第76話 十神
文化祭2日目
「よし、今日の俺は自由だー!!」
トムは昨日の束縛にも感じる地獄を乗り越えたこともあり、妙に明るく言った。
一日無駄にしたが、文化祭は文化祭。楽しまなければ損だと思ったからだろう。
しかし、現実はそう甘くはない。
「「「ごめん、クラスの出し物のシフト入っているからまだ一緒に回れないや」」」
トムが『みんな、今日一緒にまわろーぜ』と言った時のいつも一緒にいる将悟、大和、陸斗の三人の答えだ。
「……マジか!よりにもよって三人とも!!俺って狂っているくらい運悪いな!!!」
トムは少しの沈黙の後、モヤモヤを消し飛ばすように段々を声を上げた。
一応、三人とも午前中でシフトが終わるらしいが、それまでトムは一人となってしまった。他にもクラスの何人かを誘おうとしていたが、驚愕の事実を知るまで三人と話してしまっていた。だから、文化祭2日目が始まった瞬間、蜘蛛の子を散らすようにクラスメイトたちは行ってしまった。
「……マジかー。川口とか鷲宮とか見つけたら一緒に回るようにしよう。うん、そうしよう」
文化祭2日目
「よし、今日の俺は自由だー!!」
トムは昨日の束縛にも感じる地獄を乗り越えたこともあり、妙に明るく言った。
一日無駄にしたが、文化祭は文化祭。楽しまなければ損だと思ったからだろう。
しかし、現実はそう甘くはない。
「「「ごめん、クラスの出し物のシフト入っているからまだ一緒に回れないや」」」
トムが『みんな、今日一緒にまわろーぜ』と言った時のいつも一緒にいる将悟、大和、陸斗の三人の答えだ。
「……マジか!よりにもよって三人とも!!俺って狂っているくらい運悪いな!!!」
トムは少しの沈黙の後、モヤモヤを消し飛ばすように段々を声を上げた。
一応、三人とも午前中でシフトが終わるらしいが、それまでトムは一人となってしまった。他にもクラスの何人かを誘おうとしていたが、驚愕の事実を知るまで三人
自分を元気付けるように独り言をつぶやくトム。別に彼は人見知りというわけではない。状況判断と決断力が劣っているのだ。
一応、トムは周りにある他のクラスの模擬店やアトラクションを見ながら歩く。よくよく見てみると、どこかからパクって来たような、著作権とか大丈夫か?と思うぐらいの店が何店かある。あと、昨日ずっと駐車場の案内していた彼は分からなかったが、他の高校から来ている生徒、学校見学ついでに来た中学生、親が連れているくらいの幼稚園生から近くに住んでそうなご老人、外国人までさまざまな人が文化祭に来ていた。
「へー、結構人いるもんだな」
とトムは言った。目に映る物珍しいものたちに彼は夢中になっていた。しかし、周りを見ていると近くの物や人には気がつかなくなる。人はそういうものだ。
ドンッ
「「いてっ」」
トムはたまたま中学生くらいであろう身長の男の子にぶつかって、尻餅をつかしてしまった。
「あ、ごめん。君、大丈夫?」
トムがそう言いながら手を差し出す。しかし、目の前で倒れたその少年はその手を使わずに立ち上がって、
「子供扱いすんな!!僕も高校生。君と対して変わらない」
と言った。
トムは決して子供扱いしたわけではない。ただ普通に倒してしまった謝罪を込めて、手を差し伸べただけである。
しかし、その少年には侮辱に感じたのだろう。少年は猫が威嚇するような目で睨んだ。
(ええ、俺そんな悪いことした?)
トムは密かに心の中で思った。
しかし、その少年がいくら猫が睨んだような目で見ても解決する話ではない。
解決する方法といえば、トムがその睨みに応戦し、猫以上の迫力を出すしかない。が、トムにはそれは無理だ。ほぼ同じように子供に間違われるくらいのトムが睨んだところで対して変わらないからだ。
だから、とるべき行動は一つ。
「逃げる!!」
トムは端的に言って、ずっと睨んでくる少年をおいて言葉の通り逃げた。
「あ、ちょっ……」
その少年は何か言いかけたがトムは聞く耳を持たず、全力速力で逃げる。文化祭の人混みの逃げる。逃げ切った……はずだった。
逃げ切れていることを確認しようと思い、トムは後ろを向いた。しかし、そこに彼はいた。
「なんで置いてくのさー」
息一つきれず、先程と同じような明るい口調で彼は言った。
「え……。ちょ……ちょっとまって。ちょっと……俺が息整えるまで待ってて……」
「?」
少年はキョトンとした顔でトムを見る。トムは腰に手を当て、ゆっくりと息を整える。運動部にさらには帰宅にも自転車に乗っていて、あまり走らない彼にとって全力で動くことはかなり重労働なのだ。
「……よし。とりあえずさ、お前誰?」
「ああ、僕、十神瞬」
「いや、名前聞いてもわからん。本当、誰?」
「……確か、君は鈴谷くんだよね。丸山陸斗くんの友達の」
「は?俺は名札つけているからまだしも、陸斗のことまで何で知ってんだよ。というか、あんまり話噛み合ってないぞ」
「僕は陸斗くんのライバル!!」
(あ、こいつちょっとやばいやつだ)
と、トムは密かに思った。
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