第9話 ジジイ
目が覚めた。危ないところだった、と冷や汗を拭う。俺はどうやらベッドの上に寝かされているらしい。
ゆっくりと体を起こし頭に触ってみる。先ほどまでの痛みはない。辺りを見回すと、ここがコンクリート打ちっぱなしの部屋であることがわかった。
窓がないのは地下室だからだろうか。床の上には何に使うかわからない機械やオイルまみれの工具が雑然と置かれ、壁にはタブレットやモニター、無数のボタンやメーターのようなものが設置されている。まるで幼いときに空想科学映画で見た秘密基地みたいだ、とぼんやりと考えた。
俺の体はといえば気分も二度寝した休日の朝のように爽快で、先ほど負ったはずの大怪我が嘘のよう――。
「ほっほ、気がついたようじゃな」
声のしたほうに目をやれば、ひとりの老人が近づいてきた。ぐっちゃぐちゃに散らした白髪に汚れた白衣を羽織っている。
「ここは……」口を開きかけた俺はふと気がついた。この老人は、カレーショップの店主ではなかったか。
「ここはお前さんが事件に巻き込まれたカレー屋の地下じゃ。もちろん、公には秘匿とされておるがの」
「俺はいったい……」
「赤井少輔クンじゃったな。わしは
「のんきに」
「――不運にも敵組織の襲撃に巻き込まれたんじゃ。君は爆撃の破片で頭に重症を負い、生死の境をさまよっておった。そこでドリルブルー――京子クンが、独断で変身ブレスを君に装着。強制変身させることで君の命を救ったのじゃよ。『サルレンジャー』の強化スーツには救急生命維持装置と、バナナジウム外骨格による外傷復元及び保護機能がついとるからな、応急処置としては唯一にして最善の策だったのじゃ」
「ちょちょちょっと待ってくれ」
一度に許容量オーバーの説明を受けた俺は、片手をつきだして博士と名乗る老人を制止する。
「ドリルブルー? サルレンジャー? 京子? ――いや、京子はわかるけどさ。さっきからいったい何を言っているんだ……?」
老人ははたと喋るのをやめ、不敵な笑みを浮かべた。
「実際に見てもらったほうがわかりやすいかの。ここに先ほど、君が意識を失っていたときの映像があるぞい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます