第43話 川口の家
川口の家にて
「うぉぉおお!!やっぱいつ見てもすげぇ!!」
トムの声が反響する。まるで、やまびこのように。なぜ、こんな風になるかと言うと、川口の家の漫画部屋は巨大のホールみたいになっていて、天井は見えないくらいに高い。大体、10階くらいなのだろうが、上の階の方は若干暗くなっているのだ。しかも、上の方にもちゃんと漫画が敷き詰められているのだ。日本にこんなに漫画があるなんてと思うくらいだ。
「おい。お前が勉強するって言うから、家に呼んだんだぞ。勉強やるぞ」
いち早くこのホールの一階に置いてあるテーブルの四つの椅子の一つに座る川口。トムは周りを見渡してどこを見ても、テーブルや椅子はこの場所にしかないことに気づく。
「ああ、悪りぃ悪りぃ。けどさ、ここのホールの中にテーブルとかこれしかないの?もし、1番上の階にある漫画読むときってわざわざ下まで来るの?」
テーブルの上に自分の勉強道具を広げていた川口は、その手を止める。
「いや、上のほうにある漫画はもう3回くらい読んでいる漫画だからな。もう一回読むことないかな」
「まじか。見返したりしないの?」
「いや、特には。大体内容は覚えているからな。それに、綺麗に置いてあった方がいいだろ」
「まぁ確かに。さすが、川口」
川口は学年トップクラスの学力を持ち、家は巨大な財閥、容姿端麗。そして、運動神経抜群ときた。おまけに話もうまく、クラスの人気も高い。言わば完璧超人なのだ。実は今日も遊ぼうと誘われていたのだが、トムの勉強を手伝うと言って、断っていたのだ。それなら、トムの『さすが』の意味もわかるだろう。
「それで、トム。勉強道具持ってきた?」
「ああ。もちろん」
トムは自分が持ってきたカバンの中を探り始める。だが、探れば探るほどトムは焦り始める。それはなぜかって?もちろん、勉強道具を持って来るのを忘れたからさ。
「うわぁぁああ!!持ってきてねー!!」
「はぁあ!!?マジで何やってんだよ。何しに来たんだよ」
「じゃ、じゃあ、俺は漫画読んでいるんで、川口は勉強していてくださいな」
と言い、近くにあったファンタジー系の漫画を取り出す。
(本当、呼んだ意味、、、)
と思う川口を裏腹に、トムは
(計画通り)
と漫画で隠しながらニヤつくのであった。
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