第38話 鷹広

自販機前で慌てる男子生徒がいた。たくさんのジュースを持ち、今にも落としそうだった。


「よっ!!鷹広!!ジュース、そんな飲むの?」


近くを通りかかった童顔で背の小さい男子生徒に声をかけられる。


「戸田くん、、、」


将悟に声をかけられると、手に持っていたジュースを落としてしまった。


「うわっ。なにやってんだよ全く、、、」


落としてしまったジュースを拾っていく将悟。もちろん、鷹広もジュースを拾う。


「あ、ありがとう」


将悟は拾ったジュースを鷹広に渡すと、


「まぁな。友達だし、当然しょ」


と笑顔で返した。


「それじゃ、、、、」


そう言ってその場を立ち去ろうとする鷹広。


「もしさ、、、もしだけど何か悩んでいることがあるならさ、相談乗るよ」


将悟がそう言うと、鷹広は振り返り、


「悩んでいることなんて無いよ」


その顔は笑顔の仮面でも張り付いているようだった。


「そう、、か。またね」


「うん。じゃあね」


将悟はその後ろ姿を見送ることしかできなかった。

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