第71話 突如決まった企画
教室の端の方で集まる4人組がいた。それはトム、将悟、大和、陸斗だ。しかし、今は放課後。教室に残っている意味なんてない。そして、集めた張本人がコホンと咳払いをしながら、立っていながら前に重心をかけながら、
「いきなりですが、何か大きなことをやりたいと思います」
と言う。ただ話し合いたいから残ってと言われた3人にとってはよくわからなすぎて、
「え?」
と、少し間を空けて言ってしまうくらい驚いた。
「いやー......だってさー、この学校って行事あまりないじゃん。なんか寂しいなーって思ってさ」
なぜか照れながら、そう言うトム。
「まぁ、確かにな。ほかの学校にとってあるはずの体育祭や文化祭とかがないよなー」
大和は腕を組み、目をつぶりながらうなづき、返答する。いわゆる相手の言葉は聞いていないのに、なんとなくで返せば大体合っていることみたいなかんじだ。
「それで張本人の意見は無いの?」
と、少し帰りたそうにしながら、将悟はそんなことを言った。みんなカバンを置いているのにも関わらず彼だけは荷物を持ったままだ。
「無い」
と、将悟の言葉との間をゼロに等しいくらいの速さで返事するトム。
「速いな!!即答だな!!」
将悟は少し顔をしかめながら言った。トムにツッコミを入れているのだろうが、将悟も人のことを言える立場ではなく、トムの返事との間はあまり無かった。
「よく言われる!!」
将悟とトムのいつもの絡みが始まってしまった。そんな中取り残されてしまっている2人のうち1人が口を開いた。
「じゃあさ、バーベキューやろうぜ」
と、大和は言った。しかし、彼は極度の潔癖症であり、ここにいる全員が知っていることだ。そんな彼の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったのだ。トムと将悟は言い争いから少しじゃれあいっぽくなっていたのだが、お互いの服を掴んだまま静止してしまった。
「え?俺、変なこと言った?」
大和は別に天然というわけでは無い。いつも攻める側の人間なので、受けに慣れていないのだ。自分がいじられるとなると少し不安になってしまう。
「いや、別に変なことは言ってない。けど、念のためもう一回聞いておく。何?」
トムは将悟の服から手を離し、そのまま大和の肩に手を優しくポンと置きながら聞く。
「だから、バーベキューだって!!」
やはりいじられる方に慣れていない大和は、少しキレ気味で答える。
「それいいね。採用!!」
トムは大和の肩の上に乗せていた手をグッドポーズに変え、笑顔で答える。
「え?あっさり決まったな。いいのかそれで?」
と、大和はトムにもう一度質問する。彼の言葉は疑問系が多いのだ。
「いや、逆に聞きたい。ダメなのこれ?」
「別にダメってわけじゃないんだけど......」
「じゃあ別にいいじゃん。バーベキューに決定!!でもなるべく大人数が良いから、とりあえず、ここにいる俺も合わせて4人以外で誘えそうな人を言っていこう!!」
と、トムが言うと、4人がそれぞれ誰が良いか思い出していく。自分たちと関わってきた人たちの名前を。そして、少しの沈黙の後、一番最初に口を開いたのは将悟だった。
「とりあえず川口と鷲宮は決定でしょ!!」
「そうだね。その2人はなんだかんだいって関わっているしね」
将悟の言葉にトムは納得する。そして、次に名前を出したのは
「鳩山と深谷はどう?」
大和だった。トムが一番関わっている女子2人だ。大和はこういう場には女子も必要だと考えたのだろう。
「いいね。あの2人はいてて楽しいしね」
トムはあの2人と話している時を頭の中で浮かべて、少し顔が笑ってしまう。そんな時、トムの前に立った陸斗がボソッと小さな声でつぶやく。
「大宮さんのことも誘いたい」
「え!!?陸斗の口からその人の名前が出てくるとは思わなかった!!」
陸斗のいきなりの衝撃発言に顔の筋肉がついていけなかったのか、さっきの笑った顔のまま驚いた反応を体でしてしまう始末だ。
「ま、陸斗が誘いたいと思うなら否定はしない。けど、その人との連絡手段はあるの?」
トムはその人を誘うための最大の難点に気がついてしまった。周りにいる大和と将悟も確かにと言ってしまうくらいだった。しかし、陸斗は真顔のまま制服の内ポケットから一枚の紙を取り出し、
「あの人の電話番号覚えてる」
と言いながら取り出した紙に電話番号を書き出してしまった。トムたちはあっているかはわからないが、相変わらず陸斗は別次元だと思うしかできなかった。
その後、話に出たクラスメイトの4人はもちろんいけるとのことで、大宮唯には陸斗が電話をし、もちろんオッケーで同僚を連れて行くとのことだった。
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