの魔力と傷を刻むことが出来た。
「しかし、まぁこれをどうするかね」
目の前には大量に散乱した物の数々があり、言ってしまえば金銀財宝と言った高価な物が沢山散らばっている。
「主人、無事ですか!」
そう、困っているところにアリミアが入ってくる。
「おう、何とかな」
「すいません。
どうやら潜伏していた奴を見逃していたようです。
魔剣の気配がしてきたのですが…」
アリミアが必死に頭を下げており、こちらの方が申し訳なくなる。
「魔剣の気配…。
そういえば、こいつはレプリカを使っていなかったけど、どうしてだ?」
そういえば、こいつは一度も魔剣のレプリカの使用をしていなかった。
「それはですね、そもそも魔剣や聖剣というのは精神体が混ざり始めて魔剣や聖剣となります。
しかし、初めから私のように姿の顕現やレプリカの生成が可能ではありません。
私達、精神体が魔剣と最高状態にまで同調させなくてはならない。
でも、主人の能力はその過程をすっ飛ばして、最高状態での同調の契約が出来ます」
なるほど、通りで…。
「そういえば、さっきから聞きたかったんだが魔剣と聖剣の違いって何だ?」
「それについてですか…。
これは少し難しいのですが…」
アリミアにしては珍しく歯切れが悪いな。
いつも堂々と説明してくれるのに…。
「んーと、魔具の類は能力の他にも魔力を吸収して、何らかのアクションを起こすことができるの。
そして、聖具は説明しにくいんだけど、元となった精神体の能力の顕現なんだよね」
うん、サッパリという程ではないが分からん。
何となくは分かる。
説明しろと言われたら難しいけど…。
「とりあえず、事後処理でもしますか」
「そうしましょう」
さてと、戦うことと比べたら楽だが、大変な仕事だ。
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