第65話 練習試合
「まずい。非常にまずい」
朝のホームルームが行われる数分前、会科高校サッカー部に所属している横瀬は自分の教室2年A組の教室内でウロウロしていた。
「どうしたんだ?文隆」
周りはなにがまずいのか分からず、若干引き気味だった。しかし、サッカー部に所属はしていないが、彼と仲がいい深谷俊一が気を利かせて聞いたのだ。
「実はさ、今度の週末に練習試合を組んでもらったんだけど、3人どうしても外せない予定があるみたいで、1人足りなくなっちゃったんだよね」
待ってましたと言わんばかりに横瀬は言いたかったことを爆発させた。
「へぇー」
雪崩のような勢いで言われてしまった岡部は戸惑いながらも、息を吐くように相づちを打った。しかし、横瀬の雪崩はとどまることを知らない。
「それで今月大きな大会があってさー、できれば俺も試合をやりたい訳よ」
「うん」
「だからさ、もし良かったらでいいんだけど、俊一出てくれないかな?」
会話の中にさりげなくお願いをする横瀬。今、横瀬が欲しいのは承諾であり、一回でも『はい』と答えてしまえばおしまいだ。だからこそ、深谷は慎重に考えてから、
「あー、、、ごめん。その日、俺も外せない予定があってさ」
と、答えた。本当に彼には予定があるようだが。
「マジかー。どうしよう。一通り同じ学年のやつには聞いたんだけど、全員無理って言われちゃったんだよね」
「ふーん。だったらさ、一年とかに経験者がいればいいんじゃないの?そいつ誘えばいいだけだしさ」
少し考えてから、深谷が提案する。
「あ、その手があったか。でも、良いやつなんて、、、、、、」
横瀬は頭をフルスロットルさせ、知っている一年や、有名な一年を頭に浮かべていく。
「まぁ、都合良く出てくる訳ないか」
と、深谷が横入れをした瞬間、
「、、、、、あ!!いた。ちょうど良いやつ。ちょっと行ってくる」
横瀬の頭の中にびりっと電気が走るような衝撃を感じた。そして、とっさにその思いついた人物に会いにいくようだ。
「おう。頑張れよー!!」
その背中を見送る深谷であった。
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