第23話
ドラゴンに
「ドラゴンじゃ! ドラゴンが三頭、人を乗せてやってきたぞ!」
「おぉ! よく見れば勇者様だ! しかし何故女装しておられるのか……?」
「勇者様じゃ! ほんに勇者様じゃ!」
「オォゥッ! 勇者様! 俺と結婚してくれー!」
「おら、ドラゴンなんざ初めて見ただ、それに女勇者様とは……すげぇお方だ」
「勇者様ー! こっち向いてー! きゃっ! 目が合ったわ! 今、勇者様と目が合ったわ!」
「どらごん! どらごん! がおー!」
「勇者だかなんだか知らねぇがあんな格好してるんだ、ドラゴンの一頭や二頭オレだって狩ってやらぁ!」
「勇者様の女装姿も可愛いけど隣に居る女子は誰だろう? もしかして恋人!? 百合なの!? 百合がご趣味なの!?」
ドラゴンを捕まえてから一週間ほどライベルマイトさんの所でお世話になり、ギルドもお金の用意が終わっているだろうと捕まえた3匹のドラゴン、厳密にはドラゴンではないが翼が付いたヤモリたちを引き連れて村に戻ってきたらこの騒ぎである。
というかこの格好のせいであらぬ誤解を招いているんですが……
一週間ではレベルもさほど上げられず、ひかりが事ある
「夜の一人鍛錬は邪魔しなかったでしょ?」
「っ!? 見てたの!?」
「見てないわ。そういうのって見ない方が良いんでしょ?」
「うぅ、ありがとうございます……」
恥かしいいいいいい!
でも、しょうがないじゃないかっ!
お風呂に入った後は色々なバリエーションの女装をさせられるし、ひかりには隙あらばと、ちょっかい掛けられるしで僕だって男なんだからムラムラだってそりゃしますよ!
結局、この不思議の国のアリスみたいなフッリフリのワンピースのまま帰ってくることになってしまったのは本当に
そのお詫び(女装させてしまった事への)にと装備していた幸運アップと汚れ防止と敵感知の指輪を貰えたのでそれはまぁ、良かったと思う。
マジックバッグはさすがに
無理して行く気は無いので今の所はスルーするつもりだが、ひかりの気分次第で行くことになるかもしれない。
そして最後に妖刀だが、これが一番の問題だ。
妖刀が妖刀らしさを現して僕以外の人に渡しても一定距離を離れると自動的に僕に戻ってくるという呪いなのか何なのかわからない効果を発揮してライベルマイトさんに返せなくなってしまった。
ライベルマイトさんは笑いながら差し上げますとは言っていたけれどその表情からは「もう、どうしようもないし」みたいな諦めたような気持ちを読み取れてしまった。
ひかりは「便利だから良いじゃない」とか言うけど、一応は妖刀なんだから加護やら特殊能力の無い一般の人の手に触れたら発狂死するっていうことをもうちょっと考えてほしいな。
解呪出来ないかとひかりに聞いてみたけど「鉄屑にしても良いなら出来るわよ」とのことなのでそれは何だか勿体無いのでやめておいた。
実害が出始めるようならその時はしょうがないので潔く諦めようと思う。
という事で僕以外の人には開けられない刀袋を貰ってそれに入れて持ち歩いている。
ちなみに刀袋とは言ってはいるがメイドさんの誰かが仕立てた細長い布袋である。
それに僕以外の人には開けられない魔法を掛けてくれているらしい。
裁縫が出来るなら僕の服もメイドさんが作れたんじゃないか、少なくてもボロボロになってしまった服を直すぐらいは出来たんじゃないかと思ったがどうせひかりに燃やされるのが落ちなのでツッコまないでおいた。
……今、気づいたんだけど、あのコスプレ衣装の数々はひかりがメイドさんに無理言って作らせたんじゃなかろうか?
(さすがなせるん。正解よ!)
くっ……! どうりで現代チックなコスプレ衣装があったわけだよ!
変な性癖に目覚めたらどうしてくれる……!
「それではドラゴン三頭を3000万ダルクで引き取らせて頂きます。この度のご活躍、真に感服いたしました。今後も勇者様のより一層のご活躍を職員一同願っております!」
騒ぎを聞き付けたギルド職員達に冒険者ギルドの裏にある広場まで案内され、ドラゴンたちを引き渡すと3000万という大金が入っているであろう装飾されたトランクケースを持ってきて、開いて見せて中身を確認すると10万と書かれた500円ほどの大きさの記念硬貨のような装飾が施されたが金色硬貨がスポンジのような物に嵌められていた。
枚数確認をするかと聞かれたが断った。この人たちが嘘を
◇
シロネコ亭に帰ってきた。
あれからギルド職員の働きによりお祭り騒ぎだった村人たちをあっと言う間に大人しくさせると元の
持っていたお土産(ライベルマイトさんに持たされた)などの荷物を入り口の脇に置いていると奥から見知った人影がやってきた。
「おかりなさいませ旦那様。ご飯にします? お風呂にします? それとも……私にします?」
「えっ……と?」
最近どこかで聞いたことがあるようなセリフで出迎えてくれたのは妙に艶めかしい、一瞬、裸と見間違うようなエプロン姿のクロニャだった。
「何、してるのかな?」
「旦那様が帰ってきたので急いで準備したんですよ? どうですか? 似合いませんか?」
「いや、目のやり場に困るというか、なんと言うか……というか旦那様って何?」
「ふふふ、旦那様のその格好も可愛いですよ。それに、今更目のやり場に困るなんて、あんなに激しく愛し合った仲じゃありませんか……」
「ぶふっ!? 愛し合ったって!?」
愛し合ったって……いや、たしかにキスとかはしたけどさ。
そんな大人びたクロニャを見て何かを思い出しそうになるが思い出せない。
何か大事なことを忘れているような……?
「ところで、なせるくん。そいつ、誰?」
「八肝なせるの妻ですが何か?」
急に口調が変わったクロニャに
二人ともケンカはやめようよ……いや、原因の一旦は僕にあるんだけどさ。
クロニャが僕に好意を抱いているのは知っていたし僕も内心ではクロニャの事を好きになってはいたけどまだ告白もしていないし……いや、したっけ? あれ? 記憶がぼやけてはっきりと思い出せない……?
「なせるくん大丈夫? そいつは魔女よ? 今そいつ殺すから安心して」
訳の分からないことを言い出したクロニャが隠し持っていた包丁でひかりに斬り掛かってきたのを
「なせるくんどいて! そいつ殺せない!」
包丁を両手で突き出すように構え、今にも襲い掛かってきそうな剣幕にどうして良いか分からず固まってしまう。
「なせるんに何てことするのよ! 大体あんたなんかに殺される理由なんか無いわよ!
動けずに居るとひかりが何を思ったのか「ゴッドラリアートッ!」と叫びながら見事なラリアットをクロニャの首にぶち込み「ぐふっ」っという呻き声とともに卒倒させた。
「シャァッ!」
右腕を天に突き上げ勝ち誇るひかりを見て少女相手に大人げないなと思う反面、純粋にカッコイイと思ってしまったのは内緒だ。
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