第40話 ポジティブシンキング
朝、1年B組の教室にて
「あれ?まだトム来てないの?」
将悟は教室に入るなり、トムを探してそう言う。
「あー。確かにまだ来てないね。いつもならこの時間帯にはいるはずなのに」
将悟に聞かれた大和は教室の黒板の上にある黒い丸時計を見上げながら、どこか棒読みのような感じでそう言う。そして、その時計には8時20分のところを指していた。
「んな。いつもならいるはずなのに、、、。もしかして、風邪かな?」
冗談混じりで将悟はそう言う。大和はそんなことないだろと言おうとしていたが、実は、、、その通りであった。
トムの家
ゲホゲホゲホ
という咳き込む音が無情にも家の中に響く。
「う〜、、、まさか風邪を引くとは」
トムのまさかには納得できる。彼は、中学生の頃から風邪を引いたことがなかったのだ。そして、親から友達から言われた言葉があった。
《バカは風邪を引かない》
彼は、自分がバカということに納得してない。理由としては、赤点をギリギリ回避していたりするからだ。だから、彼はその言葉を言われた時、こう言い返すのだ。
《バカは風邪を引かないんじゃない、バカは風邪を引いていることに気がつかないんだよ》
確かに理にかなっているように見られるが、しかし彼は現に風邪で寝込んでおり、確実に風邪に気がついている。しかも、結局はバカってことを認めている気がする。もちろん彼は気づいてないし、その言葉を言ったとき、周りがクスクス笑っていることにすら気がついていない。そして、終いには、風邪を引いているこの状態を、
「まぁ、ポジティブに考えると勉強しなくて済むからめっちゃいいじゃん」
と言ってしまう始末だ。だが、まだ彼は知らない。期末テストが迫って来ていたことを。
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