第三話 アントニオの死

 軽い脅しのつもりだった。

 マッシモは部下に命じて、アントニオを拉致。復帰できる程度の暴行を加え、両手を縄で縛る。山奥の穴に埋めるが、縄は簡単にほどけるようにしてある、はずだった。これ以上マフィアの領域に踏み込むな、そしてマナナからも手を引け、そんな警告を加えるだけのはずだった。

 しかし、部下の手加減が思うようにいかず、縄はほどけなかった。アントニオは翌日、死体で見つかった。

 マナナを含め、街の人々は彼の死を深く悼んだ。マナナは改めて、それまで胸に抱いていたマフィアへの憎しみをはっきりと自覚した。アントニオの死を決して無駄にしてはならない、そしてアントニオの描いていた理想の街を取り戻す、そう強く決意したのだった。

 マナナはその時アントニオの子どもを身籠っていた。自分、そしてこの子の命を何としても守る、たとえこの命が尽きようとも。マナナはそう誓ったのだった。

 マナナはこのころから、38口径のリボルバーを護身用として持つようになった。そもそもこれはアントニオが持っていたものだった。

「もし僕がいないときに何かあったら、これで身を守ってくれ」

 そういってマナナに渡したのだった。

「ただ……」

 その後に言った言葉をマナナは忘れない。

「ただ、撃つ事は解決ではない、撃っても何も変わらない。解決のために撃っても、また悲劇が繰り返されるだけだ。それを忘れないで欲しい」

 マナナはその言葉を思い起こしながら、お腹をさすった。そしてその膨らみがわからないように余裕のある服を着、38口径を股下に隠すと、マッシモの屋敷へ向かった。

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