第54話 いきなり二学期!!

「まさかこんなことが起きるなんて、、、」


二学期の始業式の日、早速遅刻をしてしまったトム、将悟、大和、陸斗、川口、鷲宮。このメンツを見るようにあの日本列島一周の旅のメンバーだ。原因は数時間前にさかのぼる、、、、


「本当悪かった。俺のせいで」


謝る大和。みんな「大和せいじゃない」というが、実際はそうであった。それは数十時間前にさかのぼる。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


数十時間前


川口の車で帰っている五人。執事も合わせて6人か。そんな一行とそれぞれの荷物合わせても、車内にはまだ広大なスペースがあった。


「いやー。楽しかったわーー!!みんなでこんな遊べたんだしな」


トムは川口の高級車の中で背伸びをする。改めて来たことに満足を覚える。あのとき、しっかり親を説得して良かったなと。


「全部川口のおかげなんだけどな」


と、将悟はビシッとツッコミを入れる。


「確かにな、本当に川口様々だよ」


手を合わせ拝むように川口に感謝するトム。


「いやいや、やめてくれよ。俺もみんなと旅行とかしたかったし、ちょうど良かったんだよ」


拝むトムをやめてくれと言わんばかりに自分の顔の前で手を振る川口。そして、こう続けた。


「でも、びっくりしたよ。いきなり、鷲宮くん来るって聞いたとき」


「ごめん。邪魔だった?」


「いやいやいやいや。逆だよ逆。鷲宮くん、怖い話たくさん知ってたからさ。それに驚いたんだよねー」


慌てて訂正した川口。傷つけることを恐れてしまったからか、本当に焦っていた。そして、鷲宮は怖い話をたくさん覚えていた。この時のためにとも思っていたけど、もともとそういうものが好きなのだ。


「確かに、あれは盛り上がったねー。初日からあんな怖い話をして来るからさ、次の日なんて鷲宮に負けないような怖い話、ずっと考えてたんだー」


「、、、でも、思いつかなかったと」


陸斗がノリでツッコミを入れる。いや、茶々を入れるの方が正しいか。


「それは言わないで欲しかった」


頭を垂れるトム。言語力か日本語力が無いからだろう。トムが怖い話をしても、全く怖く無いのだ。


「でも、本当すごいよね。こういう仕事、向いてると思うよ。怖い話をする人ーってね」


「、、、、。」


将悟が鷲宮のことをおだてる。鷲宮にとって、将来のことなんて考えていなかった。しかし、こんなことを言われると、嬉しいのだろう。少し顔がにやけていた。


「でも、将悟なんて俺と一緒で将来の夢なんてないよね」


「トムと一緒にすんな」


「うぇえ!?あんの?」


「そりゃ、もちろん」


「じゃあ何?言ってみてよ」


将悟が1つコホンッと咳払いをして、人差し指を上に突き出し、


「心理学者」


その場にいきなり静寂になった。その言葉の意味を捉えきれなかったのだろう。だが、トムがその沈黙を突き破った。


「あ、うん。頑張れ」


まぁ、そう思うのは無理はない。将悟は教科別の順位で、国語が学年最下位なのだ。


「、、、ってトムに言われたくないわ!!それ以外の順位では勝ってるだからな!!」


カチンときた将悟は強く言い返す。そして、将悟の言ったことは事実だ。トムは国語はある程度はできるので、平均くらいの点はとれる。しかし、それ以外は学年最下位らへんをウロチョロしているのだ。


「ごめんごめん。冗談だって。負けてるってことくらい知ってるだしね」


舌を出し、片手合掌をしながら謝るトム。将悟の怒りは本来ならこの程度は済まされないが、今日はここで落ち着いた。そして、静寂が包んだが、この静寂を打ち破ったのは意外にも川口の執事だった。


「そういえば、みなさん」


「ん?どうした?」


雇い主である川口が反応する。その執事はミラーで後ろのみんなを見ながら、こう言った。


「行きと比べて、人数が一人少ないんですね」


その一言に全員が沈黙する。そして、トムが無言で人数を確認する。1、2、3、4、5、、、、6?あれ?確か、行く時って、、6人。あと1人、、、


「あぁぁぁ!!!大和がいねぇー!!っ痛え!!」


この川口の車は横には余裕があるが、縦には余裕がない。故に勢い良く立ったトムは思いっきり頭を天井にぶつけた。


「あれ?ってことは今どこだぁあああ!!」


次は将悟が大声で叫ぶ。車内に広がる不安な声、いつも冷静な陸斗でさえオロオロしていた。


「し、執事さん。なんで、もっとはやくに言ってくれないんですか!?」


トムが最もな疑問をぶつける。


「みなさんを無事にお送りするのが私の役目。しかし、お友達であるみなさんが平然としてらっしゃったので、これは必然なのかと」


逆に最もな返事を返されてしまった。友達であるトムたちが気がつかないなんて。


「執事さん。今からさっき止まったところに戻ることはできますか?」


「もちろんでございます。しかし、今、お戻りになられますと、お帰りが少々遅くなるかと」


「俺はもちろん行く。けど、みんなは?」


覚悟を決めた目で周りを見渡す。だけど、全員似たような目をしていた。


「かしこまりました。では、先ほどの道の駅に戻りましょう」


そう言うと車を反転させ、来た道を戻った。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ということがあったんだな?」


時間は戻って、現在。教員室の小さな部屋の中で大和田先生に事情徴収をされていた。


「はい」


俯いた感じで返事をするトムと川口。この件の主犯の2人だ。


「鈴谷はいつも通りだとして、川口もとは驚いた」


(え?俺っていつも通りなの?)


学級委員である川口は先生の中では硬派なイメージなのだろう。本当の川口と比べたら全くの別なのだが。


「はい。すみませんでした」


「それでお前らのやったことは本当に悪い。だけど、挽回のチャンスをやろう」


「え!?」


突然舞い降りたチャンスにトムたちは息を呑む。内容がかなり辛いと考えたんだろう。


「放課後、体育倉庫に来い。手伝ってほしいことがある」


(ん?というか、今無駄なことまで説明したのになんとも思わなかったのかな?)

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