第18話 ゴリラタパルト

 ――が、そのとき――。


「なめるな小娘!」


 十人ほどの戦闘兵を血祭りにあげた京子の背後に、シロハマグマリ女が回りこんでいた。

「しまった!」

 そのまま、文字通りベアハッグの態勢で動きを封じられる京子。必死に応戦しようとするが、手足をがっちりとホールドされていて攻撃が繰り出せない。

「ドリルブルー、貴様の斬撃は近接戦闘においては威力絶大よ。しかし一旦動きを止めて初速さえ封じてしまえば怖くは――どぅあべし!」


 瞬間、突如として飛来した巨大なテトラポッドがシロハマグマリ女の頭部に命中した。昏倒したシロハマグマリ女のホールドが緩み、京子が脱出する。

「キーッ!?」

「私を忘れてもらっては困りますわ」

 凛、とした麗麗華=ゴリブラックの声が波止場に響く。

「これが私の必殺技『ゴリラタパルト』。この豪腕から繰り出される投擲は神速かつ精確、無慈悲にして甚大よ」

「どこの書記長だよ。にしてもすげえな……」

 これが強化スーツ「ゴリラ」の力か。ハイエースの陰から戦況を覗いていた俺は感嘆の声を漏らした。なにしろ人の背丈ほどもある石の塊を、華奢な麗麗華がブン投げたのだ。彼女の右肩を覆う重機のようなアタッチメントが、唸るように蒸気を噴き出した。

「そうか。動物園のゴリラとか、怒ったときにうんこ投げてくるもんなあ」

「ッ! そこ! 黙りなさい!」ブンッ。

 怒号とともに、二個目のテトラポッドがライナー性の弾道を描いた。怒りの石塊は俺の頭頂部をかすめて背後の倉庫を三棟ほどなぎ倒す。

「ちょちょちょっと、何すんだよ! 死んじまうよ!」

「口は災いのもとっていってね。ちなみにそのテトラポッドの重さは二トンあるわ」

 俺は鳥肌のたった二の腕を強化スーツ越しにさすった。

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