第42話
「宇宙遊泳は最高だったな……あはは」
この世界の宇宙には空気があるらしく、呼吸に困ることは無かったので生身の体で宇宙遊泳してみたところ、今居る場所が宇宙ステーションらしき所ということが分かった。
ダンジョン塔へ行こうとしたが見えない壁で覆われていて、攻撃魔法などを試して見えない壁を壊してみようと頑張ってみたが効果無しなので諦めて、それじゃあ、地上へ降りようと頑張ってみたがいつまで経っても星に近づく様子は無く、諦めて宇宙ステーションへと帰ってきた。
「さて、どうしましょうかアイさん」
「ふむ……私とセックs」
アイが何かを言い終わる前に手で口を塞ぎました。
「エスツーは何かない?」
「そうですね。ワタシとエッチしながらここで暮らしましょう」
「……うん。それはまたの機会にしておこうかな」
アイさん、目が怖いよ。
「なぁ、なせるのアイテムボックスで私たちを地上に送れないか?」
「はっ!? なるほど! その手があったか! ライベルマイトさんを呼び出せたんだからその逆も出来るはず!」
早速、アイの手を握ってアイテムボックスに入れようとしたがバチンッと弾かれて二人一緒に尻もちをついてしまった。
「あいたっ!?」
「あうちっ!?」
もう一度試してみたがやはり弾かれてしまい、ならばエスツーはどうだと試してみたがこれも失敗。
なら腕だけなら通れる僕の体を押し込んでみようとしたがこれも弾かれて失敗。
こなくそっとベッドに置かれていた枕を入れるとすんなり通って行った。
「アイテム関係は問題無いのになぁ」
ライベルマイトさんの時はすんなり出来たのに何でだろ?
「ワタシもアナタたちもここからは出られませんよ?」
「……えーっと、エスツーは何を知っているんだ?」
「ワタシたちが隔離幽閉されたことと、この場所に限り自由を許されたこと、ワタシの知っていることはそれだけです」
「そうか……《ステータス》」
名前: エスツー(S-22)
種族: 人
年齢: 0歳
レベル: 1
来歴
王歴1020年、ダンジョンシステムによってダンジョンの清掃員として生を受ける。
皇暦2000年、ダンジョンシステムのエラーにより暴走。
魔歴505年、魔王によるダンジョンシステムの書き換えにより対人形精魂収集生命体へと存在を書き換えられ美少女を性的な目で見始める。(美少年も可)
王歴155年、ダンジョンシステム一部正常化により、惑星外宇宙ステーションへ幽閉。
王歴218年、八肝なせるにより人化、なせると子作りしたい欲求が高まる。
「なせる、何か分かったか?」
「ん、まぁ大体。エスツー、子供はまだ早いと思うけどそのうちにね」
「本当か! 今すぐエッチしよう! なせるの子供が欲しい!」
「ふんっ!」
「ぶへっ!?」
アイさんのロケットパンチが僕の顔面にクリーンヒット。
今のはかなり痛かった。
「それで何が分かったんだ?」
「エスツーはダンジョンのシステムによって生み出されたダンジョンの清掃員ってことと、ダンジョンのシステムエラーと魔王によるシステムの書き換えによって、あの醜い触手にされたことと、僕との子供が欲しいってことぐらいかな」
「ほほう。そうか、そうか。だが私の方が先になせるの子供を生むからな!」
「順番はどうでもいい、なせるとエッチして子供が出来ればそれで幸せ」
「くっ、何故か負けた気分に……それでもやっぱり初めてが良い!」
「子作りの時期についてはみんなとよく話し合ってからということで」
とりあえず分かったことは魔王がダンジョンシステムを書き換えたこととダンジョンシステムが正常化しつつあることだな。
つまりダンジョンシステムの正常化を手伝って完璧に治せれば帰れるようになるということかな? どうなんだろう?
「うーん、よく分からないが、とにかくダンジョンシステムというものに接触しないことにはどうにも出来そうにないな……」
ロボっぽくなったアイならアクセス出来そうな感じではあるけど、ハッキングとかの知識とか無さそうだもんなぁ……
「何だなせる? 私の顔をじっと見て、美少女に生まれ変わった私の顔がそんなに気になるのか? チューでもするか? ムチュゥゥゥ」
口を尖らせて迫って来る銀髪美少女。
こういう、アニメやゲームでエロいことをしてくる残念系美少女って主人公からは邪険に扱われることが多いんだよなぁ……
って、あぁ、そうか。
残念系美少女を邪険に扱う理由が分かったぞ。
真面目に物事を考えている時に邪魔をしてくるから段々と扱いがおざなりになっていくんだな。
うんうん、なるほど、なるほど。
ならばするべきことはただ一つ。
「アイ! 好きだ! 愛してる!」
「うぇ!? ど、どどどうしたんだ急に!? いつもなら、はいはいっとか適当な返事を返すところだろ!?」
ふっ、効いてる効いてる。
「好きだ。好きだぞアイ。そんなに可愛くて、愛らしいアイに一つ頼みがあるんだ」
「な、なんだ?」
「ダンジョンシステムとやらをハッキングしてシステムを正常に戻してくれ。それが出来たらアイの望むままに僕の体を好きにしてくれていいよ」
「なっ!? ん……だと? ハッキングって、あのハッキングのことか? スーパーハカーとかウィザード級とかいう奴らがカタカタカタ、ターンッ! っとキーボードを華麗に叩く、中二病患者なら一度は夢想する、あの?」
アイのやつ、どこでそんな知識を手に入れたのやら……
「微妙に間違ってはいるが、おおむねそんなイメージで大丈夫だ。出来そうか?」
「この体を端末に繋げば出来るんじゃないか?」
おぉ、言ってみるものだ。
これでダンジョンシステムを正常化さえ出来ればあとは地上へと戻るだけだな。
「ここの情報端末はスタンドアローンなので、この宇宙ステーション内のネットワークにしかアクセス出来ませんよ」
「え?」
「ここからではダンジョンシステムにアクセスは出来ません」
「何だって……?」
「ですからここからではダンジョン内監視システムにアクセスしてエロトラップに引っかかった美少女冒険者の痴態を覗き見ることは出来ません。悔しいです!」
……何故、エスツーが隔離されたのか分かっちゃった気がする。
「万策尽きたか……」
もう、どうすることも出来ないのか?
いや、まだ何かあるはずだ! 考えろ、考えるんだ!
「そもそもダンジョンシステムってどんなものなんだ?」
「ダンジョンの運営を円滑に行えるように設計されたAI、オールラウンドインテリジェンス、ダンジョンシステムは基本的にネットワーク内で活動していますがバックアップとして生体端末型の肉体を持っています」
ほほう、何を言っているのか理解するのにちょっとだけ時間が掛かったが、つまり肉体があるってことだよね。
ということはその生体端末さんをアイテムボックスから取り出せればなんとかなるかもしれないな。
「ダメでもともと、いっちょやってみっか」
虹色の波紋に手を突っ込んで、目当ての物を掴み取る。
「ん? 何か柔らかな感触が……この柔らかな感触を僕は知っている」
この柔らかく、ぷりんっとした弾力。
そうだ、間違い無くこの柔らかさは、おっぱ――
「ひぎぃいいいいいい!? 噛まれたッ!?」
慌てて手を引き抜くと、紫色が基調の玉虫色をしたおかっぱ頭の全裸童女がガジガジと涙目で僕の腕に噛り付いていた。
「お前ぇ……! お前がぁ……! ボクの、む、胸を鷲掴みしたのか! ギィィィッ! 勇者だとか不死だとか知ったこっちゃない! お前は100回殺す! 必ず殺す! 慈悲は無いと思え!」
ひぇぇ、激おこぷんぷん丸じゃないですか!?
いや、この場合はカムチャッカファイナルドリームだったっけ?
ともかく100回も殺されるのは勘弁なので素直に謝ろう。
「ごめんなさい! 代わりに僕の胸を好きなだけ揉んでいいです!」
「ばかぁあああ! お前の胸なんて誰が揉むか! 100回じゃなくて100万回死ねぇえええ!」
怒り狂った童女の全身が発光し出して、これはマズイと思った瞬間にはもう手遅れだった。
ジュッ! っという嫌な音と熱を感じた。
痛みを感じるよりも先に目の前が真っ暗になっていた。
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