第73話 長い休み

会科高校。ここは何も変哲が無さそうな普通の公立高校。

ここで今日も時は進む。

長いようで短い、彼らの日々が。


朝。それぞれがそれぞれで学校に登校し、教室内や廊下では話し声が聞こえてくる時間帯。

しかし、そんな中でも机の上で寝そべり、眠そうにしている者とその隣の席に座る生徒がいた。

そして、なにかを聞かれた教室の一番端に座っていた彼はゆっくりと顔を上げた。


「いやー、なんか長い間寝てた気がする」


寝そべっていた張本人の鈴谷智大(あだ名はトムであるため以後トムとする)は眠気を吹き飛ばすように伸びをする。茶色で天パの彼の髪が滴るように揺れる。

彼は今日も当たり前のように授業中に寝ていた。しっかりと男子高校生が取るべき睡眠時間をとったとしても、彼の睡魔を取ることはできない。


「それはわかる。なんか今日は眠い」


と、戸田将悟も呟く。彼はトムの親友であり、トムの隣に座る者。黒髪でストレートに整えられている。少しワックスを使っているようだが。

しかし彼、戸田将悟は性格面において至って真面目であり、学校ではあまり眠くならないように工夫をしているのにもかかわらず、彼にも眠気が襲っている。

今日は異常なのかもしれない。


「だよなー。なんか、一年間くらい寝てたみたいな感じ」


「一年間は言い過ぎだよ。多分だけど201日くらいだよー」


「いや、恐ろしく正確じゃないか、それ。くらいとかつけなくていいくらいじゃん」


トムが慌ててツッコミを入れた。

しかし、トムはふと考えた。何かおかしな点が多くはないかと。

確かに将悟が言っていた通り、201日間寝ていたような気がしていた彼らにとっては時間の流れは変わっていない。

そしてトムはハッと思いついた。


「……なんか将悟のキャラがブレてないか?」


「え……?」


「だってさ、将悟といえばさっきの説明文にも出てたように真面目キャラじゃん?」


「その説明文っていうのは俺はみてないけどね」


「ま、それは置いといて。真面目キャラっていうのはワックスをつけていたり、自分からボケたりしないわけですよ。けど、それは今改善されてしまった。異常事態だと思わないか?」


「……まず、気づいてないかもしれないけど、トムも性格変わっちゃっているよ」


「へ……」


トムの乾いたような声はその場に響き渡った。






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