第24話 赤井少輔/マシラレッド

『そのままシロハマグマリ女に向かって急降下。自由落下の位置エネルギーを速度に変換して蹴るなり殴るなりして』


 冷徹なソーマの声が聞こえる。加速度的に落下していく視界で、豆粒のように見えていたシロハマグマリ女がどんどん大きくなっていく。

「おおおおおっ」

 と、その邪悪な顔がニヤリと歪んだ。

「空中ではまともに回避もできまい! そのまま切り刻んであげるわ!」

 シロハマグマリ女が、その名に恥じない熊爪を構えて迎撃の態勢をとった。空中を直進する一方の俺は避けることすらかなわない。

「おとなしくなます切りにおなり! 『極北の羆爪ポーラ・ベアークロー』!」

「やばい!」

 ジャキン、と構えられたシロハマグマリ女の凶刃に、俺の姿が映り込む。南無三、とマスクの中で思わず目をつぶった瞬間、俺の全身が白く弾けた。


「言い忘れておったが……ニホンザルは、日本では古代より神として崇められていたそうな――」


 誰にともなく呟く博士の声。俺は全身が熱い光でスパークしていることに気がつく。圧倒的な熱量を持った閃光が飛散し、突如として辺り一帯は真昼のよう。不意の光に視界を奪われたシロハマグマリ女が、思わず目を手で覆った。

 不敵に笑う猿田彦博士。

「太陽の邪神――“魔白羅マシラ”としてな!!」

 眩しさに耐えかねたシロハマグマリ女の熊爪が下がり、ガードが僅かに空く。

 俺は渾身の力を込めて、灼熱の右拳を振り上げた。

「喰らえ! 『モンキー・パンチ』!」

「うおっまぶしっ」

 痛烈&一閃。

 圧倒的加速度に超高高度からの位置エネルギーを加えたパンチは、シロハマグマリ女の強固な装甲を貫いた。

 地面に降り立った俺の背後で、巨体がゆっくりと崩れ落ちる気配を感じた数秒後。事切れたシロハマグマリ女は爆破霧散し、後には季節外れの陽炎だけが残った。

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