第17話 スフィンクス・バイト

「シャハハハ、たかだかそれっぽっちでこれだけの数を相手にする気? 面白いわ、者どもかかれい!」

「キーッ!」

 前陣の戦闘兵集団が、一気に躍りかかってくる。その人数たるや、ざっと見最低でもひとり四人以上は相手にしないといけない計算だ。俺はそそくさとハイエースの陰、博士の隣に隠れた。ひとり当たりの負担が五人になった。

 がしかし、四人は全く恐れる素振りを見せない。京子が一歩進み出ると、高らかに告げた。


「私から行っちゃうよーっ!」


 腰をうんと落とした低い体勢から、猛然と敵陣に突っ込む京子。周囲に砂塵が巻き起こった次の瞬間、軌道上にいた戦闘兵たちが血しぶきをあげて倒れこんだ。

「キーッ……」

「な、どうしたお前たち!? 何が起こった!?」

 目を白黒させるシロハマグマリ女。

「ふふふ……これが私の必殺技、霊長類一の突撃力を生かした『スフィンクス・バイト』よ。ジャガーも恐れるというマンドリルの牙の味はどう?」

「京子あいつ、ハンドル握ると性格変わるタイプだな」

 京子のマスク顎部には、鋭い牙を模した刃物状アタッチメントが備えられている。それを目にした戦闘員たちが、じりじりと彼女を包囲する輪を広げていく。

「京子クンの『スフィンクス・バイト』は特製ダマスカス鋼に超音波振動を帯びさせとるからの。彼女の能力と合わされば大抵の相手は敵ではないわい」

「まあ作ったのはボクだけどね」

 興奮して解説してくれる博士をよそにソーマがボソりと呟く。


「一気に決めちゃうよっ!!」


 再びフットボールタックルのような低姿勢をとり、敵陣へとうなりをあげ猛進する京子。青い旋風がまたたく間に敵を蹴散らしていく。

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