第二話 そんなシチリアにマナナは生まれた
19世紀中頃、イタリア南西に位置するここシチリア島は、それはそれは美しい島だった。
しかしその美しさが故、また地中海のど真ん中という好立地条件が故、歴史的に多くの支配勢力による熾烈な奪い合いが繰り広げられた。
次々と変わる支配勢力、度重なる戦争。いつしか人は公権力に頼るのではなく、自分たちの力で問題を解決しようという意識が芽生えるようになった。
シチリアマフィアはそのような状況下で、望まれながら誕生した。
マフィア、は犯罪組織と思われがちだが、少し違っていたようだ。それなりに上納金を支払っていた一帯を盗賊から守ったり、金銭を巡るトラブルの仲裁人をしたり。契約違反をしないよう業者同士の取引を監視したりなど、いざとなれば法という時間のかかる手順を飛び越えて、殺人を実行できたマフィアはある意味シチリア島で感謝すらされることもあったのだった。
それと同時にもちろん組織内での規律も厳しかった。
ファミリーの仲間の妻に手を出してはいけない、警察関係者と交友関係を築いてはいけない。理由なく一般人を
もし破られれば、激しい拷問の末、口に石が詰められた状態で死体で見つかることになっていた。
マナナはそんな時代のシチリア島に生まれた。
街で評判の美人だったマナナは、シチリアの太陽と称された。
マナナには恋人がいた。その名はアントニオ、街の警察官だった。正義感の強いアントニオは、通常なら見逃すマフィアの犯罪も、徹底的に弾圧した。いつしかマフィアの中でも煙たがれる存在となっていた。
マナナはそんなアントニオが好きだった。決してぶれず、正しいことを正しいと言えるその姿に、マナナは心を奪われた。いつかこの街をマフィアのいらない、安心して暮らせる街にしたい、そう語っていたアントニオの瞳をマナナは忘れられなかった。
一方、そのマナナの美貌はとあるマフィアの幹部の耳にも届いた。
ジョー・マッシモはアンダーボス、言うなればその都市のマフィアの副組長、つまりボスの次の権力を持っていた。ボスのルキーノに気に入られてこそ今の地位にのさばっているが、その荒っぽく、下品で女癖の悪い性格から、下からはかなり嫌われていた。
マッシモは一目でマナナに惚れ込み、いつか自分のものにしたいと常々思っていた。しかしそれには大きな邪魔がいた、アントニオの存在だった。アントニオに今までいくつもの部下を逮捕、処刑され、思うように事が進まないことへの恨みと、マナナを自分のものにするための大きな障壁であるアントニオ。マッシモはついに兼ねてからの画策を実行することにしたのだった。
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