第23話 猿臂

「!?」

 上空から降り注ぐ雪が空中で制止した。

 戦闘兵たちも、スローモーションのように動きを止めた。試しにゆっくりと起き上がって近くの戦闘兵を軽く蹴ってみる。

「キーッ!!」

 軽く触れただけの戦闘兵が七メートルほど吹き飛び、海面に着水。派手な水柱があがった。


(このふたりを見てもわかるように、『強化スーツ』は着用者の元から持つ個性や性格をよって、初回装着時に『種族』が決定されるんじゃ)

(いやわかんねえよ。てかこの状況でよく説明続けられるな)

(装着後も、着用者の強い願望をスキャニングすることで能力のアップデートが随時可能じゃ)


「お前の体に宿る一番の能力は、ほかの四人にはない俊敏性と――」

 博士の声が遠くに聞こえる。今の俺には敵の攻撃が止まって見える。

「圧倒的な脚力!」

 ひと跳びで軽く数メートルに達するジャンプ力。俺が上空高く飛び上がると、標的を見失った戦闘兵たちの動きが膠着した。

「うおおおおっ! 力がみなぎるぜっ……!」

 戦闘兵集団の背後に着地した俺は、次々と残りの戦闘兵に亜音速の蹴りを入れ海に叩き込んでいく。

「キーッ!」「キーッ!」

 今の俺の脚力は、敵戦闘兵の断末魔さえ置き去りにする。雑魚を一気になぎ倒した俺はトップスピードのまま一直線に駆け、シロハマグマリ女にドロップキック。

「喰らえ!」

「ぬるい! 『クラムシェルダー』!」

 しかしさすがは敵幹部。とらえていた京子を投げ捨てると、ハマグリ状のシールドを瞬時に展開し、俺の攻撃を防御。勢いを相殺された俺は、反転したシロハマグマリ女の裏拳をダイレクトにもらって吹っ飛ばされる。

「ぐはっ……!」

『少輔、聞こえる!?』そのとき、息も絶え絶えだったソーマの声が内蔵マイク越しに聞こえた。

『そのまま、さっき麗麗華が投げたテトラポッドを足場に上空十二メートル三十八センチ地点までジャンプして!』

「そんな細かく言われても」

『大丈夫、今、少輔の視界をボクの内部カメラで共有しているんだ。ジャンプ地点はこちらから指示、跳躍後の軌道は少輔の脚部補助バーニアを遠隔操作して調整する』

「了解!」

 俺は強化された脚力で猛然とダッシュ。ゴーグルに当たる粉雪が瞬時に砕け散ってゆく。

『今! そこで真上にジャンプ!』

 ソーマの指示通り、テトラポッドを駆け上がり漆黒の夜空へと舞い上がった。

『脚部装甲強制排除リジェクション。補助バーニア起動ブート着火イグナイト

 空中で最高点まで到達した瞬間、俺の踝部分のアタッチメントが爆ぜ、轟音とともに炎を噴き出す。天空を見つめていた俺の視界が鋭角にターンし、中心に敵の姿をとらえた。

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