第8話

 昨日は、お祝いで出された料理をたらふく食べて、僕のお腹がはち切れそうになったところでお開きとなった。


 重たくなった腹を抱えて、そのまま自室に戻り、ベッドへ倒れこんだ。

 苦しい……


 翌朝になると不思議なもので、一晩眠っただけでお腹がすっきりしていた。


 とりあえず今日の予定は、昨日冒険者登録もしたことだし冒険者ギルドに置いてあるクエストボードで自分に出来そうな依頼を確認しに行くつもりだ。


 身支度を整えてシロニャさんに朝の挨拶をして冒険者ギルドに向かった。


 朝ごはんを勧められたけど昨日のお祝いで食べ過ぎたと言って断ったら、ぷんぷんと頬を膨らませて可愛く怒るシロニャさんにキュンキュンした。


 シロニャさんと結婚出来た人が羨ましい。


 シロニャさんの夫、クロニャのお父さんが居ない事は気になってはいるけど、もし不幸な事になっていたらと思うと中々聞き辛かったりする。


 ◇


 冒険者ギルドに着くと一直線にクエストボードへと向かい、ボードに複数枚貼り出されている依頼書を確認して行く。


 こっちに来てから今の今まで、普通に会話が出来ていたのでここが異世界だと言うことをすっかり失念していた。


 異世界の文字で書かれた依頼書が読めない……


 と、思ったら、よくよく見てみれば難無く読めた。

 英語で書かれていると思ったらローマ字で書かれた日本語だった。

 みたいな感じの拍子抜け感である。


 それでも分からない単語は多かった。


 モンスターの名前や草花の名前が書いてあるがそれがどんな姿なのか分からないし文字が読めても何を依頼しているのかまったく分からないものまである。


 とりあえずは、絵が描かれた依頼書を重点的に確認していく事にしよう。


 鳥の上半身に猫科の下半身が描かれた依頼書を見てみた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 グリフォンの捕獲依頼

 グリフォン一体につき500万ダルク〜

 成功報酬応相談

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 こう言うのを見ると本当に異世界に来たんだなぁ、としみじみ思うね。


 絵は可愛く描かれているけど実物はゲームとかに出てくるヤバイ奴なんじゃないかな?

 ま、グリフォンじゃなくてもゴブリンとか出てきたらぶっ殺される自信があるので戦うこと前提の依頼はパスだな。


 次は草が描かれた依頼書を見て見る。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ニンルート採取依頼

 ニンルート10本を採取して来てください

 成功報酬1万ダルク

 10本以上の場合は応相談

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 これって……

 どこかで見たことあるような……

 たしか、老人の巻物シリーズ……


 これ以上は思い出せそうにないので次。


 農具が描かれた依頼書を見てみた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 私たちと一緒に畑を耕してみませんか?

 服装自由で晩御飯前に帰れますよ!

 アットホームな環境で安心して働けます!

 私たちと一緒に青春の汗を流しましょう!

 日給5000ダルクから

 昇給あり、経験者優遇

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 元居た世界のバイト募集のような依頼書だったが、そこはかとなくブラック臭がしたので見なかった事にしよう。


 他にも色々見てみたけど、どれが良いか、いまいちよく分からないのでラケルさんかクロニャと一緒に来れば良かったかな……


 まあ、あまり頼りすぎるのもあれなので、ここは一人で受付のお姉さん(品乳)にお勧めを尋ねてみよう。


「こ、こんにちは」


「はい、こんにちは。ご用件は何でしょうか?」


「えーと、お勧めの依頼をお伺いしたくて来ました」


「お勧めの依頼ですね。それではギルドカードを拝見させてください」


「はい」


 《カード》と唱えてギルドカードを出現させお姉さんに渡した。

 何度やってもカッコイイなあ。


「レベル1の冒険者。なりたてかしら? 称号は……フフフッ。あ、カード、お返ししますね」


 何故かお姉さんに笑われたのでギルドカードを確認してみた。


――――――――――

名前: ナセル・ヤキモ

種族: 人

レベル: 1

職業: 冒険者

称号: 食べ過ぎ

ランク: カッパー

――――――――――


 食べ過ぎ? え? 称号ってそんな簡単なものなの? 確かに昨日は食べ過ぎたけど、思ってたのと違う……


「それではなせる様、なせる様は初心者冒険者のようなのでギルドが発注するスライムの捕獲などはいかがでしょうか?」


「スライム、ですか?」


「はい、スライム一体につき100ダルクを支給させていただきます。捕獲道具などお持ちで無いようならギルドの方でご用意させていただきます」


「あの、スライムって危険な生き物ですか?」


 一瞬お姉さんの顔がポカーンっとなったので変なことを聞いてしまったのかな?


「い、いえ、危険なスライムというものは聞いたことがありませんが迷宮都市などのダンジョンに行けば、あるいは居るかもしれませんね。あそこは珍しい魔物が多いですから。少なくともこの村周辺のスライムは虫や雑草を食べるだけで怒らせない限りは無害な生き物ですよ」


「怒らせた場合は……?」


「体当たりして来ます。と言っても子供が体当たりするぐらいの力なので痛くも何とも無いですけどね」


「そうですか。変なこと聞いてしまってすみません」


「いえいえ、それではスライム捕獲依頼お受けになられますか?」


「はい、受けさせて貰います。あ、捕獲道具もお願いします」


「かしこまりました。スライム捕獲依頼は年中いつでも受付ておりますので期限はございません。村の中に居るスライムは害虫駆除などで使われておりますので捕獲禁止です。この依頼で上がるランク上限はブロンズまでとなっております。捕獲道具は無料で貸し出しておりますが壊したり無くしてしまった場合は買取となりますので気をつけてくださいね。他に分からない事があればご質問してください」


「はい、大丈夫です。頑張ります!」


 その後は捕獲道具として大口の皮袋と目の細かい網を渡された。

 一見すると虫取り少年である。

 実際スライム獲りをするのであながち間違いでは無いのだろう。


 とりあえず僕の戦いはこれからだ!

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