第48話 夜行進、やっと姿を見せる

「お!!夜行発見。今度こそ聞いてやる。トムの名前の由来を」


トムが将来についての紙を書いているから、先に帰っていた将悟たち。たちといっても、将悟と大和の2人だけ。陸斗は「寄り道する」と言って違う道から帰ってしまった。そして、将悟たちの目の前には夜行がいた。


「前回は逃げられたんだろ。今回は捕まえてやろうぜ」


前回と同じように夜行の歩きスピードは尋常ではない。大和が将悟にそう言っている間にも、もう50メートルくらい離れてしまっている。


「やべっ、走ろう!!」


走り始める将悟と大和だったが、距離はあまり縮まらない。


「あいつ、歩くの速すぎだろ。もはや、走り並みじゃん」


また、角を曲がり将悟たちの視界から消え去る。その角をちょっと後に曲がる将悟たち。もちろんそこには夜行の姿はない。それどころか通行人の一人もいない道に来てしまった。


「くそ!!いなくなった。どこいった」


少し辺りを見渡していると、やっと1人通行者が正面からやってきた。それは、陸斗だった。


「あ、陸斗。そっちに誰か行かなかった?」


「いない」


「マジかー。あいつ、本当消えるのうまいな」


陸斗は何故か怪訝そうな顔をして、住宅街の壁に近づく。


「だってここにいる」


壁の柄が外れたと思うと、そこには夜行がいた。忍者のように隠れていたようだ。


「いた!!夜行!!」


「はぁーあ。なんでここにいるのがわかった?」


最初に将悟が発言したにも関わらず、それを無視し、夜行がちょっと興味を持った陸斗に聞いた。


「見てたから」


平然に答える陸斗。


「なかなかやるじゃん。久しぶりに驚いたお礼にトムのあだ名の由来。いや、トムの過去について話してやるよ」


その言葉に驚く将悟。


「なんで俺がお前にトムのことを聞こうと思っていたことを知ってんだ」


確かにそうだ。将悟はトムのことを聞くってことをそんなに他言した覚えはない。


「さぁ、なんでだろうな。まぁ、俺の情報網は広いからな。だからじゃないか」


とぼける夜行。明らかに何かある、そう思う将悟たち。


「まぁ、良いだろう。こんな話は。教えてやるよ、あいつの過去をな」

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