第51話 夏休みのやりたいこと列伝

川口の家に集まるトムたち。夏ということもあり、最初は大きなホールの中が蒸し暑かったが、冷房をつけたことにより、ある程度和らいできていた。そして、少し雑談をした後、彼らは集まった本題に入ることにした。


「せっかくの夏休みだから、なんかやりたいって話だったよな。俺が例をあげるなら、キャンプだな」


と、本題に入ったのは、このホールの家主である川口だった。髪をクシでとかしながら、さらに漫画も見ている。


「キャンプかー。確かに良いけど、みんなテントとか持ってる?」


トムがみんなに聞いたが、首を縦に振る者は誰一人いなかった。だけど、川口が


「でも、用意しようと思えばできるよ」


と、さっきまでクシを持っていた手をスマホへと持ち替え、今にも専門店にも電話をかけてしまいそうだった。正直、トムたちにとってはそこまでするほど行くつもりは無かったので、あわててトムと将悟が川口を止める。それから沈黙が続いてから、


「じゃあさ、登山とかはどう?」


人差し指を立て、冗談半分で言っているような顔でトムがそう言った。


「登山かぁ〜。俺、一回やったことあるけど、案外辛いよ?」


一度経験していた将悟は不安そうに言う。それを考えただけで、将悟の顔は真っ青になる。


「いやー、それが良いんじゃん!!ほら、よく言うじゃん、部活とかで辛い練習ほど、友情は深まるって」


満面の笑みでトムはそう言うが、また反対する者もいた。


「というか、登山とキャンプってほぼほぼ一緒でしょ」


と、さっきからあまり会話に加わっていなかった大和が手に持った漫画を読みながら言う。


「確かに、、、」


自分の提案が却下されてしまったトムは少し猫背になり、丸くなる。再び長い沈黙の後、川口がとてもありえないような意見を言う。


「じゃあ、日本列島車の旅ってのはどう?」


「俺の執事に運転してもらって、日本列島一周する」


ありえないようだが、彼には本当にできてしまうのだ。なぜなら、この物語の中の日本の三大財閥の一人息子であるから。


「もし、、お前が本当にできるって言うんだったら、俺やりたい!!」


トムは違う意味での沈黙を破った。


「俺も」


悩んだ末に将悟も、大和も、陸斗も行くことにした。

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