第60話 料理対決~祐子vs三月~

何故かトム、将悟、陸斗、祐子、やえを残し、三月の家で倒れていた。そして、家主である三月はいなかった。そして、倒れている5人の目の前には料理のような何かが置かれていた。


「どうしてこうなった、、、」


1人、遅れてやってきた大和は呆然とその様子を眺めながら、状況を理解しようとした。しかし、理解できるはずもなく、




時は30分前に遡る、、、、



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


30分前


「イェーイ!!料理どっちが上手い対決ぅううー!!」


「イェーイ!!」


三月の家で集まっているトム、将悟、陸斗の男子組。大和はおくれてくるようだ。女子組は祐子と三月、そしてやえがいた。


「よし!!じゃあ先攻の祐子からー!!」


場しきりのやえが盛り上げていく。


「私が作ったのはねー。これっ!!」


お手製でアツアツのチキンステーキを出した。それは鉄板のうえに置いてあった。


「おおー!!うまそー!!」


チキンステーキに目を近づけて喜ぶトム。同じく目を近づけて喜んでいるのは陸斗だった。


「ふっふっふっふ。審査員が男子が多いからね。肉は最高の選択でしょ」


腕を組み、三月を見下げる祐子。若干、三月よりも背が大きいため、確実に見下げている。


「確かにそうかもね」


一方、三月も余裕の表情。まだ、チキンステーキを見つめているトムと陸斗。その後ろで、将悟も料理を見つめていた。


「じゃあ、早速実食してください」


料理の下にあった箸をとり、食べ始める。


「う、うまーい!!」


「予想通りの味だね」


「、、、、おいしい」


それぞれの感想が出る。全員が全員、おいしいという点においては共通していた。


「祐子にしては上出来なんじゃない」


三月はまだ料理を出していないのだが、少々妬みの言葉を言う。


「むぅーううう。じゃあ、三月ちゃんの番って言って!!」


妬みの言葉をまともに受け止めてしまった祐子は早く進めたいのか、やえに催促する。あまりに祐子の催促がしつこいため、ため息をついてからやえが、


「はいはい。三月、料理取ってきて」


「りょーかーい」


軽い言葉で返す三月。自分の料理に自信があるのか、少し余裕の笑みを浮かべながら皿を取りに行く。三月がとったものを少し見えた時、将悟が時と場所を考えない言葉を言ってしまう。


「え?クロッシュなんかつけるなんて本格的すぎでしょ」


そんな言葉にジロリと睨む三月。祐子もじとーっと睨みつけていた。


「あ、冗談冗談」


苦笑いで謝る将悟。


そんなこんなをやっているうちに三月がテーブルのうえに料理を並べていた。もちろん、まだクロッシュはつけたままだった。


「じゃあ後攻の三月の料理オープーン!!」


先ほどのやり取りを見ていたやえは場の雰囲気を明るくするために、いつもよりやや明るい声で盛り上げながら進行する。


「ジャジャーン!!」


声の明るい三月とは裏腹に料理は暗かった。別に暗いといっても本当に暗い色とか、影に隠れていてとかでもない。でも、暗かった。そんなオーラが料理から漂ってしまっているのだろう。


「あれ?何これ?」


トムは目を見開き、自分の見ているものが間違っているのではないかと疑ってしまっていた。


「私特製ホワイトチョコレートお好みたこ焼きうどん」


「「「「!!!?」」」」


その場にいる全員が耳を疑った。


「ちなみに聞くけど、なんでそんなの作ったの?」


トムはもう一度、三月に質問した。


「そんなのとは失礼な。男が審査員多いってことは知っていたから、男が好きそうなものを混ぜたんだよ。結局はお腹に入るんだから、結局同じだしね」


音符マークでも浮かびそうなくらい気分が良さそうな三月。本当にそんなものが好きだと思っているのか、ボケているのかわからなくなる一同。そんななか1人勝利を確信していた祐子はガッツポーズをしていた。


「まぁ、とりあえず実食ってことで、審査員の3人」


ドンマイと言わんばかりの顔で審査員の3人を見つめるやえ。


(うう、、、。こんなの食べれるわけないじゃん)


トムは箸でそのうどんをつまみながら、じっと見つめる。その距離からも不快感を感じさせた。


(まぁでも、こういうのに限って美味しかったりするんだろうな)


覚悟を決めたトムたち審査員はいっせーのせで口に運んだ。


「あ、、、、、」


3人まとめて静かに気を失った。残された女子3人は一瞬、状況判断ができなかったが、視覚の情報がようやく脳に届いた。そして、それぞれの反応を示した。


「あはははは!!三月ちゃんの料理そんなまずいんだー!!」


そう笑いながら足をばたつかせる祐子。


「うるせぇ!!」


その爆笑している祐子に腹を立てた三月は女子とは思えない勢いと気迫で、そのうどんを祐子の口に突っ込んだ。


「グボッ!!!」


そのうどんが舌に少しでも触れた途端、祐子の味覚の神経をフル発達させ、その場に祐子も倒れ込んだ。そして、次の標的はやえだった。


「ひっ、、、勘弁して」


半泣きになりながら、ジリジリと下がるやえ。しかし、ドアは三月を挟んで向こう側。部屋から出ることは不可能だ。


「このうどん食べて。食べるだけで良いから」


「む、無理だよ」


「やえは私と友達だよね」


「それはそうだけど」


「じゃあ、食べてくれても良いよね?」


「、、、わかった。三月の料理を食べるよ」


そう言うと三月から箸と皿を受け取り、うどんを持ち上げる。


「じゃ、じゃあ、いただきます」


やえはゆっくりとうどんを口に運ぶ。


「ど、どう?」


その様子をじっくりと見る三月。いつも使っている観察眼をフル活用だ。


「あ、おぃ、、、、」


言いかけた途端ばたりと倒れ込んだ。


「ええー!!」


と最初は驚く三月だったが、全員倒れていることを確認してから


「、、、、やっぱかー。隠し味にフルラゼパムとかだったし」


と、言い放ち家を出て行ったのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


全員の顔を確認した大和


「なーんだ。全員寝ているだけじゃん」










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