第6話 魔改造人間登場!

 黄金の頭部に、漆黒に輝く巨大で邪悪な瞳。光沢を放つ顔面とは大賞的に、首の下からは獣のような毛で覆われている。異形の周りには、全身にタイツを纏った集団十数人が控えている。巨体の異形が口の端を吊りあげ、静寂の店内で名乗りを上げた。


「ギョハギョハヒョハ、我こそはかずのことハムスターの魔改造人間! ハムかずのこ男だ!!」


「キーッ!」奇声を上げるタイツ集団。

(なぜそのふたつを合わせたんだ)

 薄れゆく意識の中で俺は思った。強盗かテロか愉快犯かはわからないが、なにか恐ろしいことを企てているヤツがいる……とにもかくにも逃げないと。と俺が瓦礫の下から這い出そうともがいたとき、ようやく自分が頭から大量の血を流していることに気がついた。

(なんじゃこりゃあ……ドラマでしか見たことない血の量だぞ……)

 頭を壁に打ちつけたときか、天井の破片が当たって負った傷かは定かではないが、とにかくとめどなく流れる血液。体を動かさねばと思うものの、意識は急速に次第に遠ざかり、手足の感覚がなくなっていくのがわかる。目の前には五年前に死んだはずのおばあちゃんが手を振っていた。そういえばキーマカレーもまだ食べてねえ――俺が店の奥に目をやったその時、半壊したカウンターから凛とした声が響いた。


「出たわね! ハムかずのこ男!」


 声の主は、白髪頭のカレー屋店主――ではなく、漆黒のボディスーツとフルフェイスタイプのマスクに身を包んだ長身の人物。声から察するに中の人は女性だろうか。俺があっけにとられていると、彼女の後ろから同じようなボディスーツ姿の人影が現れた。

「あ、やっぱりアジトの光学迷彩突破されてる。それにしても派手にやってくれちゃったねえ」のんびりした声はボディスーツ(ピンク)……が、倒れた俺の右手を踏んでいた。

「うぐぅ」遠ざかっていた意識が引き戻される。

「ちょっと、この人まだ息があるよ」俺を覗き込んでいるのはボディスーツ(緑)。黒のコスプレスーツ野郎に比べると随分小柄だ。

「怪我人は一名、十代男性。脈拍低下、頭部から出血多量、瞳孔大開放、チアノーゼも出てる」俺に軽く触れた緑スーツが呟いた。

「ほええ、なかなかいい男だけどこのままじゃッちゃいそお……ってあれ、京子なにしてんの」

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