第50話 落ちていたジュース飲むの、ダメ、ゼッタイ

今日は陸斗と大和とトムで映画を観に行く約束をした。将悟も誘ったのだが、家の用事と言って来れなかった。そして、トムは集合時間の15分前、10時45分には映画館に到着していた。


「まだかなー。大和と陸斗。集合の時間まで、あと五分もないけど」


とあたりを見渡していると、誰かの飲みかけなのかペットボトルのコーラが落ちていた。


「やった!!ラッキー!!」


トムは誰が買ったかもわからないコーラわ飲んでしまった。


「ぷはー!!やっぱコーラはうまいな!」


と、つぶやきながら飲んでいると、NELI(ネリ)のチャットに通知がきた。


「ん?えーっと、、、大和からだ。30分くらい遅れる?イヤイヤ上映始まっちゃうよ!!」


『30分はまずいよ!!早く、来てね!!』と大和に送っていたら、陸斗が珍しく黒い帽子をかぶってやって来た。


「お、陸斗。意外と時間ギリギリだねー」


「寝坊した」


「おーそれは朝から災難だったね」


トムは内心ちょっとムカついていたが、まぁ時間には間に合っているわけだし、まぁよしとするかと思う。


「トム、ちょっと勘違いしてる」


「え!?何が?」


「本当はトムより先についてた」


「え?本当に?気がつかなかったよー。でも、なんでなかなか出てこなかったの?」


「それは、、、」


と陸斗が訳を説明しようとすると、急にトムがお腹を抑えて


「ちょ、ちょっとタイム!!先にトイレ行ってくる!!」


と映画館の端の方にあったトイレに迷うことなく飛び込んだ。


「、、、下剤仕込んだから」



しばらくして、、、、、、、


「急に腹を下すなんてついてない」


態勢を低くしながらトイレから出て来たトム。まだ、お腹が痛いのか、お腹をさすっていた。そして、顔を上げるとトイレの前に立っている陸斗と大和。


「な!!大和、30分遅れるんじゃなかったの?」


「意外と早くついたんだよ。しかも、集合時間前にはついたぜ。ギリギリだったけど」


大和はやや笑いでトムに言う。


「なーんだ。良かった。それじゃ、チケット買おうぜ!!」


とトムはチケット売り場に行こうといたが、大和に肩を抑えられ止められる。少し、バランスを崩し倒れそうになるが、なんとか持ちこたえる。


「おっとっと、、、なんで、止めるの?」


「いや、現実を見ない方がいい」


なんか苦しそうな表情で顔を横に振る。


「なーに、訳わからないことを言ってるんだよ」


と、肩に置かれていた手を振り払い、チケット売り場の売り子さんのところに行った。そして、見るつもりの映画の場所に指を指し、


「この映画のチケット3人分ください」


普通に言うトムだったが、売り子さんが明らかな哀れみの目を向け、


「もう、、、販売時間は、、、終わり、、、ました」


非常に言いづらかったのか、言葉と言葉の間に明白な間ができていた。だが、若干顔は笑っていた。それを聞いたトムは口を開いたまま顔は固まってしまい、陸斗と大和の方を向き、


「これって、、、、俺の、、、、せい?」


無言でうなづく大和と陸斗。トムの腕時計の短針は11のところに、長針は6のところに向けられていた。

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