第16話 ディジェネレート

「あれは……敵の“魔改造人間”!?」


 夕暮れの埠頭に到着した俺たちが目にしたものは、二メートルの巨体を白い毛皮で

覆い、手には黒光りする爪、背中には大きな盾を備えた敵の姿だった。

「シャハハハハ、私はホッキョクグマとハマグリをベースにした魔改造人間! シロハマグマリ女よっ!」

「だからなぜそのふたつを合わせたんだ」

「むしろシロクマ女のほうが強かったんじゃないかしら」

「じゃかましい! 目障りなお前らを今日こそぶっ潰して、まずは東京都江戸川区を我が物としてくれるわ!」

「わりと計画的ね」

「いでよ、魔改造戦闘兵ども!」

「キーッ」

 シロハマグマリ女の号令とともに、全身タイツの戦闘兵がわらわらと出現した。

「ちっ……今日は一段と多いわね」

「軽く四ダースはいるね」

 状況を確認した京子が、俺たちを振り返って力強く宣言する。

「みんな! 行くよっ!」

 京子の一声で、他のメンバーが一列に並んだ。俺もわたわたと後に続いた。


退化変身ディジェネレート!!』

「チェーンジ・マンドリル!」「ゴリラ!」「オランウータン!」「ボノボぉ」「マ、マシラ」


 掛け声とともに、俺たちはそれぞれ左手のブレスレットにICカードをタッチ&チェンジ。総天然色の光が空に走った一瞬の後、五人の一般人の姿は消え――強化スーツをまとった超人「サルレンジャー」が出現した。


『超猿人隊、サルレンジャー!』


「出たわねサルレンジャー!」

 シロハマグマリ女が忌々しそうに俺たちを睨みつける。

「都会のジャングルを駆ける魔女とは私のこと。ドリルブルー・青島京子よ」

「拳は剣よりも強し! ゴリブラックこと、墨堂院麗麗華!」

「彼ぴっぴ募集中の桃狩てとらだよー。ちなみにスリーサイズはおっぱ」

「……ウータングリーン」

「マ、マシラレッドっス。ええっ、本名言っていいの!? おまえらデジタルネイティブかよ……」

「後半になるにつれて名乗りが雑になってる気がするぞい」

 ハイエースの陰で博士のボヤキが聞こえる。京子が俺の肩を叩いて告げた。

「少輔、超猿人隊『サルレンジャー』にようこそ!」

「お、おう」

 俺は両手を握りしめる。なるほど、今までには感じたことのなかった力が全身にみなぎっているのがわかる。と、白ハマグマリ女が哄笑をあげた。

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