次の日

 窓から見える朝日を見て、「ああ、現実の世界に戻ったんだな」って思った。朝日を見るのは良くあることだが、あのガラスでできたような世界を見た後ではそう思ってしまったのだ。置き時計を見てみると朝の4時で、「流石に早く起きすぎたな」と思った。

 ベッドの上ではまだセロが寝ていた。その寝姿からは昨日起こったことが本当だとは全く想像が出来なかった。さすがに早すぎると思ったけど、もう一度寝て起きたら朝の8時だったなんてことが起きるのも何かなーと思って、昨日までのことを整理しようと思った。

 そもそも、おじいちゃんがなぜあんなに若く見えるのか。

 ていうか、お父さんもお母さんも、常連さんたちも、おじいちゃんの容姿に疑問を持っていなかったけど、何でだろ。

 少しの間思考を巡らせたが、分からないことを悟ったのか、克人は一旦考えるのをやめた。

 じゃあ、魔法って何?

 そもそも、こんなことがあっていいの?ていうか、魔法学院に入学することになっちゃったけど、いいのかな?受験するんだから、私立の中学に入るのはほぼ確実。部活をやらなかったとしても、一日の内10時間も学校に縛られるわけなんだから、一日のうちの半分以上は使えない。となると、夜に通うの?

 ……。

 はあ〜。とりあえず、今日会った時に聞こう。

 何を考えても、分からないことが多すぎるので、何も考えないようにすることにした。


「おはよー」

「「おはよー」」

 ようやく朝の7時30になった。さっきまで久しぶりの長時間読書を楽しんだ。

「きょうは、何か予定はあるのか?」

 父さんだ。…ん?

「え、塾に決ま…何でもない」

 あれ?壁にかかっているはずの時間割表がない。

「そうか、じゃあ、留守番よろしくな」

「うん。ちょっとおじいちゃんの喫茶店に行っていい?」

「いいぞ」

「あら、今日も行くのね。まあ、家にいても退屈だろうから、行ってきなさい」

 そんな会話がなされている中、いまいち状況がつかめていない自分がいた。


 父さんも母さんも共働きだから家にいても退屈なのはわかっている。だけど、最近は塾があったはずだからそこまで退屈ではなかった。でも今は、

「暇すぎる」

 朝の八時からずっと一人でいて、暇すぎる。おじいちゃんの喫茶店が開くのは10時からだから,それまではほんとに暇だ。

「お店の方手伝ってみようかな?」


 ***


 小学校3年生の時,こっちに引っ越したばかりのころ。

 夏休み直前に引っ越してきたこともあって,なかなか友達ができなかった。以前から近くで喫茶店をやっていたおじいちゃんの所ぐらいしか行くところがなくて,夏休みに入ってからはほとんど喫茶店に引きこもることになった。そんな時,あまりにも暇すぎたのでおじいちゃんに

「喫茶店の仕事を手伝わせて。暇すぎる」

 と言って始めたのだった。


 ***


 今でも言ってくれたらやらせてくれると思うけど,迷惑じゃないかな?

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